ハロウィン前夜の甘い罠

浅葱

文字の大きさ
上 下
1 / 1

ハロウィン前夜の甘い罠

しおりを挟む
 男友達に紹介された、イケメンハイスペックのカレと付き合い始めたのはつい先月。
 細い黒縁の、フレームの眼鏡がよく似合うイケメンは多忙だった。
 やっと10月31日の土曜日にデートの約束を取り付けたものの、ハロウィンには乗ってくれそうもない。
 というわけで友人に相談してみた。

「で? ゆりはそのイケメン彼氏をどうしたいの?」
「どうしたいってゆーか……」

 一緒にハロウィンを過ごしてみたいだけで。別にトリックオアトリートじゃなくてもいいのだ。そーゆー雰囲気のローソクに火をつけて、かぼちゃベースのケーキを食べるとかでもいいわけで。
 でもなんか堅物に見える彼氏はそういうことに付き合ってくれそうもない。

「合鍵もらったんだよね、この間」
「超進展してんじゃん!」
「だから30日の夜からお泊りしちゃだめ? って聞いたんだけど、何時に帰れるかわからないからダメって言われて……」
「気にしないで突撃してみたら? 仮装道具でも持って」
「仮装道具?」

 友人はにんまりした。

「魔女っぽいカッコしてさ、帰ってきたら”trick or treat”って言ってみるとか? お菓子持ってなければそのまま押し倒しちゃえばいーんじゃない?」
「えー……カナはそうするの?」
「うちは……また違うかな」

 友人はあさっての方向を見て言葉を濁した。

「魔女っぽいカッコで押し倒す……」

 ということは帽子とマントは用意して、マントの下は下着姿とかがいいのだろうか。

「ゆりがあほなこと考え始めたー。下着はレースの白とかだとギャップ萌えかも。帽子とマントは多分今百均でも買えるよー」
「……呆れられるかな」
「どーせうちのカレからの紹介でしょ? 大丈夫じゃない?」

 そう、この友人と男友達は付き合っている。友人と私の仲がよすぎるからってカレを紹介してくれたのだ。

「そーだね。じゃあなんかあった時の責任はカナのカレに押し付けよう!」
「OK~」

 というわけで準備をして、金曜日カレの家に突撃してみた。


 *  *

 
 カレの家の中はとてもキレイだった。なんかモデルルームみたいで落ち着かない。広くて、3LDKぐらいある。寝室を見つけてどきどきした。

「なんで合鍵もらったんだっけ? うちのアパートのセキュリティがどーのって言ってたっけ?」

 イケメンに見惚れてあんまり話を聞いてなかった気がする。この間LINEで家の住所と部屋番号も教えてもらって……。

「今日もお仕事忙しいの? たいへんだね。そろそろおうち帰れそう?」

 LINEを入れてみた。返事があってもなくても気にしないけど、帰宅する時間はちょっと知りたいなって思った。カレはこういう連絡はまめで。

「やっと帰路についてるよ。明日は何時がいい?」

 映画を一緒に観に行く約束をしていたのだ。

「家についたら連絡して。休める時に休んでほしいし」

 12時に帰宅した人に朝10時に待ち合わせとか言いたくないし。でも帰ってから連絡ってかえって気を遣わせちゃうのかな。あ、ダジャレではないです。
 シャワーを借りてキレイにして、白いレースの下着を身に着けてマントを羽織り、帽子を被って鏡を見た。
 おかしくはないけど、どうかなーと思うかんじ。

「んー……滑った時すぐに帰れるように着替えは玄関に置いておくべきかしら……」

「は?」とか冷たい目で言われたら立ち直れないし。
 着替えを入れたバッグごと玄関の隅に置いた。

「……うーん、やっぱやめて帰った方がいいかなー」

 気持ちがくじけてきた。何事もなかったかのように帰ればバレないかも。
 玄関を上がったところでうろうろしながら悩んでいたら、なんと家の鍵を開ける音が……。

 カチャカチャ、ガチャ……。

 唾を飲み込んで、ドアが開くのを待った。

「……あれ? 電気つけっぱなしだったか……」

 カレのステキな声が聞こえて、胸が高鳴るのを感じた。こーなったらやるしかない。
 バタンとドアが閉まったところで、

「と、とりっくおあとりーと!」

 目を閉じて叫ぶように言ったら。

「……日はまだ……いえ、変わりましたね」

 という冷静な声と共に、何故か抱きしめられて、そのまま横抱きにされた。
 これってお姫様だっこ?

「……え?」
「お菓子はないのでいたずらでお願いします。疲れているので手加減はできません。朝まで離しませんので覚悟してください」
「え?」

 頭に?がいっぱい並んだ。そのまままっすぐ寝室まで運ばれて、シーツでぐるぐる巻きにされた。

「?」
「ちょっと待っていてくださいね」

 なんだろうとどうにか巻き付けられたシーツを取ったところでカレが戻ってきて、何故かいっぱい全身にいたずらされて、あんあん啼かされてしまったのだった。


「???」

 なんでこーなったんだっけ?
 翌朝変わらず頭に?がいっぱい並んだ状態で目覚めたら、

「まだいたずらしたりません……」

 ベッドから出してもらえなくなった。

「……仕事の後は疲れているので性欲がすごいんですよ。だから会わないようにしていたのに……」

 落ち着いてからぼやくように言われて顔が熱くなった。私もカレに抱かれたかったから。

「ゆり、そういうかわいいことを言うともう絶対に離しませんよ?」

 私たちが無事映画を見に行けたのかかどうかは、ご想像にオマカセシマス。



Love Love End!
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

がねさん
2020.10.28 がねさん

うん❤️可愛いです💕
(*´꒳`*)

いいなぁ❤️



ちぇっ‼️どぉ〜せ私はぼっちだよ❗️
(T_T)オバケと飲んだくれてやるぅ〜
羨ましくなんて…(T_T)ないもん

2020.10.29 浅葱

ありがとうございますー♪
オバケにもきっとイケメンが!(ぉぃ

解除

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で宮廷魔導師やってます

浅葱
恋愛
召喚された先は異世界だった。 その国の王は魔力を持つ人材を集めているらしい。 私には魔力があったらしく、魔法を使えるようになって宮廷魔導師になった。 そこで無口な宮廷魔導師長に惚れてしまい…… 王が崩御したことで、不当に連れてこられた者たちは帰国できることになった。 だけど私は……。 隠れイケメン上司×異世界トリップしてきた平職員の溺愛ハッピーエンド物語です。 「プチプリ、〜憧れ職業Love〜お仕事TL短編小説コンテスト」で最優秀賞をいただいた作品です(プチプリは6/30閉鎖予定です)

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。