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54.少しは我慢も必要です
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「少し休憩しましょうか」
「ああ」
王(ワン)家の領地はそれなりに多く(いろいろなところに点在していたりする)、そして広いので書類も多岐に渡る。結婚するまでは義父と智軒(ジージエン)、智倫(ジーリン)が主に書類を見ていたらしいが、私と結婚したのでこれ幸いと義父母は領地の一つに引っ込んでしまった。おかげで結婚当初二人もそれなりにたいへんだったらしい。
今ではさすがに慣れ、よほどのことがない限り処理しづらいというものはないらしいが、私も少しは役に立っているようで嬉しかった。
執務室から楼台に出る。その移動も智倫に抱き上げられてだ。
あれから一か月以上も経ったのに、私はまだ慣れなくて自分で立ち上がろうとしては窘められていた。
「だめですよ」
「んっ……」
今日も自分で椅子から立ち上がろうとして、智倫に窘められた。唇を塞がれて、舌を吸われ、口腔内を舐められる。
「んんっ……」
「……そろそろ慣れていただかないと襲ってしまいそうです」
口元でそう囁かれて頬が熱くなった。そんなことをしていたらとても仕事にならないだろう。
「……すまない」
「勇志(ヨンジー)が謝ることではございません。これは私たちの問題です」
よくわからなくて首を傾げた。
「私たちが貴方の命令を聞かず、想いのままに貴方を奪ってしまえばよかったというだけの話ですよ」
「……あ……」
もしそうされていたら、私は夫たちにもっと早く慣れただろうか。
智倫は嘆息した。
「……ですが、そのようなことをしたら私たちは貴方の信頼を完全に失っていたかもしれません。今朝のような、快感に蕩けた顔を見せてもらえる日はなかったかもしれませんから……」
快感に蕩けた……と言われてまた頬が熱くなった。確かに、朝勃ちの処理をと言われながら私は喜んでいたと思う。智倫と智明に求められるのが嬉しくて、中を濡らしていた。
「……私は……」
何を言ったらいいのかわからなかった。
智倫は「困らせてしまいましたね」と言って、私を楼台の長椅子に運んだ。
長椅子に直接腰掛けることはない。私は当たり前のように智倫の膝の上に横抱きにされて、また蓋碗でお茶を飲もうとして茶葉に困ってしまった。
「勇志」
「んっ……」
また口づけられて茶葉を奪われる。あまり口づけられると身体が熱くなってしまうからとても困る。
「智倫……」
「どうかなさいましたか?」
「茶葉は、その……」
「勇志に口づける口実なのですから、許していただけませんか?」
「……わ、わかった……」
夫に口づけられるのは、正直嬉しいのだ。手間をかけさせてしまっているのではないかと思っていたけれど、口づける口実と言われてしまえば従わざるをえない。
お茶をどうにかして飲み干せば、深く唇が重なった。
「んんっ……」
夫から与えられる口づけはひどく甘くて、すぐに身体から力が抜けてしまう。智倫は私の舌を吸うのが好きみたいだ。きゅっきゅっと吸われるのが気持ちいい。
でもあまり吸われてしまうと抱かれたくなってしまうから、ほどほどにしてほしいとは思う。
「……んっ……ぁん……」
「……我を忘れるところでした。早く仕事を終えて、午後は抱かせていただかなくては……」
「……あ……」
このまま抱いてもらえると思ってしまった己が恥ずかしかった。
「勇志を今すぐ抱きたいのはやまやまなのですが……仕事を放りだすような夫は嫌でしょう?」
耳元で囁かれて頷いた。でも一度火がついてしまった身体を宥めるのはたいへんだった。朝食後から午後までの間、口づけをするのは止めてもらった方がいいかもしれないなんて思った。
「やっぱり……その、仕事中の口づけは……」
「休憩時間でもだめなのでしょうか?」
智倫に切なそうな顔をされたら何も言えなくなってしまった。
「あ、あまり……その、深くしないでくれれば……」
「……それは難しいですね。勇志はとてもかわいいですから」
あまりにも甘くて目が潤んできてしまった。
「じゃあ、その……やっぱり……口づけは」
「努力します! 努力しますからそんな悲しいことは言わないでください!」
