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66.智紀、家族へ会いに行く
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出かける日になった。
憂鬱である。
山から出るってのもおっくうだけど、ピー太と離れるのが嫌だ。昨夜なんか泊まりに来てくれたんだぞ? まぁ日が暮れたらピー太はすぐ寝ちゃったんだけどさ。でもタオルに埋もれて寝てるのがかわいいことかわいいこと。思わずにまにましちまったぜ。
寝顔を見て幸せを感じたのに今夜はピー太と一緒に過ごせないなんて。
「……行きたくない……」
バスに乗るまでピー太が見送ってくれたけど、俺はぶつぶつ「行きたくない」と呟いていた。
「トモ君、本当にピー太君のことラブなんだねー」
わざわざ見送りに出てきた稲村に感心されてしまったほどだ。おう、ピー太と再会してからは本気で離れたくない。
麓の町へ向かうバスに乗った。麓の町の外れから電車が出ているから、それに乗って行くのだ。乗り換えはするようだけど、電車とモノレールで羽田空港へ向かう。
公共交通機関には本当に助けられてるけど、この移動時間がもどかしいと思ってしまう。スマホで撮ったピー太の写真を見ながら癒されていた。動画も少し撮ったから、弟が見たいというなら見せてやろうと思っている。あ、もちろん無理に見せたりはしないけどな。
途中エキナカで立ち食い蕎麦を食べ、羽田空港に着いた。
時間を確認する。あと1時間ぐらいで着くみたいだ。
どうしようかなと空港内をうろうろしている間に到着時間になったから迎え口へ向かった。つってもすぐには出てこないんだけどさ。
でも意外と早く出てきたように思う。
「智紀ー!」
「にーちゃん!」
両親と弟が満面の笑みを浮かべる。無事会えてよかった。
もう夕方だから今日は羽田の近くのホテルで泊まり、明日は家を見に行ってからその足で旅行するらしい。元気なことだと思った。俺は明日の朝ホテルで朝食をとったら山へ戻る予定だ。
「久しぶりだな~。ちょっと逞しくなったか?」
父さんにそう言われて嬉しくなる。
「そうね。背も伸びたんじゃない?」
「え~? あんまり変わってなくね? つーかにーちゃん縮んだ?」
「縮むわけないだろ」
縮んだら大問題だろーが。相変わらず弟はムカつく物言いをする。自分がぐんぐん伸びてるからったってなぁ。
「こら、止めなさい!」
母さんにピシャリと言われて弟はふてくされた。全く、小学5年にもなってと思ってしまう。でもまぁ俺も小学生の時はこんなんだったかもな。久しぶりに会ったからしんみりしてしまった。
空港内のレストランで夕飯を食べた。おいしかったけどけっこう高かったみたいだ。どうしても高くなるんだろうな。
その時に上海の話を聞いた。
上海では和食がけっこう普通に食べられるらしい。でもそんなにおいしくはないと弟が文句を言っていた。
「外国にいるんだからしょうがないだろ。それに、和食だって現地の人が食べやすい味付けになってるんじゃないか?」
「ええー? でもめちゃくちゃ高いんだぜー?」
「そうなのか?」
親曰く、普通の中華料理以外は高いらしい。だったら普通の中華料理を食べればいいじゃないかと思ってしまった。
で、そう言ってみたのだが、うちの家族はあまり現地の中華料理が口に合わなかったのだそうだ。それは残念である。
「そっか、そういうこともあるよな」
現地の料理は現地の人の口に合うようにできているんだからしょうがないだろう。でも一度ぐらいは俺も行って食べてみたいなとは思う。本場の味って響きに憧れる。
「ねえ、智紀はずっとこっちにいるの? 上海に来る気はないの?」
一晩ホテルに泊まって朝食のバイキングの席で母に聞かれてしまった。
「学校で年越しもできるし、追い出されることもないから俺はこっちにいるよ?」
「そんな~」
「なー、にーちゃんもやっぱ上海に行こうぜー」
落胆する両親と弟。
「ピー太もいるから全然寂しくないんだよ。だいたい上海にいるのだってずっとじゃないだろ?」
「まぁ一年更新なんだがなぁ……」
どうも父さんは現地のお偉いさんに好かれているらしく、このままでは普通に更新することになるみたいだった。でも住居も学校も向こうで手配してくれるし、日本の会社からも中国の現地法人からも給料は出るんだからしっかり金は貯められるんじゃないかな。仕事はたいへんそうだけどがんばってほしいと思った。
「まあがんばってよ。俺は楽しく暮らしてるからさ」
「そんな~」
そろそろ出ないと昼のバスに間に合わない。もう間に合わないかもしれないけど、できるだけ早く戻りたかった。
両親と弟はまたギリギリまで俺を説得しようとしていたが、「ごちそうさま、会えて嬉しかったよ」とだけ言ってモノレールに乗った。
お小遣いはもらえたからありがたいとは思うけど、あんなにしつこく言われると嫌になってしまう。
