56 / 214
54.ベランダで少しだけ話をしてみる
しおりを挟む
遅めの昼食を食べ終えてからベランダに出た。ジャックの腕の中で、風が気持ちいいと思った。
食休みをしたらまた二輪挿しされてしまうのだろうか。想像しただけでふるりとした。
「期待しているのか?」
「期待なんか……してないっ……!」
恥ずかしくなってジャックの胸に顔を埋めた。
「カイトはなんでこんなにかわいいのだろうな」
「か、かわいくなんか、ない、から……」
俺は早川先輩より大きいしがたいもいいんだぞ。かわいいはずがないのだ、と思うのだけどジャックとジャンは巨人族だから俺なんかよりはるかに大きい。ジャックとか3m近くあるし。体格差だけでもまるで大人と子供だ。
ジャックがくくっと笑う。なんか面白くなかった。
「……ジャックって、巨人族の中では背丈ってどうなんだよ? 高い方? それとも普通?」
「そうだな、高い方かもしれん。俺より高い者はあまりいない」
「そうなんだ? ジャンは普通?」
「普通といえば普通だな。エインさまはどちらかといえば低い方だ。それでもただの人よりは大きいだろうが」
「エインさま?」
「カイトの先輩とやらのところにいた巨人族だ」
「ああ!」
早川先輩のところにいた巨人族の名前が確かエインだった。そんなに顔を合わせたわけでもないので覚えていない。つか、先輩以外覚えていないといってもいい。ジャックは苦笑した。
「お茶を飲むか?」
ベランダのベンチにジャックが腰かけて聞いてきた。俺はその腕の中にいるから、必然的に一緒に座ることになった。
「うん」
後ろに控えていたジャンがすぐに用意してくれた。昼食の後だがお茶菓子もついていた。食べやすい大きさのクッキーだった。ミルクティーをこくこくと飲む。これけっこうおいしい。
庭の向こうでレイドじゃない奴隷が見回りをしているのが見えた。今レイドは交替して寝ているのかもしれない。いい天気だった。このまままったりと過ごしてもいいような気がするのだが、色を含んだ目で見られたら落ち着かなくなってしまった。なんだか、そういうことにもこの身体は反応してしまうらしい。厄介だなって思った。
寝起きのぽわぽわはとっくになくなっているから、すぐに抱いてほしいとは思わない。だから俺は気にしないことにした。二人が我慢できなくなればまた寝室に連れ込まれるだろう。それまで俺はのんびり庭を眺めていればいい。
庭の向こうには道があって、その更に向こうに森が見える。以前の俺ならなんかいないかと喜び勇んで入っていってしまうだろう。それできっと迷子になってパーティーメンバーに迷惑をかけるんだ。でももうそんなことはできない。少しでも怪我をすれば身体をおかしくしてしまう。いわゆる免疫不全みたいな状態になっているのだ。
できることは、男たちに愛されることだけ。尻穴の周りと尻穴の中だけはどんなに刺激を受けても平気で、それ以外の場所はいじられ続ければ赤くなってしまったりするので回復魔法を使える人間が側にいないといけない。
弱いなぁって思う。もう冒険もできなくて、確かにお金がなくなってひもじい思いはしないけど……。
なんか目が潤んできた。
「カイト、泣くな……」
目元をジャックの指が拭ってくれた。
「……っ泣いて、ない……」
しょうがないとか、どうしようもないんだとか、自分に言い訳ばかりしている。こんなことなら死んでしまえばよかったのかもしれない。でも俺はまだここにいて、「天使」なんてものになってしまって、生き恥を晒している。
「俺、なんでこの世界に来たのかな……」
「わからん。異世界から人を呼ぶ技は王宮にしか伝わっていないはずだ。だが、その技があるならば自然と渡ることもあるのかもしれない」
よくわからなかったけどなんとなくそれに納得してしまった。先輩は召喚されてこちらの世界に来たらしい。光山先輩がこの世界の王様になって……とか意味のわからないことを聞いた。この世界大丈夫かとか失礼なことを考えてしまった。
もしかしたら光山先輩とか早川先輩がこちらに来てしまったから、それに引かれて渡ってしまったのかもしれないと思えば、ありかなとも考えた。……かなり無理はあるけど。
「カイトにとっては望まない”渡り”だったかもしれない。だが、俺たちはカイトに出会えたことが嬉しくてならないんだ。カイトだから俺たちは嫁を得ることができた。やっと一人前になったんだ」
「……え……」
「この世界には様々な人種がいる。あまり結婚ということに囚われない種族もいるが、巨人族は伴侶がいなければ認められない」
「それって、じゃあ……」
先輩のところの人は?
