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59.智紀、冬の寒さを心配する
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二学期の期末テスト結果は可もなく不可もなくだった。
緒方の口から魂が飛んでいた以外は平和だったと思う。緒方はできるけどやりたくないからやらないみたいなことを言っていたけど、部活に出たいから勉強するって頭はないんだろうか。でも俺には関係ないことだしなー。
というわけで見なかったことにした。がんばれ、緒方。
寒い、ということもあってか、ピー太が俺たちの部屋にいる時間が増えた。そうだよな、インコって元々南国の鳥だもんな。
でも夜も一緒に過ごすというのは嫌らしい。冬だから暗くなるのは早いのだが、その前に林の小屋へと帰っていく。
寒いけど心配だから、朝は早く起きて俺たちは見回りをすることにしていた。ひょろ長先輩たちががたがたと震えていてかわいそうだったが、不思議と泣き言は言わなかった。俺なんかすぐに寒いだの暑いだの騒ぐから、すごいなと思った。
「……朝早いのはさすがに寒いねー……」
稲村が手袋をはめた手にはーっと息を吹きかけて呟く。
「だなー」
今年の冬は特に寒さが厳しい気がする。
って、山だからか。
「山ってだけで寒いよな」
「うん、しかも天気予報見た? 明後日はこの辺り雪の予報だよ?」
「マジか」
雪って、ピー太たちはどうするんだろう。いくら暖房の電池とか確認していると言っても心配だ。朝見に行って凍ってたなんてことになったら泣くに泣けない。
「……うちの部屋で引き受けられるかな……」
俺としてはそのままずっと部屋にいてくれてもいいんだけど、ピー太はどう考えるんだろう。村西にも許可取らないとだし、とかいろいろ考えてしまった。
「トモ君、まずは嵐山さんに相談しようよ」
「そうだな」
ってことで朝の見回りを終えた。これから朝飯を食べて、学校である。嵐山さんに話すのは放課後でいいだろう。部活の招集だけ朝嵐山さんに声はかけておいた。みんな基本的に寮の入口から出て行くから、そこの掲示板に貼ってある紙とか、書かれていることは確認している。
基本的に、ってなんだって? 一階に住んでる生徒は窓から出て行ったりもするらしい。それって鍵かかんないんじゃ、と思うけど、あんまり気にしないみたいだ。ま、俺たちの部屋も日中あんまり鍵かけたりしないんだけどさ。平和なものである。
話が逸れた。
朝ピー太は眠いらしく見送りはしてくれなかった。冬は寒いし眠いよな。気持ちはわかる。
放課後である。4階の会議室に生物管理部の全員で集まった。
「雪が数日内に降りそうです。鳥たちへの対応を話し合わせてください」
そう伝えると、藤沢先輩が手を挙げた。
「……実は、数日前からピースケが私の部屋で夜も寝ている」
「そう、なんですか……」
元々野生ではないからピースケさえよければそれでいいのだと思う。でも藤沢先輩は三年生だし、卒業したらどうするんだろうと思った。その思いが顔に出ていたのか、藤沢先輩は苦笑した。
「まだ少し先のことだが、もしピースケが私についてきてくれるのならば一緒に連れていこうと思っている。それは、どうだろうか」
「いいんじゃない? ちゃんとピースケ君の面倒を最後まで看るならかまわないと思うよ」
部屋の端っこにいた嵐山さんがそう言った。
「そう、ですね。ピースケが望むなら、それが一番ですよね」
同意する。そう考えると俺はどうなんだろう。ピー太を連れて家に帰ることができるんだろうか。そもそもピー太は俺と一緒にいることを望んでくれるのかどうかと。
「難しく考えることはないよ。さすがにスズメやカケスは寮の部屋で過ごしたりしないだろうけど、元々野生でなかった子が部屋で過ごすのはかまわない。大林君たちはまだ一年生なんだから先のことを考える必要はないよ。来年以降、引き取るか引き取らないかとか、ピー太君たちの意志もあるだろうから考えていけばいいんじゃないかな」
「そうですね。じゃあ、話を戻します」
とりあえず鳥たちの暖房の確認と、タオルを多めに持っていくこと。それからピー太たちに関してはできるだけ部屋で過ごすよう声をかけることなどが上げられた。もちろん身体を温める為に餌も入れに行く。身体を温めるのは食べるのが一番だからだ。
「あー、怖い……」
稲村が呟いた。
「どうした?」
「ピーコちゃんが、冬を越せるのかどうか考えただけで怖いよ」
「そうだな」
稲村は部屋にこないかとピーコを誘ったが、ピーコはピー太と過ごすことを選んだらしい。同じ小屋にいるなら二羽で温め合うことも可能だろう。ちなみにピコーはよたよたと飛びながらうちに来た。村西がタオルで巣のような物を作ってやったら喜んで潜り込んだ。かわいい。
俺もピー太に声をかけたけど、ピー太は小屋で過ごすことを選んだ。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「うん、俺も大好きだから一緒に過ごそうぜ」
「コヤー」
「なんでだー!」
自由を知ったら籠の中には戻れないとかいうアレか。
「雪も降るから心配なんだって」
