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65.智紀、ごはんを作って振舞う
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煮込みラーメンである。
スーパーでゆで卵も買ったのでそれも入れる予定だ。
ゆで卵、自分で作らなくても買えるっていいよな。俺、どうもゆで卵の殻を剥くのが苦手だから。スーパーとかで売ってるゆで卵ってどうなってるんだろう。殻がするんと剥けるのが気持ちいい。
肉は豚バラ肉を買って味塩胡椒を振って軽く炒め、とりあえず皿に出しておく。どうしても豚肉は硬くなるから、煮込みラーメンに入れるとしたら最後だ。それでも豚バラはそれほど硬くならないから使い勝手がいい。
「これもう食べていいのー?」
稲村に言われて慌てて止めた。
「最後に足すから待ってろって」
食べる前に聞いただけマシだろう。苦笑した。簡易の二口コンロだと鍋の大きさによっては同時に温められないから困る。だからひと鍋でできるメシが重宝する。
豚バラを炒めた鍋に湯を入れてスープの素を入れ、煮込みラーメンの箱に書いてある通りに野菜とラーメンを入れ、最後に先に炒めておいた豚バラを入れて混ぜる。器を受け取って嵐山さん、稲村、村西、俺の分をよそってゆで卵を添えた。
「うわー、煮込みラーメン! トモ君特製だー、いっただきまーす!」
稲村のテンションが一番高い。みんなでいただきますして食べた。
うん、久しぶりに食べると特にうまい気がする。ラーメンなんて寮の飯で出ないもんな。
三人前のを四人で分けたから麺の分量は少なめだが、豚バラもゆで卵もあるし、カット野菜もどんと突っ込んだからそれなりに満足できたのではないかと思う。それにしても本当にこのカット野菜も便利だよな。キャベツを玉で買ってもいいんだが、生活協同組合かなんかで親が買ったキャベツには芋虫がいっぱいついていて困った。あれ以来玉で買う時は構えてしまう。まぁスーパーなんかで売られている白菜やキャベツにはそれほど虫はついてないんだけどな。
「いやー、おいしかった。大林君は料理が好きだなんてね~。確かに料理男子も一定数はいるよね」
嵐山さんがにこにこしながら言う。
「料理が好き、というかそこまで苦にならないだけです。たまに弟と留守番とかすることもあったんで、料理の本を見たりして作ったりしてましたね」
「料理の本を読んでその通りにってこと?」
「ええ、わからないんでとりあえずは料理本通りに作りますね」
嵐山さんは少し考えるような顔をした。
なんかまずいことでも言っただろうか。
「……料理ができる人って基本に忠実だっていうよね……もしかしなくても、大林君は料理人に向いてるんじゃないかな?」
「えええ?」
そりゃあまだ将来何になりたいかとか全然ビジョンはないけど、料理人なぁ?
「学費はそれなりに高いけど、調理師学校に通って調理師免許が取れるといいと思う。そうしたらうちで食堂のお兄さんをやってもらえるしね~」
嵐山さんは一石二鳥みたいなことを言っている。
そこまで俺、料理好きかな? でもここでの就職は魅力的だ。将来の希望の一つには加えておこうと思った。
「……もうないのか」
村西が残念そうに呟く。
「また買ってくる機会があれば作るよ」
そんな機会はなかなか巡ってはこないだろうけど。でも、一度家族に会いに行くから帰りになんか買ってきてもいいかとも思った。喜んで食べてもらえるならそれが一番である。
「またトモ君の手料理食べたいっ!」
「手料理て……」
稲村が食いついてきた。手料理ってほどのものじゃないだろーが。苦笑する。
「稲村君、本当に大林君のこと好きだね~」
「大好きですよー。だってカッコイイじゃないですか!」
カッコイイ?
思わず首を傾げてしまった。村西の首も少し曲がっているように見える。くそう、なんかムカつく。
「そうだね、大林君は男前だよね」
嵐山さんまでそんなことを言う。嵐山さんは自然体だ。目が笑ってないわけでもないから、少しぐらいはそう思ってくれているのだろうということが伺えた。問題は稲村である。
「褒めても何にもでねーよ」
稲村の肩を軽く叩いて片づけを始める。……稲村はなんか本気で言ってるっぽいんだよな。絶対眼科に行った方がいいと思う。
食べ終えてから食堂へ向かった。
当然ながらあんな程度では足りない。
食堂へ行ったら、食堂の表の木にピー太が留まってるのが見えた。この寒いのにアイツは何をやってるんだ?
