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56.ピー太、寒さに負けないっ
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トモノリがオレサマに向かって四角い何かを向ける。パシャッ、パシャッと断続的に音が鳴る。
不思議に思って近づくと、トモノリはオレサマから離れていく。
「ちょっとピー太、離れて。写真撮ってるからさー」
写真? と首を傾げた。写真とはなんだろうか。
「お、それかわいい! コキャッとするの、なんでそんなにかわいいんだあ!」
「……大林はインコバカか……」
知らない若い人間がボソッと呟いた。背はそれなりに高く、黒い塊のような物を持っている。それをオレサマに向かってかまえた。
「うっせ、かわいいんだからしょうがないだろっ!」
トモノリはオレサマに四角いものを向けながら、背の高い者に悪態をついた。
背の高い者はミヤタと名乗った。呼びづらいからミヤということにする。ミヤはトモノリの返しに目を丸くするとクククッと笑った。
「……そういう大林の方が……」
む? これはもしや。
イナを見やる。イナはピーコに四角いものを向けるのに夢中だ。
ニシを見る。ニシはオレサマの視線に気づいた。オレサマはトモノリを見てからミヤを見た。ニシは軽く頷いた。
うむ、ニシはなかなかに察しがいい。えらいからオレサマの子分にしてやろう。
ピーッ、ピピーッ!
何故かピコーに抗議され、つつかれた。貴様オレサマの子分のクセに生意気だぞ!
「おいおーい、何やってんだよー」
トモノリとニシが仲裁に入った。ピコーとは一度戦わねばならぬかもしれん。
やめなさいよというようにピーコに軽くつつかれた。ピコーも同様に。
むむっ。メスにはかなわないのである。
「なんか、インコにもいろいろあるんだなー」
トモノリがにこにこしてそんなことを言っていた。いろいろだと? あるに決まっているではないか。
オレサマはトモノリを守ることに専念しているのだッ!
羽をバサバサッと動かしてアピールしたが、「ピー太はかわいいなー」としかトモノリは言わない。オレサマがかわいくてカッコイイのは間違いないが、トモノリはもう少し表現というものを学んだ方がいいと思う。
さて、何日も四角い何かを向けられた結果、それはオレサマたちの姿を写す写真なるものを撮っているということがわかった。
全く、そういうことは早く伝えるものだ。
そしてミヤはその写真を専門に撮るブとかいうのに所属しているらしい。オレサマやユーリたちの雄姿を撮りたいというので存分に撮らせてやった。これでトモノリにヘンな目を向けなければいい奴なのだが……。
まぁしかたない。オレサマのトモノリはめちゃくちゃかわいいからな。
オレサマはミヤをけん制する為、イナのところへ飛んだ。イナの部屋の位置もオレサマは知っているのだ。できるオカメインコはいろいろなことを理解し、それを反映させるすべを心得ている。
「わわっ、ピー太君どうしたの?」
「イナー、トモーノリー、ミヤー、ヘンー」
「え?」
おかしいという言葉は「ヘン」でも通じるらしいと知り、オレサマは着々と言葉を増やしている。
「うーんと、イナっていうのは僕だよね? で、トモ君。ミヤ、はもしかして宮田のことかな。名前覚えてるとかすごいねー。で、ヘン……んー?」
イナは残念ながら察する能力が足りないらしい。オレサマはフッと嘆息した。
「今ため息つかれた! えーと、宮田が変ってことだよね? でもただ変じゃなくて、トモ君に対して変ってこと?」
ピピッ! と返事をしてやった。イナは少し考えるような顔をした。そしてやっと何かを思い出したらしかった。
「それって、ただの”変”じゃないよね? わかった、ちょっと様子を見てみるねー」
ピーッ! と返事をしてオレサマはトモノリの部屋に戻った。
これでトモノリによからぬことが起きなければいいのである。
事件は起こる前に潰すのが正しいのだ。
部活発表会とかいう催しはどうにか無事終わった。
オレサマをかわいいかわいいと群がってくる若い人間たちには辟易したが、トモノリが嬉しそうだったから我慢した。そうでなければ奴らなどつつき回しただろう。オレサマは短気なのである。
日増しに寒くなってきた。
トモノリたちは小さな暖房というものをオレサマたちの小屋の中に、布と共に入れてくれた。
「できれば俺の部屋で一緒に暮らしてほしいけど……それは嫌なんだよな?」
「ピータッ、トモーノリー、スキー!」
「うんうん、俺もピー太が大好きだよ」
トモノリのことは好きだし、冬もとっても寒いのだがやはり自由には代えがたいのである。とはいえ、エサは小屋の中に入れてもらったりと、甘えてはいるが。
それでも野生かー! とスズメやカケスに罵られているがつつきまくって黙らせた。
オレサマにかなうものはいないのであるッ!
オレサマが法律だッ!
