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十一、我被他種草莓(キスマークをつけられる)

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 口づけと、肌吸い。鎖骨の辺りをちゅううっと強く吸われてやっと明玲は解放された。大きく開かされた漢服の前を偉仁の手によって直される。そうして初めて明玲はほうっと息を吐いた。

「……夕食後は毎日来なさい」
「……はい、偉仁哥ウェイレングァ……」

 腕の中に囚われて耳元で囁かれながら耳たぶを優しく食まれ、明玲はその身を震わせた。胸の高鳴りが抑えられない。巷の恋愛小説などは読んでいる為、この先なんとなくだが、どうされてしまうのかわからないわけではなかった。それでも偉仁は理性を保ったようで、ひとしきり明玲に口づけると部屋に帰してくれた。
 ぼうっとする。
 もう今夜、明玲は何もできる気がしなかった。


 翌日からは趙山琴の宣言通り、昼食後の復習や礼儀作法などを見てもらうようになった。その際山琴は鞭を持ち、必ず妾妃を一人伴ってやってくる。顔はにこやかだがその目は笑っていないし、当然指導も厳しい。

「まっすぐ立ちなさい」
「はいっ!」

 鞭が飛んでくるということはないが、指先の動きなど細かなところまで指示されて明玲は身体が痛くなった。

「慣れれば身体の痛みなどなくなりますよ」
「……そうよね」

 侍女にしれっと言われ、明玲は己が如何に礼儀作法などをおろそかにしてきたか悟った。こんなことではいけないと明玲は思う。

(どう考えても甘えていたわ)

 山琴や妾妃の動きを見れば、如何に己が雑な動きをしているのかわかろうというものだ。そして当然のことながら女官や侍女たちもきちんとしている。明玲は大好きな兄の側にいられればそれでよかった。その為には努力が必要だとしみじみ思った。
 兄の前で泣き言を言うわけにはいかない。それは自分だけでなく兄を貶める行為だ。
 明玲は兄に嫁いだとしても正妃にはなれない。妾妃としても序列は一番下となる。だから公の場に出ることはないだろうが、それでもきちんとするにこしたことはない。
 この時期は忙しいだろうに兄は夕食に間に合うように帰宅する。
 そして夕食の後、明玲を呼んで触れるのだ。
 昨夜は鎖骨の辺りが赤くなっていると、湯に浸かっていた際侍女に指摘された。こんな時期に虫? と明玲は首を傾げたが、部屋に戻って自分付の侍女に聞くと大仰に嘆息された。

「……旦那様に吸われたのでは?」
「……え?」

 鏡を見ると確かにそのようだった。明玲は小さい頃自分の腕などを吸ったことがある。ほんの少しの痛みの後に赤い痕がつくのが楽しくてやっていたら偉仁に怒られた。あまり沢山吸いすぎると病気になる恐れがあると。
 それを思い出したので、今日聞いてみた。

「哥(兄さん)、これ……」

 真っ赤になって自分の鎖骨の辺りを指さす。偉仁は嬉しそうに笑んだ。

「気づいたのか? 私のものだという証だ」
「……はい、でも……」
「あまりつけすぎるのはよくないと聞くが、そこだけならばよいだろう?」
「……はい……」

 醸し出される空気がいちいち甘くて眩暈がしそうだと明玲は思う。これが色気というものだろうか。
 偉仁は言った通り、他の場所には痕をつけなかった。だが明玲は何度も首筋を舐められたし、漢服の前をくつろげられて胸の上の方には何度も口づけを受けた。

「哥……あっ……」
明玲ミンリン、そなたは感じやすいな……」

 上気した頬を両手で包まれ、角度を変えて何度も口づけられる。身体を繋げる、という意味ではまだまださわりの部分なのだろうが、明玲はもういっぱいいっぱいだった。

(でも……趙姐や令妃は……)

 山琴や妾妃の顔が脳裏に浮かぶ。彼女たちは偉仁の妻だ。つまり、偉仁と何度も身体を重ねているはずである。明玲はそれをとても悔しく思った。

(嫌がってはいけないわ)

 恥じらっても、怖くなって拒絶するなどありえてはならないと明玲は思う。そうして部屋に帰される。明日はもっと身体の力が抜けたらいいなと明玲は思った。
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