「ちょっとごめん」
村西、稲村に断って窓を少しだけ開ける。途端に冷気が入ってきてぶるりと震えた。
「ピー太、食べたら部屋に戻るから暖かいところにいてくれないか?」
「ピータッ、トモーノリー!」
ピー太は嬉しそうに俺の頭に飛んできた。食堂に入ってこいって意味じゃないんだけどな。
「ごめん、おばちゃん。いらない紙とかない?」
「あら、ピー太君入ってきちゃったのねー」
おばさんたちは好意的だからいいが、やはり衛生上よろしくはないだろう。いらない紙をもらってゴミ袋をつくり、ピー太にはそこでフンをするように言った。
それでピー太が聞いてくれるのがすごいと思う。
「ピー太君てホント、優秀だよね~」
稲村がにこにこしながら言う。ピー太は言われていることがわかるのか、テーブルの上で胸を張るような仕草をした。やっぱかわいいな。
スーパーでゆで卵も買ったのでそれも入れる予定だ。
ゆで卵、自分で作らなくても買えるっていいよな。俺、どうもゆで卵の殻を剥くのが苦手だから。スーパーとかで売ってるゆで卵ってどうなってるんだろう。殻がするんと剥けるのが気持ちいい。
肉は豚バラ肉を買って味塩胡椒を振って軽く炒め、とりあえず皿に出しておく。どうしても豚肉は硬くなるから、煮込みラーメンに入れるとしたら最後だ。それでも豚バラはそれほど硬くならないから使い勝手がいい。
「これもう食べていいのー?」
稲村に言われて慌てて止めた。
「最後に足すから待ってろって」
食べる前に聞いただけマシだろう。苦笑した。簡易の二口コンロだと鍋の大きさによっては同時に温められないから困る。だからひと鍋でできるメシが重宝する。
豚バラを炒めた鍋に湯を入れてスープの素を入れ、煮込みラーメンの箱に書いてある通りに野菜とラーメンを入れ、最後に先に炒めておいた豚バラを入れて混ぜる。器を受け取って嵐山さん、稲村、村西、俺の分をよそってゆで卵を添えた。
「うわー、煮込みラーメン! トモ君特製だー、いっただきまーす!」
稲村のテンションが一番高い。みんなでいただきますして食べた。
うん、久しぶりに食べると特にうまい気がする。ラーメンなんて寮の飯で出ないもんな。
三人前のを四人で分けたから麺の分量は少なめだが、豚バラもゆで卵もあるし、カット野菜もどんと突っ込んだからそれなりに満足できたのではないかと思う。それにしても本当にこのカット野菜も便利だよな。キャベツを玉で買ってもいいんだが、生活協同組合かなんかで親が買ったキャベツには芋虫がいっぱいついていて困った。あれ以来玉で買う時は構えてしまう。まぁスーパーなんかで売られている白菜やキャベツにはそれほど虫はついてないんだけどな。
「いやー、おいしかった。大林君は料理が好きだなんてね~。確かに料理男子も一定数はいるよね」
嵐山さんがにこにこしながら言う。
「料理が好き、というかそこまで苦にならないだけです。たまに弟と留守番とかすることもあったんで、料理の本を見たりして作ったりしてましたね」
「料理の本を読んでその通りにってこと?」
「ええ、わからないんでとりあえずは料理本通りに作りますね」
嵐山さんは少し考えるような顔をした。
なんかまずいことでも言っただろうか。
「……料理ができる人って基本に忠実だっていうよね……もしかしなくても、大林君は料理人に向いてるんじゃないかな?」
「えええ?」
そりゃあまだ将来何になりたいかとか全然ビジョンはないけど、料理人なぁ?
「学費はそれなりに高いけど、調理師学校に通って調理師免許が取れるといいと思う。そうしたらうちで食堂のお兄さんをやってもらえるしね~」
嵐山さんは一石二鳥みたいなことを言っている。
そこまで俺、料理好きかな? でもここでの就職は魅力的だ。将来の希望の一つには加えておこうと思った。
「……もうないのか」
村西が残念そうに呟く。
「また買ってくる機会があれば作るよ」
そんな機会はなかなか巡ってはこないだろうけど。でも、一度家族に会いに行くから帰りになんか買ってきてもいいかとも思った。喜んで食べてもらえるならそれが一番である。
「またトモ君の手料理食べたいっ!」
「手料理て……」
稲村が食いついてきた。手料理ってほどのものじゃないだろーが。苦笑する。
「稲村君、本当に大林君のこと好きだね~」
「大好きですよー。だってカッコイイじゃないですか!」
カッコイイ?
思わず首を傾げてしまった。村西の首も少し曲がっているように見える。くそう、なんかムカつく。
「そうだね、大林君は男前だよね」
嵐山さんまでそんなことを言う。嵐山さんは自然体だ。目が笑ってないわけでもないから、少しぐらいはそう思ってくれているのだろうということが伺えた。問題は稲村である。
「褒めても何にもでねーよ」
稲村の肩を軽く叩いて片づけを始める。……稲村はなんか本気で言ってるっぽいんだよな。絶対眼科に行った方がいいと思う。
食べ終えてから食堂へ向かった。
当然ながらあんな程度では足りない。
食堂へ行ったら、食堂の表の木にピー太が留まってるのが見えた。この寒いのにアイツは何をやってるんだ?
「ちょっとごめん」
村西、稲村に断って窓を少しだけ開ける。途端に冷気が入ってきてぶるりと震えた。
「ピー太、食べたら部屋に戻るから暖かいところにいてくれないか?」
「ピータッ、トモーノリー!」
ピー太は嬉しそうに俺の頭に飛んできた。食堂に入ってこいって意味じゃないんだけどな。
「ごめん、おばちゃん。いらない紙とかない?」
「あら、ピー太君入ってきちゃったのねー」
おばさんたちは好意的だからいいが、やはり衛生上よろしくはないだろう。いらない紙をもらってゴミ袋をつくり、ピー太にはそこでフンをするように言った。
それでピー太が聞いてくれるのがすごいと思う。
「ピー太君てホント、優秀だよね~」
稲村がにこにこしながら言う。ピー太は言われていることがわかるのか、テーブルの上で胸を張るような仕草をした。やっぱかわいいな。
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