「コヤー!」
どこまでも自由を愛するピー太だった。
ーーーーー
ピー太は自立しております。
緒方の口から魂が飛んでいた以外は平和だったと思う。緒方はできるけどやりたくないからやらないみたいなことを言っていたけど、部活に出たいから勉強するって頭はないんだろうか。でも俺には関係ないことだしなー。
というわけで見なかったことにした。がんばれ、緒方。
寒い、ということもあってか、ピー太が俺たちの部屋にいる時間が増えた。そうだよな、インコって元々南国の鳥だもんな。
でも夜も一緒に過ごすというのは嫌らしい。冬だから暗くなるのは早いのだが、その前に林の小屋へと帰っていく。
寒いけど心配だから、朝は早く起きて俺たちは見回りをすることにしていた。ひょろ長先輩たちががたがたと震えていてかわいそうだったが、不思議と泣き言は言わなかった。俺なんかすぐに寒いだの暑いだの騒ぐから、すごいなと思った。
「……朝早いのはさすがに寒いねー……」
稲村が手袋をはめた手にはーっと息を吹きかけて呟く。
「だなー」
今年の冬は特に寒さが厳しい気がする。
って、山だからか。
「山ってだけで寒いよな」
「うん、しかも天気予報見た? 明後日はこの辺り雪の予報だよ?」
「マジか」
雪って、ピー太たちはどうするんだろう。いくら暖房の電池とか確認していると言っても心配だ。朝見に行って凍ってたなんてことになったら泣くに泣けない。
「……うちの部屋で引き受けられるかな……」
俺としてはそのままずっと部屋にいてくれてもいいんだけど、ピー太はどう考えるんだろう。村西にも許可取らないとだし、とかいろいろ考えてしまった。
「トモ君、まずは嵐山さんに相談しようよ」
「そうだな」
ってことで朝の見回りを終えた。これから朝飯を食べて、学校である。嵐山さんに話すのは放課後でいいだろう。部活の招集だけ朝嵐山さんに声はかけておいた。みんな基本的に寮の入口から出て行くから、そこの掲示板に貼ってある紙とか、書かれていることは確認している。
基本的に、ってなんだって? 一階に住んでる生徒は窓から出て行ったりもするらしい。それって鍵かかんないんじゃ、と思うけど、あんまり気にしないみたいだ。ま、俺たちの部屋も日中あんまり鍵かけたりしないんだけどさ。平和なものである。
話が逸れた。
朝ピー太は眠いらしく見送りはしてくれなかった。冬は寒いし眠いよな。気持ちはわかる。
放課後である。4階の会議室に生物管理部の全員で集まった。
「雪が数日内に降りそうです。鳥たちへの対応を話し合わせてください」
そう伝えると、藤沢先輩が手を挙げた。
「……実は、数日前からピースケが私の部屋で夜も寝ている」
「そう、なんですか……」
元々野生ではないからピースケさえよければそれでいいのだと思う。でも藤沢先輩は三年生だし、卒業したらどうするんだろうと思った。その思いが顔に出ていたのか、藤沢先輩は苦笑した。
「まだ少し先のことだが、もしピースケが私についてきてくれるのならば一緒に連れていこうと思っている。それは、どうだろうか」
「いいんじゃない? ちゃんとピースケ君の面倒を最後まで看るならかまわないと思うよ」
部屋の端っこにいた嵐山さんがそう言った。
「そう、ですね。ピースケが望むなら、それが一番ですよね」
同意する。そう考えると俺はどうなんだろう。ピー太を連れて家に帰ることができるんだろうか。そもそもピー太は俺と一緒にいることを望んでくれるのかどうかと。
「難しく考えることはないよ。さすがにスズメやカケスは寮の部屋で過ごしたりしないだろうけど、元々野生でなかった子が部屋で過ごすのはかまわない。大林君たちはまだ一年生なんだから先のことを考える必要はないよ。来年以降、引き取るか引き取らないかとか、ピー太君たちの意志もあるだろうから考えていけばいいんじゃないかな」
「そうですね。じゃあ、話を戻します」
とりあえず鳥たちの暖房の確認と、タオルを多めに持っていくこと。それからピー太たちに関してはできるだけ部屋で過ごすよう声をかけることなどが上げられた。もちろん身体を温める為に餌も入れに行く。身体を温めるのは食べるのが一番だからだ。
「あー、怖い……」
稲村が呟いた。
「どうした?」
「ピーコちゃんが、冬を越せるのかどうか考えただけで怖いよ」
「そうだな」
稲村は部屋にこないかとピーコを誘ったが、ピーコはピー太と過ごすことを選んだらしい。同じ小屋にいるなら二羽で温め合うことも可能だろう。ちなみにピコーはよたよたと飛びながらうちに来た。村西がタオルで巣のような物を作ってやったら喜んで潜り込んだ。かわいい。
俺もピー太に声をかけたけど、ピー太は小屋で過ごすことを選んだ。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「うん、俺も大好きだから一緒に過ごそうぜ」
「コヤー」
「なんでだー!」
自由を知ったら籠の中には戻れないとかいうアレか。
「雪も降るから心配なんだって」
「コヤー!」
どこまでも自由を愛するピー太だった。
ーーーーー
ピー太は自立しております。
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