横抱きにされて顔中に口づけられ、やっぱり私は困ってしまったのだった。
「ああ」
王(ワン)家の領地はそれなりに多く(いろいろなところに点在していたりする)、そして広いので書類も多岐に渡る。結婚するまでは義父と智軒(ジージエン)、智倫(ジーリン)が主に書類を見ていたらしいが、私と結婚したのでこれ幸いと義父母は領地の一つに引っ込んでしまった。おかげで結婚当初二人もそれなりにたいへんだったらしい。
今ではさすがに慣れ、よほどのことがない限り処理しづらいというものはないらしいが、私も少しは役に立っているようで嬉しかった。
執務室から楼台に出る。その移動も智倫に抱き上げられてだ。
あれから一か月以上も経ったのに、私はまだ慣れなくて自分で立ち上がろうとしては窘められていた。
「だめですよ」
「んっ……」
今日も自分で椅子から立ち上がろうとして、智倫に窘められた。唇を塞がれて、舌を吸われ、口腔内を舐められる。
「んんっ……」
「……そろそろ慣れていただかないと襲ってしまいそうです」
口元でそう囁かれて頬が熱くなった。そんなことをしていたらとても仕事にならないだろう。
「……すまない」
「勇志(ヨンジー)が謝ることではございません。これは私たちの問題です」
よくわからなくて首を傾げた。
「私たちが貴方の命令を聞かず、想いのままに貴方を奪ってしまえばよかったというだけの話ですよ」
「……あ……」
もしそうされていたら、私は夫たちにもっと早く慣れただろうか。
智倫は嘆息した。
「……ですが、そのようなことをしたら私たちは貴方の信頼を完全に失っていたかもしれません。今朝のような、快感に蕩けた顔を見せてもらえる日はなかったかもしれませんから……」
快感に蕩けた……と言われてまた頬が熱くなった。確かに、朝勃ちの処理をと言われながら私は喜んでいたと思う。智倫と智明に求められるのが嬉しくて、中を濡らしていた。
「……私は……」
何を言ったらいいのかわからなかった。
智倫は「困らせてしまいましたね」と言って、私を楼台の長椅子に運んだ。
長椅子に直接腰掛けることはない。私は当たり前のように智倫の膝の上に横抱きにされて、また蓋碗でお茶を飲もうとして茶葉に困ってしまった。
「勇志」
「んっ……」
また口づけられて茶葉を奪われる。あまり口づけられると身体が熱くなってしまうからとても困る。
「智倫……」
「どうかなさいましたか?」
「茶葉は、その……」
「勇志に口づける口実なのですから、許していただけませんか?」
「……わ、わかった……」
夫に口づけられるのは、正直嬉しいのだ。手間をかけさせてしまっているのではないかと思っていたけれど、口づける口実と言われてしまえば従わざるをえない。
お茶をどうにかして飲み干せば、深く唇が重なった。
「んんっ……」
夫から与えられる口づけはひどく甘くて、すぐに身体から力が抜けてしまう。智倫は私の舌を吸うのが好きみたいだ。きゅっきゅっと吸われるのが気持ちいい。
でもあまり吸われてしまうと抱かれたくなってしまうから、ほどほどにしてほしいとは思う。
「……んっ……ぁん……」
「……我を忘れるところでした。早く仕事を終えて、午後は抱かせていただかなくては……」
「……あ……」
このまま抱いてもらえると思ってしまった己が恥ずかしかった。
「勇志を今すぐ抱きたいのはやまやまなのですが……仕事を放りだすような夫は嫌でしょう?」
耳元で囁かれて頷いた。でも一度火がついてしまった身体を宥めるのはたいへんだった。朝食後から午後までの間、口づけをするのは止めてもらった方がいいかもしれないなんて思った。
「やっぱり……その、仕事中の口づけは……」
「休憩時間でもだめなのでしょうか?」
智倫に切なそうな顔をされたら何も言えなくなってしまった。
「あ、あまり……その、深くしないでくれれば……」
「……それは難しいですね。勇志はとてもかわいいですから」
あまりにも甘くて目が潤んできてしまった。
「じゃあ、その……やっぱり……口づけは」
「努力します! 努力しますからそんな悲しいことは言わないでください!」
横抱きにされて顔中に口づけられ、やっぱり私は困ってしまったのだった。
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