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47.他の村の女性たちとは
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「ゆかりさん、僕に何かできることってない?」
ないだろうけどここでじっと守られているだけというのもアレなので聞いてみる。ゆかりさんは笑んで首を振った。
「何も。旦那さまはこちらでどうかお待ちください」
「そっかぁ……」
僕は苦笑することしかできない。
その途端ドンッ! とでかい音がして屋敷が少し揺れたみたいだった。
「そんな……」
ゆかりさんが思わず、というように声を漏らす。
「きゃああっ!」
「ここにはっ……!」
少し離れたところから女性たちの声が聞こえてくる。それは悲鳴のようだった。
「旦那さま、しばしお待ちください」
ゆかりさんがさっと立ち上がり、離れていく。
「ゆかりさんっ!」
「旦那さまを渡したりはしませんわ」
僕はただここで守られていることしかできないのだろうか。怪力の魔法とかあったような気がすると思って探そうとするも、頭に鋭い痛みが走って集中できない。きっとこの首につけられている物が魔法を使おうとする脳の回路か何かを阻害しているのだろう。
「くっ……!」
でもどうにかしてここを出ないと……と思っても、僕の素の力ではこの格子を壊すことなんてできやしない。
ドンッ! と再び派手な音がした。それと同時に先ほどよりも揺れたような気がした。
「見ぃつけたぁ……」
「えっ……」
ゆかりさんが向かった方から、派手なオレンジ色の髪が覗いた。
女性、なんだろう。髪は短くて、派手な化粧をしている。その恰好はここの女性たちとは違い、布の少ない、水着に毛が生えたような恰好といってもいい。肘や膝に何かつけていることから、身体の一部だけを守る物を身に着けているということはわかった。
「男だな」
「……どちらさまですか」
「お前を攫いにきた」
そう言って、その女性は剣のような武器で格子をガンッ! と叩いた。さすがにマンガやアニメのようにスパンッ! と切ることはできなかったようである。そのまま何度もガンガンと剣を叩きつける。
「お止めなさいっ!」
その後ろからゆかりさんが現れ、一瞬でその女性を倒してしまった。
「旦那さま、ご無事ですかっ?」
「僕は大丈夫、ゆかりさん、後ろー!」
「はいっ!」
後ろから何人もここの女性とは違うだろう人たちが入ってくる。
「ゆかりさん、僕にも戦わせてくれ!」
「だめです!」
ゆかりさんは流れるような身のこなしで部外者をどんどん倒していった。そうしてしばらくすると全員倒してしまったのか、その場は静かになった。
「こんなところまで侵入者を許してしまうなんて……旦那さま、本当に申し訳ありません」
「ゆかりさんが無事ならそれでいいよ」
自分でも情けないと思うが、魔法が使えない僕なんて本気で役に立たない。
ただ、これで一安心とはいえなかった。
「最近招き入れた男を出せ! 四人ぐらいいるはずだ! 出さないなら他の男たちを連れていくぞ!」
屋敷内に響いた声(きっと拡声器のようなものを使っているか、そういう魔法を使っている)に、ゆかりさんはつらそうな顔をした。
僕たち四人よりもこの村にずっといる男たちの方が大事に決まっている。ジャンニー村が攻めてきたのは、僕たちを自分たちの村で種馬にしたいからだろう。
「……卑怯な……」
「ゆかりさん、僕は出るよ。その代わりこの首のものを外してくれない? 逃げないからさ」
「……逃げてもいいのですよ?」
ゆかりさんが悲しそうに笑んだ。
「逃げる先なんかないんだよね。僕は元々こちらの人じゃないしさ」
僕は情けなく笑った。
「でも、ゆかりは旦那さまにはここにいてほしいです……」
「その言葉だけで十分だよ」
ゆかりさんは少し葛藤していたみたいだが、諦めたように牢から僕を出した。魔法を封じている首輪は、外に出たら外してくれるみたいだ。
僕がいた場所は地下牢だったらしい。ゆかりさんに案内されるまま階段を上り、屋敷の外へ出る。
そこには、怪我をしている女性たちがいた。僕以外の、前髪長男やロンゲ、そして小平も集められている。広場のようなところで、メイニー村の女性たちとジャンニー村? の女性たちが対峙している。そこに僕たちが引き出されたような形だった。
前髪長男は「なんなんだよ僕は妊娠させたんだぞなのになんで牢屋なんかに入れられてしかも今はこんなところに連れてこられてるんだよ」とかぶつぶつ言ってて怖い。
ジャンニー村の女性たちはみな髪の色がカラフルでわかりやすかった。ロンゲは困ったようななんとも言えない顔をしていた。
「斉藤」
「小平」
「これからどうなるんだろうな」
小平に声をかけられて首を振った。
どうせ僕たちの命運はここの女性たちにゆだねられている。でもできれば僕はここに残りたいと思う。まだゆかりさんを妊娠させてないしね。
「どういうことだよ? 拾った男を独占するなんざ協定違反だろーがっ!」
ジャンニー村から緑色の髪をした女性が出てきて怒鳴るように言った。
「彼らは旅人です。たまたま私たちの村に長く滞在しているにすぎません」
村の上役と思われる女性が進み出て説明する。
「違うだろ? アタシは知ってるんだぜ。この男どもには帰る場所がないってことをなぁっ!」
それを聞いて、いったい誰が情報をジャンニー村の人たちに流したんだろうなと思った。
予想通り男の取り合いだということがわかり胸を撫で下ろす。メイニー村の女性たちが傷つくのは困るが、僕たちもそう悪い扱いはされないだろう。
あ、でも。
