野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~

浅葱

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71.ピー太、先のことを考える

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 また学校とやらが始まった。
 ずっとトモノリと一緒に過ごせないのはつまらないが、人というのは大人になるまでにさまざまな勉強というものをしないといけないらしい。トモノリは人のオスとしては小さいが、十分大人と言えるのではないかと思う。しかし人というのは大人になる歳というのが決まっているそうだ。だからまだトモノリは子どもなのである。人の決め事というのは難しい。
 うむ、子どもは守ってやらねばならんだろう。

「ピー太とずっと一緒にいる為の方法を考えないとな」

 トモノリはそう言って笑っていた。
 トモノリの側にいたいと思うなら、トモノリが卒業すると共についていくのが一番だろう。ピースケはトモヤについていくそうだ。
 それもいいと思う。
 だが、オレサマは山を飛び回る自由というものを知ってしまった。残念ながらトモノリがこの学校を卒業しても、一緒について行くことはできないだろう。
 ピーコについてはわからない。ピーコ、ピコー、ピースケはオレサマより小さいからな。ついて行った方が幸せなのではないかと思う。
 とても寒い季節だ。雪というものが何度も降る。雪の降る夜はトモノリが不安がるのでトモノリの元で寝ている。そうでない日はピーコと共に同じ小屋で過ごしていた。
 ピーコには、もしイナが卒業する際はイナに付いて行くようにと伝えた。
 思いっきりつつかれた。
 何故だ。
 その話をユーリやカケス、スズメに愚痴ったら笑われた。曰く、オレサマは鈍感らしい。
 鈍感なわけがないだろう。オレサマはイナがトモノリになんらかの感情を抱いていることを知っているぞ。まだ淡いものに見えるから放っておいてはいるが、オレサマのトモノリに不埒なことをするようならばただではおかぬ。
 何故かユーリにため息をつかれた。
 女心は理解できないのね、と。
 女心は難しい。
 ピーコはオレサマをつついたが、夜オレサマの小屋で過ごすのは止めなかった。うむ、寒いからな。共に過ごすのがいいだろう。
 それを言ったらまたつつかれてしまった。うむ、やはり女心というのはわからないものだ。

「なんでピー太は最近ピーコにつつかれてるんだ?」

 とうとうトモノリにまでつっこまれてしまった。

「うーん? もしかしたらピー太君てデリカシーがないんじゃない?」

 イナが言う。でりかしーとはなんだ? 全く人の言葉も難しくて困る。

「ピーコに失礼なことを言ったとかかな」
「ありそう~」

 イナが失礼なことを言うので軽くつついてやった。イナの方が失礼千万である。

「いたいっ、ピー太君痛いよー」
「こらっ、ピー太、つついちゃだめだろー」

 何故オレサマがトモノリに怒られるのだ。
 解せぬ。
 三学期というのはいつもより早く過ぎた。
 トモヤはここで卒業するそうだ。トモヤと一緒にいるうさんくさいコウノとかいう少年も一緒である。ピースケが嬉しそうにトモヤについていった。寂しくなるが、その方が幸せだろう。この山はやはり寒さ暑さが厳しいからな。小さいインコは建物の中で過ごした方がいいに決まっている。
 ユーリ、カケスたち、スズメたちもピースケを見送ってくれた。
 ユーリに、オレサマはどこかへ行かないのかと聞かれた。行くはずがないと胸を張って答えたら、よくわからないがすりすりされた。それをたまたま見ていたトモノリに、

「ピー太はモテモテだよな~」

 と言われた。
 トモノリほどではない。トモノリを捕らえようとする人間は意外と多いのだ。クラスメイトとかいうやつら然り、先輩とかいう者たち然りである。もう少ししっかり育つまでオレサマが見ててやらねばならぬ。
 春休みを終えて新学期になればまた新しく若い人間たちが来るだろう。
 今の時期は少し落ち着いているが、新学期とやらが始まればまた忙しくなるに違いない。必ず下の者に悪さをする輩がいるのだ。まぁ見つけ次第つつきまくって、後悔させてやっているがな。
 トモノリは春休みを終えて新学期になってもまだここにいる。
 この学校に若い者たちが通うのは一時期のことだ。
 トモノリもいずれこの学び舎を卒業する。
 その時オレサマはトモノリを素直に見送れるだろうか?
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