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3.もふもふは癒しなのです
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そして、私と大きな猫の穏やかな生活が始まった。
いろいろ調べてみたが虎やライオンよりも大きな猫は存在しないらしい。アメリカにメインクーンというじゃがいもみたいな名前の大きな家猫がいるらしいが、それでも体長1メートルぐらい。しかしうちの家主猫は3メートルぐらいあるように見える。
メジャーで測ろうとしたらさすがに怒られた。ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。
ごめんなさいと謝った。
もしかしたらこの大きな猫は精霊とか妖怪のたぐいなのかもしれない。
朝訪ねると大概寝ているので、大学が終って帰宅してから顔を出すようにしたら一緒に居間に出てくるようになった。これ幸いと猫の部屋に掃除機をかけると今度は居間が毛だらけになっていたりと困ることはあるが、目の前で後頭部を後ろ足でかかれる衝撃よりはましだった。毛が飛ぶ飛ぶ飛ぶ。さすがに「きゃああああーーーーっっ!」と叫んだらそれ以来私の前ではしなくなった。
叫んでしまったのは悪かったと思う。でも目の前を舞う大量の毛に絶望したのだ、あの時は。(掃除したばかりだった)
猫ってけっこう毛が抜けるんだなと再認識した。
もしかしたら二人きりになったら人語を話してくれるかなと思ったけどそんなことはない。
でも食事も必要なければトイレの準備もいらないので不思議ではあった。
たまたま魚を買ってきて食べていたらじーっと見られていたので「食べます?」と聞いたらすごい早さで掻っ攫われた。
やっぱり猫だ、とその時は冷汗をかいた。
大学では顔見知りぐらいはできたが友だちはできなかった。私はサークルに入らずバイトしていたから。サークルに入らないで何のための大学生活なのか! と思う人もいるかもしれないが、生活に余裕のない私にとってお金を稼ぐのは何よりも重要だった。ただ猫が家にいて毎日顔を出さなければいけなかったからそんなに長い時間を働こうと思わなかった。
「あー……」
その日私は沈んでいた。
大学から少し離れた喫茶店でバイトをしているのだが、そこに同学年の子たちが来たのだ。どっかで見た顔だな、やだなぁと思っていたら向こうもそうだったらしく、
「あれ? あの人同じ大学じゃない? やだー」
と普通の声で言っていた。思っても口に出すなよ、ととても嫌な気分になった。
そりゃあお互い様かもしれないけど、そこは……とかもやもやしながら帰宅し、こんな気分のまま猫に会うのは嫌だなと思った。
水を一杯飲み、両頬に手を当てる。
「……大丈夫。茶々さんを見れば元気になる」
そう自分に言い聞かせて猫の部屋の扉を開いた。
「茶々さん、ただいま……」
声をかけると、猫はのっそりと立ち上がり珍しく自分から私の近くまで来た。
「茶々さん?」
そのままその大きい頭をすりすりと擦り付けてきて、私は戸惑った。そして、泣きたくなった。
もしかしたら猫は私を慰めてくれているのかもしれない。
猫に抱きついておいおい泣いた。そんな泣くようなことではなかったけど、猫の優しさが嬉しかった。
それ以来、私は毎日帰宅してから猫にダイブするようになった。
猫はそんな私を優しく受け止めてくれた。
「茶々さんが彼氏だったらいいのに」
そんなバカなことを呟いてしまうぐらい、私はこの大きな猫をすっかり気に入ってしまった。
それからは、食べ物は与えなくてもいいとは言われていたがたまにお刺身を買ってきて分けたりするようになった。
いろいろ調べてみたが虎やライオンよりも大きな猫は存在しないらしい。アメリカにメインクーンというじゃがいもみたいな名前の大きな家猫がいるらしいが、それでも体長1メートルぐらい。しかしうちの家主猫は3メートルぐらいあるように見える。
メジャーで測ろうとしたらさすがに怒られた。ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。
ごめんなさいと謝った。
もしかしたらこの大きな猫は精霊とか妖怪のたぐいなのかもしれない。
朝訪ねると大概寝ているので、大学が終って帰宅してから顔を出すようにしたら一緒に居間に出てくるようになった。これ幸いと猫の部屋に掃除機をかけると今度は居間が毛だらけになっていたりと困ることはあるが、目の前で後頭部を後ろ足でかかれる衝撃よりはましだった。毛が飛ぶ飛ぶ飛ぶ。さすがに「きゃああああーーーーっっ!」と叫んだらそれ以来私の前ではしなくなった。
叫んでしまったのは悪かったと思う。でも目の前を舞う大量の毛に絶望したのだ、あの時は。(掃除したばかりだった)
猫ってけっこう毛が抜けるんだなと再認識した。
もしかしたら二人きりになったら人語を話してくれるかなと思ったけどそんなことはない。
でも食事も必要なければトイレの準備もいらないので不思議ではあった。
たまたま魚を買ってきて食べていたらじーっと見られていたので「食べます?」と聞いたらすごい早さで掻っ攫われた。
やっぱり猫だ、とその時は冷汗をかいた。
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「あー……」
その日私は沈んでいた。
大学から少し離れた喫茶店でバイトをしているのだが、そこに同学年の子たちが来たのだ。どっかで見た顔だな、やだなぁと思っていたら向こうもそうだったらしく、
「あれ? あの人同じ大学じゃない? やだー」
と普通の声で言っていた。思っても口に出すなよ、ととても嫌な気分になった。
そりゃあお互い様かもしれないけど、そこは……とかもやもやしながら帰宅し、こんな気分のまま猫に会うのは嫌だなと思った。
水を一杯飲み、両頬に手を当てる。
「……大丈夫。茶々さんを見れば元気になる」
そう自分に言い聞かせて猫の部屋の扉を開いた。
「茶々さん、ただいま……」
声をかけると、猫はのっそりと立ち上がり珍しく自分から私の近くまで来た。
「茶々さん?」
そのままその大きい頭をすりすりと擦り付けてきて、私は戸惑った。そして、泣きたくなった。
もしかしたら猫は私を慰めてくれているのかもしれない。
猫に抱きついておいおい泣いた。そんな泣くようなことではなかったけど、猫の優しさが嬉しかった。
それ以来、私は毎日帰宅してから猫にダイブするようになった。
猫はそんな私を優しく受け止めてくれた。
「茶々さんが彼氏だったらいいのに」
そんなバカなことを呟いてしまうぐらい、私はこの大きな猫をすっかり気に入ってしまった。
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