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5.捕まえたor捕まった?
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元の世界に帰れないと聞いた翌朝早く、何故か騒がしさを覚えて私は目を覚ました。
「? うるさいなぁ……なんだろ?」
城内に住んでいるので部屋付きの侍女はいる。しかしその侍女が騒々しさの原因とはとても思えない。遮光カーテンの向こうから光が見えないことから、まだ夜か朝の早い時間なのだろうと判断する。
そんな時間に悪いとは思ったがベッド横に置かれているベルを鳴らした。いつもならそれほど間をおかずに「はい」といらえがあるはずなのだが今朝に限って人の気配も感じられない。さすがにおかしいと思い侍女の居場所を探す魔法を展開させようとしたその時、寝室の扉が開いた。
「まぁ理都さま、起きていらっしゃったのですか? ではすぐにでもお召し替えを!」
部屋付きの侍女だった。彼女は私がほっとする間もなく畳みかけるように言い、腕に抱えていた衣裳を下ろした。
「え」
しかも何故か侍女の後ろにも何人か見たことのある侍女たちの姿があり、私は困惑することしかできなかった。彼女たちは私が呆気にとられている間に衣裳やアクセサリー、化粧道具などを持ち込み、せかすように私の顔を洗ったり歯を磨いたりさせると、文字通り有無を言わさず着飾らせられてしまった。
「理都さま、とてもお似合いです!」
「旦那さまになられる方もさぞかし誇らしく思われるに違いありませんわ!」
全身の映る鏡の前に連れて行かれ私は戸惑いながらも自分の格好を確認した。
(旦那さま? ……これってもしかして)
白いドレスに白いヴェール。少しばかり伸ばしていた黒い髪はヴェールの奥でお団子状にされ、化粧もまた楚々とした上品なものになっている。
そして何がどうなっているのかと問いただす間もなく、私は侍女たちに促されるままに城の中央に連れていかれた。
そこには何故か白のフロックコート姿の宮廷魔導師長がいた。
「……理都、ああなんて……」
彼は少しはにかんだように私を見ると、嬉しそうに笑んだ。銀のストレートの髪は腰より長く、前髪は少し切られたようでその深海を思わせる深い藍の瞳を見ることができた。
「ええと、魔導師長……これはいったい……」
「ルシーと。おいで、王に挨拶をしよう」
戸惑う私の手を取り、魔導師長ールシフェル・コルソンはそのまま王との謁見室に向かった。もちろんすでに新王は立っている。亡くなった王の息子である王太子が王になった。
ってそんなことはどうでもいい。
何故か謁見室には沢山の人々が集っていて、「おめでとう!」「ご結婚おめでとうございます!」と花びらを撒かれた。
頭にはてなが大量に浮かんだが、結論としてどうも私は宮廷魔導師長と本日結婚したようだった。
「杉浦理都、君の面倒を一生みる。安心して嫁いできておくれ」
「魔導師長、それプロポーズとしてはダメですよー!」
「もっとうまい科白考えられなかったんですかー?」
周りの野次を浴びながら、私は絶句してすぐに返事をすることができなかった。
確かにプロポーズの科白としてはイマイチだったけど、その不器用さも愛しくて私は彼の腕の中に飛び込んだのだった。
「? うるさいなぁ……なんだろ?」
城内に住んでいるので部屋付きの侍女はいる。しかしその侍女が騒々しさの原因とはとても思えない。遮光カーテンの向こうから光が見えないことから、まだ夜か朝の早い時間なのだろうと判断する。
そんな時間に悪いとは思ったがベッド横に置かれているベルを鳴らした。いつもならそれほど間をおかずに「はい」といらえがあるはずなのだが今朝に限って人の気配も感じられない。さすがにおかしいと思い侍女の居場所を探す魔法を展開させようとしたその時、寝室の扉が開いた。
「まぁ理都さま、起きていらっしゃったのですか? ではすぐにでもお召し替えを!」
部屋付きの侍女だった。彼女は私がほっとする間もなく畳みかけるように言い、腕に抱えていた衣裳を下ろした。
「え」
しかも何故か侍女の後ろにも何人か見たことのある侍女たちの姿があり、私は困惑することしかできなかった。彼女たちは私が呆気にとられている間に衣裳やアクセサリー、化粧道具などを持ち込み、せかすように私の顔を洗ったり歯を磨いたりさせると、文字通り有無を言わさず着飾らせられてしまった。
「理都さま、とてもお似合いです!」
「旦那さまになられる方もさぞかし誇らしく思われるに違いありませんわ!」
全身の映る鏡の前に連れて行かれ私は戸惑いながらも自分の格好を確認した。
(旦那さま? ……これってもしかして)
白いドレスに白いヴェール。少しばかり伸ばしていた黒い髪はヴェールの奥でお団子状にされ、化粧もまた楚々とした上品なものになっている。
そして何がどうなっているのかと問いただす間もなく、私は侍女たちに促されるままに城の中央に連れていかれた。
そこには何故か白のフロックコート姿の宮廷魔導師長がいた。
「……理都、ああなんて……」
彼は少しはにかんだように私を見ると、嬉しそうに笑んだ。銀のストレートの髪は腰より長く、前髪は少し切られたようでその深海を思わせる深い藍の瞳を見ることができた。
「ええと、魔導師長……これはいったい……」
「ルシーと。おいで、王に挨拶をしよう」
戸惑う私の手を取り、魔導師長ールシフェル・コルソンはそのまま王との謁見室に向かった。もちろんすでに新王は立っている。亡くなった王の息子である王太子が王になった。
ってそんなことはどうでもいい。
何故か謁見室には沢山の人々が集っていて、「おめでとう!」「ご結婚おめでとうございます!」と花びらを撒かれた。
頭にはてなが大量に浮かんだが、結論としてどうも私は宮廷魔導師長と本日結婚したようだった。
「杉浦理都、君の面倒を一生みる。安心して嫁いできておくれ」
「魔導師長、それプロポーズとしてはダメですよー!」
「もっとうまい科白考えられなかったんですかー?」
周りの野次を浴びながら、私は絶句してすぐに返事をすることができなかった。
確かにプロポーズの科白としてはイマイチだったけど、その不器用さも愛しくて私は彼の腕の中に飛び込んだのだった。
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