種馬だとただひたすらに上に乗られるだけの可能性もあるのかと思い、ちょっとだけげんなりしたのだった。
ないだろうけどここでじっと守られているだけというのもアレなので聞いてみる。ゆかりさんは笑んで首を振った。
「何も。旦那さまはこちらでどうかお待ちください」
「そっかぁ……」
僕は苦笑することしかできない。
その途端ドンッ! とでかい音がして屋敷が少し揺れたみたいだった。
「そんな……」
ゆかりさんが思わず、というように声を漏らす。
「きゃああっ!」
「ここにはっ……!」
少し離れたところから女性たちの声が聞こえてくる。それは悲鳴のようだった。
「旦那さま、しばしお待ちください」
ゆかりさんがさっと立ち上がり、離れていく。
「ゆかりさんっ!」
「旦那さまを渡したりはしませんわ」
僕はただここで守られていることしかできないのだろうか。怪力の魔法とかあったような気がすると思って探そうとするも、頭に鋭い痛みが走って集中できない。きっとこの首につけられている物が魔法を使おうとする脳の回路か何かを阻害しているのだろう。
「くっ……!」
でもどうにかしてここを出ないと……と思っても、僕の素の力ではこの格子を壊すことなんてできやしない。
ドンッ! と再び派手な音がした。それと同時に先ほどよりも揺れたような気がした。
「見ぃつけたぁ……」
「えっ……」
ゆかりさんが向かった方から、派手なオレンジ色の髪が覗いた。
女性、なんだろう。髪は短くて、派手な化粧をしている。その恰好はここの女性たちとは違い、布の少ない、水着に毛が生えたような恰好といってもいい。肘や膝に何かつけていることから、身体の一部だけを守る物を身に着けているということはわかった。
「男だな」
「……どちらさまですか」
「お前を攫いにきた」
そう言って、その女性は剣のような武器で格子をガンッ! と叩いた。さすがにマンガやアニメのようにスパンッ! と切ることはできなかったようである。そのまま何度もガンガンと剣を叩きつける。
「お止めなさいっ!」
その後ろからゆかりさんが現れ、一瞬でその女性を倒してしまった。
「旦那さま、ご無事ですかっ?」
「僕は大丈夫、ゆかりさん、後ろー!」
「はいっ!」
後ろから何人もここの女性とは違うだろう人たちが入ってくる。
「ゆかりさん、僕にも戦わせてくれ!」
「だめです!」
ゆかりさんは流れるような身のこなしで部外者をどんどん倒していった。そうしてしばらくすると全員倒してしまったのか、その場は静かになった。
「こんなところまで侵入者を許してしまうなんて……旦那さま、本当に申し訳ありません」
「ゆかりさんが無事ならそれでいいよ」
自分でも情けないと思うが、魔法が使えない僕なんて本気で役に立たない。
ただ、これで一安心とはいえなかった。
「最近招き入れた男を出せ! 四人ぐらいいるはずだ! 出さないなら他の男たちを連れていくぞ!」
屋敷内に響いた声(きっと拡声器のようなものを使っているか、そういう魔法を使っている)に、ゆかりさんはつらそうな顔をした。
僕たち四人よりもこの村にずっといる男たちの方が大事に決まっている。ジャンニー村が攻めてきたのは、僕たちを自分たちの村で種馬にしたいからだろう。
「……卑怯な……」
「ゆかりさん、僕は出るよ。その代わりこの首のものを外してくれない? 逃げないからさ」
「……逃げてもいいのですよ?」
ゆかりさんが悲しそうに笑んだ。
「逃げる先なんかないんだよね。僕は元々こちらの人じゃないしさ」
僕は情けなく笑った。
「でも、ゆかりは旦那さまにはここにいてほしいです……」
「その言葉だけで十分だよ」
ゆかりさんは少し葛藤していたみたいだが、諦めたように牢から僕を出した。魔法を封じている首輪は、外に出たら外してくれるみたいだ。
僕がいた場所は地下牢だったらしい。ゆかりさんに案内されるまま階段を上り、屋敷の外へ出る。
そこには、怪我をしている女性たちがいた。僕以外の、前髪長男やロンゲ、そして小平も集められている。広場のようなところで、メイニー村の女性たちとジャンニー村? の女性たちが対峙している。そこに僕たちが引き出されたような形だった。
前髪長男は「なんなんだよ僕は妊娠させたんだぞなのになんで牢屋なんかに入れられてしかも今はこんなところに連れてこられてるんだよ」とかぶつぶつ言ってて怖い。
ジャンニー村の女性たちはみな髪の色がカラフルでわかりやすかった。ロンゲは困ったようななんとも言えない顔をしていた。
「斉藤」
「小平」
「これからどうなるんだろうな」
小平に声をかけられて首を振った。
どうせ僕たちの命運はここの女性たちにゆだねられている。でもできれば僕はここに残りたいと思う。まだゆかりさんを妊娠させてないしね。
「どういうことだよ? 拾った男を独占するなんざ協定違反だろーがっ!」
ジャンニー村から緑色の髪をした女性が出てきて怒鳴るように言った。
「彼らは旅人です。たまたま私たちの村に長く滞在しているにすぎません」
村の上役と思われる女性が進み出て説明する。
「違うだろ? アタシは知ってるんだぜ。この男どもには帰る場所がないってことをなぁっ!」
それを聞いて、いったい誰が情報をジャンニー村の人たちに流したんだろうなと思った。
予想通り男の取り合いだということがわかり胸を撫で下ろす。メイニー村の女性たちが傷つくのは困るが、僕たちもそう悪い扱いはされないだろう。
あ、でも。
種馬だとただひたすらに上に乗られるだけの可能性もあるのかと思い、ちょっとだけげんなりしたのだった。
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