……法律とはなんだかわからないがそう言うものらしい。理解ができない言葉が多くて困る。
とはいえ毎日トモノリの部屋で過ごす時間が増えてしまった。トモノリが喜んでいるからいいのだが、なんだか少し恥ずかしくも思う。ピコーなどはニシにすりすりして甘えている。冬の夜の間はニシの元で過ごすことにしたらしい。
うむ。それもまたよしだ。
オレサマは自由を愛する。
しかし寒くなってくると朝はなかなか起きられないのが困る。
今朝もトモノリを見送りに行けなくてがっかりだった。その分放課後はくっついて、トモノリと仲良くするのであった。
不思議に思って近づくと、トモノリはオレサマから離れていく。
「ちょっとピー太、離れて。写真撮ってるからさー」
写真? と首を傾げた。写真とはなんだろうか。
「お、それかわいい! コキャッとするの、なんでそんなにかわいいんだあ!」
「……大林はインコバカか……」
知らない若い人間がボソッと呟いた。背はそれなりに高く、黒い塊のような物を持っている。それをオレサマに向かってかまえた。
「うっせ、かわいいんだからしょうがないだろっ!」
トモノリはオレサマに四角いものを向けながら、背の高い者に悪態をついた。
背の高い者はミヤタと名乗った。呼びづらいからミヤということにする。ミヤはトモノリの返しに目を丸くするとクククッと笑った。
「……そういう大林の方が……」
む? これはもしや。
イナを見やる。イナはピーコに四角いものを向けるのに夢中だ。
ニシを見る。ニシはオレサマの視線に気づいた。オレサマはトモノリを見てからミヤを見た。ニシは軽く頷いた。
うむ、ニシはなかなかに察しがいい。えらいからオレサマの子分にしてやろう。
ピーッ、ピピーッ!
何故かピコーに抗議され、つつかれた。貴様オレサマの子分のクセに生意気だぞ!
「おいおーい、何やってんだよー」
トモノリとニシが仲裁に入った。ピコーとは一度戦わねばならぬかもしれん。
やめなさいよというようにピーコに軽くつつかれた。ピコーも同様に。
むむっ。メスにはかなわないのである。
「なんか、インコにもいろいろあるんだなー」
トモノリがにこにこしてそんなことを言っていた。いろいろだと? あるに決まっているではないか。
オレサマはトモノリを守ることに専念しているのだッ!
羽をバサバサッと動かしてアピールしたが、「ピー太はかわいいなー」としかトモノリは言わない。オレサマがかわいくてカッコイイのは間違いないが、トモノリはもう少し表現というものを学んだ方がいいと思う。
さて、何日も四角い何かを向けられた結果、それはオレサマたちの姿を写す写真なるものを撮っているということがわかった。
全く、そういうことは早く伝えるものだ。
そしてミヤはその写真を専門に撮るブとかいうのに所属しているらしい。オレサマやユーリたちの雄姿を撮りたいというので存分に撮らせてやった。これでトモノリにヘンな目を向けなければいい奴なのだが……。
まぁしかたない。オレサマのトモノリはめちゃくちゃかわいいからな。
オレサマはミヤをけん制する為、イナのところへ飛んだ。イナの部屋の位置もオレサマは知っているのだ。できるオカメインコはいろいろなことを理解し、それを反映させるすべを心得ている。
「わわっ、ピー太君どうしたの?」
「イナー、トモーノリー、ミヤー、ヘンー」
「え?」
おかしいという言葉は「ヘン」でも通じるらしいと知り、オレサマは着々と言葉を増やしている。
「うーんと、イナっていうのは僕だよね? で、トモ君。ミヤ、はもしかして宮田のことかな。名前覚えてるとかすごいねー。で、ヘン……んー?」
イナは残念ながら察する能力が足りないらしい。オレサマはフッと嘆息した。
「今ため息つかれた! えーと、宮田が変ってことだよね? でもただ変じゃなくて、トモ君に対して変ってこと?」
ピピッ! と返事をしてやった。イナは少し考えるような顔をした。そしてやっと何かを思い出したらしかった。
「それって、ただの”変”じゃないよね? わかった、ちょっと様子を見てみるねー」
ピーッ! と返事をしてオレサマはトモノリの部屋に戻った。
これでトモノリによからぬことが起きなければいいのである。
事件は起こる前に潰すのが正しいのだ。
部活発表会とかいう催しはどうにか無事終わった。
オレサマをかわいいかわいいと群がってくる若い人間たちには辟易したが、トモノリが嬉しそうだったから我慢した。そうでなければ奴らなどつつき回しただろう。オレサマは短気なのである。
日増しに寒くなってきた。
トモノリたちは小さな暖房というものをオレサマたちの小屋の中に、布と共に入れてくれた。
「できれば俺の部屋で一緒に暮らしてほしいけど……それは嫌なんだよな?」
「ピータッ、トモーノリー、スキー!」
「うんうん、俺もピー太が大好きだよ」
トモノリのことは好きだし、冬もとっても寒いのだがやはり自由には代えがたいのである。とはいえ、エサは小屋の中に入れてもらったりと、甘えてはいるが。
それでも野生かー! とスズメやカケスに罵られているがつつきまくって黙らせた。
オレサマにかなうものはいないのであるッ!
オレサマが法律だッ!
……法律とはなんだかわからないがそう言うものらしい。理解ができない言葉が多くて困る。
とはいえ毎日トモノリの部屋で過ごす時間が増えてしまった。トモノリが喜んでいるからいいのだが、なんだか少し恥ずかしくも思う。ピコーなどはニシにすりすりして甘えている。冬の夜の間はニシの元で過ごすことにしたらしい。
うむ。それもまたよしだ。
オレサマは自由を愛する。
しかし寒くなってくると朝はなかなか起きられないのが困る。
今朝もトモノリを見送りに行けなくてがっかりだった。その分放課後はくっついて、トモノリと仲良くするのであった。
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