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6.結婚までのルールを決めよう
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結局話し合ってないんですけど!
「発情期じゃないんでしょうっ!?」
「さやがとてもかわいくてな」
しれっと猫に言われた。もー、なんなのこの猫神様はー。
「茶々さん、うちの親は私に夫を作らせる為に下宿を許したんじゃないと思います」
「そうか」
「学生の本分は勉強です」
「だがバイトはしているだろう」
「バイトしないと家賃稼げないじゃないですかっ!」
敷金礼金とかはなかったし家賃と管理費以外はかかってないけど、引っ越し費用は親が出してくれたし大学の費用だって出してもらっているのだ。家賃と管理費ぐらいは自分で出さなければ申し訳が立たない。あ、あとはもちろん生活費も。
「そうか。さやは苦学生というやつなのだな」
「今頃気づいたんですかっ!」
苦学生じゃなかったらこんな物件借りないでしょー。
「む? そうなのか?」
「そうですよ! 家賃二万円とか怪しさ満載じゃないですか。いくら学割があったとしてもこれだけの広さの物件が二万円とかありえないですよっ!」
「だが左隣は埋まったと聞いたぞ」
「ああ……そういえば引っ越し蕎麦いただきましたね」
せっかくだから茹でて食べた。ちなみに、人型になった茶々さんはなんでも食べられるらしい。
「茶々さんて料理とかできるんですか?」
「できぬな」
「そっかー」
恋人の間はいいけど結婚したら苦労しそうだなと思った。私の声音に何かを感じ取ったらしく、猫は続けた。
「料理はできぬが、さやが教えてくれるならば学ぼう。さやが病に倒れることはないが、なにかあった時さやの面倒を看られるように」
「病に倒れることはない? どういうことですか?」
私は首を傾げた。
「さやはわしの精を受けたであろう。わしの嫁となったさやは……」
「えええ!? 私もう茶々さんのお嫁さんにされちゃったんですか!?」
嫌ってわけではないが、そんなこと聞いてない。
「そ、その……一応まだ仮契約の段階ではあるがわしは、その……」
はーっとため息を吐く。仮契約ならまだいいだろう。なし崩し的に嫁にされていたら不動産屋に突撃しているところだ。
「……わかりました。いろいろルールを決めましょう。それを聞いていただけないなら嫁になるのはなしってことで」
「そんな……」
イケメンは情けない顔をしてもイケメンだった。なんか悔しい。
大学に行っている四年間は結婚しないこと。私が大学を卒業する頃になっても猫が私のことを好きだったら結婚を考える。
猫はきちんと仕事を見つけて仕事をすること。私を養うことまで考えなくてもいいが、自分で生計を立てられるようにしてほしい。
結婚をする際はうちの親に報告を一緒にすること。神隠し的なことは認めない。
「さやの親に挨拶ならばすぐに向かっても構わぬが」
「茶々さん、お仕事は?」
「……国に渡りをつけねばならぬのう。ほんにその手のことは面倒だが、さやを娶る為ならば必要であろうて」
真面目に考えてくれているのがわかってちょっとときめいた。
「私が茶々さんに愛想をつかすとかは考えないんですか?」
猫はそっと私から離れ、カーペットに下りると大きい猫に変わった。
なー、とだみ声で鳴く。
「ううう……確かにこれは逆らえない……」
大きい猫のお嫁さんになるなんて至福を手放してなるものかぁー!
猫は私の弱点をよく理解している。
後で掃除しなきゃなぁと思いながら、私は猫のもふもふを思う存分堪能したのだった。
絶対私から愛想をつかすことなんてないんだろうなと思う。
わかってたけど、わかってたけど……なんか悔しい。
「発情期じゃないんでしょうっ!?」
「さやがとてもかわいくてな」
しれっと猫に言われた。もー、なんなのこの猫神様はー。
「茶々さん、うちの親は私に夫を作らせる為に下宿を許したんじゃないと思います」
「そうか」
「学生の本分は勉強です」
「だがバイトはしているだろう」
「バイトしないと家賃稼げないじゃないですかっ!」
敷金礼金とかはなかったし家賃と管理費以外はかかってないけど、引っ越し費用は親が出してくれたし大学の費用だって出してもらっているのだ。家賃と管理費ぐらいは自分で出さなければ申し訳が立たない。あ、あとはもちろん生活費も。
「そうか。さやは苦学生というやつなのだな」
「今頃気づいたんですかっ!」
苦学生じゃなかったらこんな物件借りないでしょー。
「む? そうなのか?」
「そうですよ! 家賃二万円とか怪しさ満載じゃないですか。いくら学割があったとしてもこれだけの広さの物件が二万円とかありえないですよっ!」
「だが左隣は埋まったと聞いたぞ」
「ああ……そういえば引っ越し蕎麦いただきましたね」
せっかくだから茹でて食べた。ちなみに、人型になった茶々さんはなんでも食べられるらしい。
「茶々さんて料理とかできるんですか?」
「できぬな」
「そっかー」
恋人の間はいいけど結婚したら苦労しそうだなと思った。私の声音に何かを感じ取ったらしく、猫は続けた。
「料理はできぬが、さやが教えてくれるならば学ぼう。さやが病に倒れることはないが、なにかあった時さやの面倒を看られるように」
「病に倒れることはない? どういうことですか?」
私は首を傾げた。
「さやはわしの精を受けたであろう。わしの嫁となったさやは……」
「えええ!? 私もう茶々さんのお嫁さんにされちゃったんですか!?」
嫌ってわけではないが、そんなこと聞いてない。
「そ、その……一応まだ仮契約の段階ではあるがわしは、その……」
はーっとため息を吐く。仮契約ならまだいいだろう。なし崩し的に嫁にされていたら不動産屋に突撃しているところだ。
「……わかりました。いろいろルールを決めましょう。それを聞いていただけないなら嫁になるのはなしってことで」
「そんな……」
イケメンは情けない顔をしてもイケメンだった。なんか悔しい。
大学に行っている四年間は結婚しないこと。私が大学を卒業する頃になっても猫が私のことを好きだったら結婚を考える。
猫はきちんと仕事を見つけて仕事をすること。私を養うことまで考えなくてもいいが、自分で生計を立てられるようにしてほしい。
結婚をする際はうちの親に報告を一緒にすること。神隠し的なことは認めない。
「さやの親に挨拶ならばすぐに向かっても構わぬが」
「茶々さん、お仕事は?」
「……国に渡りをつけねばならぬのう。ほんにその手のことは面倒だが、さやを娶る為ならば必要であろうて」
真面目に考えてくれているのがわかってちょっとときめいた。
「私が茶々さんに愛想をつかすとかは考えないんですか?」
猫はそっと私から離れ、カーペットに下りると大きい猫に変わった。
なー、とだみ声で鳴く。
「ううう……確かにこれは逆らえない……」
大きい猫のお嫁さんになるなんて至福を手放してなるものかぁー!
猫は私の弱点をよく理解している。
後で掃除しなきゃなぁと思いながら、私は猫のもふもふを思う存分堪能したのだった。
絶対私から愛想をつかすことなんてないんだろうなと思う。
わかってたけど、わかってたけど……なんか悔しい。
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