【完結】ブラコンの私が悪役令嬢に転生するとどうなる? こうなる

浅葱

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三、

1.巻き込まれました

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「また三位か。君たちは本当に優秀だね。とてもかなわないよ」

 二学期の中間考査が終り結果が張り出されたその日、みながテストの結果を見に来ているタイミングで、私はようやくヒロインを隣国の王子に紹介することができた。
 隣国の第三王子である、レックス・コンプ・ミコイモー・リングオはそう言って朗らかに笑った。ヒロインであるリトーネ・イテイーサは相変わらず純粋で、隣国王子の目が笑っていないことに気付いていない。
 そういえば隣国王子は劣等感の塊だったということを、私ことシーアン・サワクーロはやっと思い出したのだった。
 しかし学園に在籍しているからには未来の王太子妃として情けない成績は取れないし、ヒロインも十位以内でないと隣国王子と同じクラスには入れないしでなかなかうまくいかないものである。

「いえ、そんな……。あ、あのっ! よろしければリングオさまも私たちと一緒に勉強しませんか?」

 な ん で す と ?
 今後のことを考えていたら、目がハートマークになったヒロインがとんでもないことを言いだした。隣国王子も一瞬、は? と言いたげな目をしたが、すぐにそうとわからぬよう笑みを深くした。

「とても魅力的なお誘いだね。もしよかったら明日の昼休みにでも付き合ってくれるかい?」

 さすがにこんなところで女性に恥をかかせるわけにはいかないと思ったのだろう。昼休み、というのはある意味妥協点とも言える。そんなことに全く気付いていないヒロインは私の手を取り、「シーア! お昼も一緒ですって!」ととても嬉しそうだった。
 そもそもヒロインと一緒に勉強などしたことがない私は内心嘆息した。とりあえず放課後に折檻しようと思う。


「何を勝手に仕切ってらっしゃるのかしらあ?」
「いはい、いはい! らって、らって! そうへもひはいとさそえないははい!!」(痛い、痛い! だって、だって! そうでもしないと誘えないじゃない!!)

 両頬をみにょーんと引っ張るおしおきをしながら笑んでやると、ヒロインは顔を真っ赤にしながらそう反論した。私は大仰に嘆息した。

「急いては事を仕損じる……とも言うじゃないの。このままいけば三学期には元のクラスに戻れるのだからそれを待ってもよかったのではなくて?」
「せいては……? シーアってば本当に難しい言葉知ってるわよねー」
「貴方こんなことわざも知らないでどうやってあんな成績が取れているのっ!?」

 これが勉強詰め込みの弊害か。そういえばかつて、小学受験を目指している子たちに一休さんの「このはしわたるな」を試す、というのをTVで見たような気がする。実際話を知っていて渡れた子は1人もいなかったような……?
 それはともかく。

「紹介はしたのだから後は自分でなんとかしなさいな」
「ええー、友達じゃん。付き合ってよー。あ、それともライバル宣言しちゃう?」
「……するわけないでしょう」

 私は脱力した。かなりヒロインに懐かれているという自覚はある。ヒロインも元々バカではないので、自分の立ち位置を理解するとうかつな行動や言動はしなくなった。だがその分私の前ではあほの子になるのがいただけないが。
 さて、それよりも隣国王子の件である。

「リングオさまの設定は覚えているわね? ただ……せいぜい参考程度にしかならないとは思うけど」
「うん、確か国では微妙な立ち位置だったわよね。成績優秀で、身分が低くて、王子を立てる婚約者を求めているんだったっけ
「確かそうだったと思うわ。……でも、そんな男でいいの?」

 少し心配になって聞くと、ヒロインは少しだけ困ったような表情をした。

「……あの王子の妾になるよりはいいわ」
「それもそうね」

 第二王子はどういうわけかヒロインを第二夫人にするという要望をまだ取り下げてはいなかった。現在は一応形だけだとは思うが、学園を卒業してしまうと断る口実がなくなってしまう。そうなればイテイーサ男爵が喜々としてヒロインを第二王子に差し出すのは目に見えている。いくら友人でもそこまで口は出せないのが歯がゆかった。
 隠しキャラその1である隣国王子の話に戻ろう。
 名前は前述した通りレックス・コンプ・ミコイモー・リングオというリングオ王国の第三王子である。彼は少し長めの黒髪に銀の瞳を持つすらりとした美形で、ゲーム内では優秀な兄たちにコンプレックスを持っていた。表面上兄たちとの関係はよく、将来兄たちの補佐をする為に婚約者の選定をしているところである。
 隣国王子とのルートは、ヒロインが誰ともくっつかないいわゆるお友だちエンドを迎えると発生することはすでに述べた。(ただし二周目に限る)
 彼は第二王子の友人であり、ヒロインのことは知っていた。彼女が第二王子とくっつかなかったことにより興味を持ち何かと話しかけるようになる。一緒に勉強することでお互いのいいところを知り惹かれあう。好感度が上がると夜会のパートナーを打診される。ニ、三回夜会に出た後口説かれるというパターンだ。隣国王子はいちいち科白が甘いせいか、それなりに人気を博していたような気がする。かくいう私も画面の向こうで身悶えていたものだった。

「じゃあ私はあくまで添え物で参加するから、貴女はがんばってね」
「ありがとう! シーア、大好きー!」

 こうして不本意ながら昼休みの勉強会に参加することになったのだが、それがトラブルを引き寄せることになるなんて私はみじんも想像してはいなかった。
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