でも家族が元気でよかったと思ったのだった。
憂鬱である。
山から出るってのもおっくうだけど、ピー太と離れるのが嫌だ。昨夜なんか泊まりに来てくれたんだぞ? まぁ日が暮れたらピー太はすぐ寝ちゃったんだけどさ。でもタオルに埋もれて寝てるのがかわいいことかわいいこと。思わずにまにましちまったぜ。
寝顔を見て幸せを感じたのに今夜はピー太と一緒に過ごせないなんて。
「……行きたくない……」
バスに乗るまでピー太が見送ってくれたけど、俺はぶつぶつ「行きたくない」と呟いていた。
「トモ君、本当にピー太君のことラブなんだねー」
わざわざ見送りに出てきた稲村に感心されてしまったほどだ。おう、ピー太と再会してからは本気で離れたくない。
麓の町へ向かうバスに乗った。麓の町の外れから電車が出ているから、それに乗って行くのだ。乗り換えはするようだけど、電車とモノレールで羽田空港へ向かう。
公共交通機関には本当に助けられてるけど、この移動時間がもどかしいと思ってしまう。スマホで撮ったピー太の写真を見ながら癒されていた。動画も少し撮ったから、弟が見たいというなら見せてやろうと思っている。あ、もちろん無理に見せたりはしないけどな。
途中エキナカで立ち食い蕎麦を食べ、羽田空港に着いた。
時間を確認する。あと1時間ぐらいで着くみたいだ。
どうしようかなと空港内をうろうろしている間に到着時間になったから迎え口へ向かった。つってもすぐには出てこないんだけどさ。
でも意外と早く出てきたように思う。
「智紀ー!」
「にーちゃん!」
両親と弟が満面の笑みを浮かべる。無事会えてよかった。
もう夕方だから今日は羽田の近くのホテルで泊まり、明日は家を見に行ってからその足で旅行するらしい。元気なことだと思った。俺は明日の朝ホテルで朝食をとったら山へ戻る予定だ。
「久しぶりだな~。ちょっと逞しくなったか?」
父さんにそう言われて嬉しくなる。
「そうね。背も伸びたんじゃない?」
「え~? あんまり変わってなくね? つーかにーちゃん縮んだ?」
「縮むわけないだろ」
縮んだら大問題だろーが。相変わらず弟はムカつく物言いをする。自分がぐんぐん伸びてるからったってなぁ。
「こら、止めなさい!」
母さんにピシャリと言われて弟はふてくされた。全く、小学5年にもなってと思ってしまう。でもまぁ俺も小学生の時はこんなんだったかもな。久しぶりに会ったからしんみりしてしまった。
空港内のレストランで夕飯を食べた。おいしかったけどけっこう高かったみたいだ。どうしても高くなるんだろうな。
その時に上海の話を聞いた。
上海では和食がけっこう普通に食べられるらしい。でもそんなにおいしくはないと弟が文句を言っていた。
「外国にいるんだからしょうがないだろ。それに、和食だって現地の人が食べやすい味付けになってるんじゃないか?」
「ええー? でもめちゃくちゃ高いんだぜー?」
「そうなのか?」
親曰く、普通の中華料理以外は高いらしい。だったら普通の中華料理を食べればいいじゃないかと思ってしまった。
で、そう言ってみたのだが、うちの家族はあまり現地の中華料理が口に合わなかったのだそうだ。それは残念である。
「そっか、そういうこともあるよな」
現地の料理は現地の人の口に合うようにできているんだからしょうがないだろう。でも一度ぐらいは俺も行って食べてみたいなとは思う。本場の味って響きに憧れる。
「ねえ、智紀はずっとこっちにいるの? 上海に来る気はないの?」
一晩ホテルに泊まって朝食のバイキングの席で母に聞かれてしまった。
「学校で年越しもできるし、追い出されることもないから俺はこっちにいるよ?」
「そんな~」
「なー、にーちゃんもやっぱ上海に行こうぜー」
落胆する両親と弟。
「ピー太もいるから全然寂しくないんだよ。だいたい上海にいるのだってずっとじゃないだろ?」
「まぁ一年更新なんだがなぁ……」
どうも父さんは現地のお偉いさんに好かれているらしく、このままでは普通に更新することになるみたいだった。でも住居も学校も向こうで手配してくれるし、日本の会社からも中国の現地法人からも給料は出るんだからしっかり金は貯められるんじゃないかな。仕事はたいへんそうだけどがんばってほしいと思った。
「まあがんばってよ。俺は楽しく暮らしてるからさ」
「そんな~」
そろそろ出ないと昼のバスに間に合わない。もう間に合わないかもしれないけど、できるだけ早く戻りたかった。
両親と弟はまたギリギリまで俺を説得しようとしていたが、「ごちそうさま、会えて嬉しかったよ」とだけ言ってモノレールに乗った。
お小遣いはもらえたからありがたいとは思うけど、あんなにしつこく言われると嫌になってしまう。
でも家族が元気でよかったと思ったのだった。
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