「エインさまはまた違うが、俺たちはそうなのだ」
「んー……でもさ、俺とは子どもはできないんだろ?」
「子は授かりものだ。できない夫婦など沢山いる。我らにとって大事なものは伴侶なのだ」
「そうなんだ……」
巨人族って全然わからないけどそういうものらしい。性欲が強いから伴侶を得るとずっとヤりまくるというのだ。どんなエロ本だと思う。
「伴侶って何するんだよ?」
わかりきった答えを聞く。ジャックがニヤリとした。かっこよすぎていやだなぁ。
「もちろん、愛し合うに決まっている」
クッキーは一枚しか食べられなかった。
食休みをしたらまた二輪挿しされてしまうのだろうか。想像しただけでふるりとした。
「期待しているのか?」
「期待なんか……してないっ……!」
恥ずかしくなってジャックの胸に顔を埋めた。
「カイトはなんでこんなにかわいいのだろうな」
「か、かわいくなんか、ない、から……」
俺は早川先輩より大きいしがたいもいいんだぞ。かわいいはずがないのだ、と思うのだけどジャックとジャンは巨人族だから俺なんかよりはるかに大きい。ジャックとか3m近くあるし。体格差だけでもまるで大人と子供だ。
ジャックがくくっと笑う。なんか面白くなかった。
「……ジャックって、巨人族の中では背丈ってどうなんだよ? 高い方? それとも普通?」
「そうだな、高い方かもしれん。俺より高い者はあまりいない」
「そうなんだ? ジャンは普通?」
「普通といえば普通だな。エインさまはどちらかといえば低い方だ。それでもただの人よりは大きいだろうが」
「エインさま?」
「カイトの先輩とやらのところにいた巨人族だ」
「ああ!」
早川先輩のところにいた巨人族の名前が確かエインだった。そんなに顔を合わせたわけでもないので覚えていない。つか、先輩以外覚えていないといってもいい。ジャックは苦笑した。
「お茶を飲むか?」
ベランダのベンチにジャックが腰かけて聞いてきた。俺はその腕の中にいるから、必然的に一緒に座ることになった。
「うん」
後ろに控えていたジャンがすぐに用意してくれた。昼食の後だがお茶菓子もついていた。食べやすい大きさのクッキーだった。ミルクティーをこくこくと飲む。これけっこうおいしい。
庭の向こうでレイドじゃない奴隷が見回りをしているのが見えた。今レイドは交替して寝ているのかもしれない。いい天気だった。このまままったりと過ごしてもいいような気がするのだが、色を含んだ目で見られたら落ち着かなくなってしまった。なんだか、そういうことにもこの身体は反応してしまうらしい。厄介だなって思った。
寝起きのぽわぽわはとっくになくなっているから、すぐに抱いてほしいとは思わない。だから俺は気にしないことにした。二人が我慢できなくなればまた寝室に連れ込まれるだろう。それまで俺はのんびり庭を眺めていればいい。
庭の向こうには道があって、その更に向こうに森が見える。以前の俺ならなんかいないかと喜び勇んで入っていってしまうだろう。それできっと迷子になってパーティーメンバーに迷惑をかけるんだ。でももうそんなことはできない。少しでも怪我をすれば身体をおかしくしてしまう。いわゆる免疫不全みたいな状態になっているのだ。
できることは、男たちに愛されることだけ。尻穴の周りと尻穴の中だけはどんなに刺激を受けても平気で、それ以外の場所はいじられ続ければ赤くなってしまったりするので回復魔法を使える人間が側にいないといけない。
弱いなぁって思う。もう冒険もできなくて、確かにお金がなくなってひもじい思いはしないけど……。
なんか目が潤んできた。
「カイト、泣くな……」
目元をジャックの指が拭ってくれた。
「……っ泣いて、ない……」
しょうがないとか、どうしようもないんだとか、自分に言い訳ばかりしている。こんなことなら死んでしまえばよかったのかもしれない。でも俺はまだここにいて、「天使」なんてものになってしまって、生き恥を晒している。
「俺、なんでこの世界に来たのかな……」
「わからん。異世界から人を呼ぶ技は王宮にしか伝わっていないはずだ。だが、その技があるならば自然と渡ることもあるのかもしれない」
よくわからなかったけどなんとなくそれに納得してしまった。先輩は召喚されてこちらの世界に来たらしい。光山先輩がこの世界の王様になって……とか意味のわからないことを聞いた。この世界大丈夫かとか失礼なことを考えてしまった。
もしかしたら光山先輩とか早川先輩がこちらに来てしまったから、それに引かれて渡ってしまったのかもしれないと思えば、ありかなとも考えた。……かなり無理はあるけど。
「カイトにとっては望まない”渡り”だったかもしれない。だが、俺たちはカイトに出会えたことが嬉しくてならないんだ。カイトだから俺たちは嫁を得ることができた。やっと一人前になったんだ」
「……え……」
「この世界には様々な人種がいる。あまり結婚ということに囚われない種族もいるが、巨人族は伴侶がいなければ認められない」
「それって、じゃあ……」
先輩のところの人は?
「エインさまはまた違うが、俺たちはそうなのだ」
「んー……でもさ、俺とは子どもはできないんだろ?」
「子は授かりものだ。できない夫婦など沢山いる。我らにとって大事なものは伴侶なのだ」
「そうなんだ……」
巨人族って全然わからないけどそういうものらしい。性欲が強いから伴侶を得るとずっとヤりまくるというのだ。どんなエロ本だと思う。
「伴侶って何するんだよ?」
わかりきった答えを聞く。ジャックがニヤリとした。かっこよすぎていやだなぁ。
「もちろん、愛し合うに決まっている」
クッキーは一枚しか食べられなかった。
17
お気に入りに追加
3,515
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる