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51.智紀、なんかに遭遇す
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というわけでサバイバル大会当日である。
「第十五回サバイバル大会を始めまーす! 怪我などしないように気を付けて楽しんでね!」
校庭にて出された嵐山さんの号令で、各自スタートの場所へと移動した。
水のろ過&蒸留、石鹸作り、山菜採り、山頂までのトライアルなどは時間がかかる為早めに始まる。草刈りや木登りについても午前中の方が余力があるだろうということで午前中からだ。
火おこしはコツさえつかめばそこまで時間がかからないということで、11時ぐらいの開始となっている。縄を綯うなども10時ぐらいからだった。
木登りには軍手など自分の手に合ったものを使ってもいいし、靴も選べる。俺は軍手を嵌めて登ることにした。
タイムトライアルではあるが、勝敗に内申点は全く関係ないので確実に登った方がいい。登るのはどうにかなるんだがやっぱ下りる時が怖いんだよなー。
ウォーミングアップは朝の見回りでしてきている。
そろそろ出番かなーと思っていたら、なんかざわざわといきなり騒がしくなった。
「え? なんだ?」
「なんだろうな?」
村西と共にきょろきょろと辺りを見回す。
騒がしいのもそうだが、なんだか音みたいなのも聞こえ始めた。地震かな? と思うような音である。
と、
「イノシシッ!?」
「イノシシが出たぞーーーー!!」
という声がした。
「えっ? イノシシ?」
「マジか!?」
みながわっと散る。俺と村西は登る為の木の側にいた為、何も考えずにひょいひょいと木に登った。
ドドドドド……という音がだんだん近づいてくる。嘘だろ? と思ったが、本当にイノシシが10mぐらい近いところを駆け抜けて行った。
「マジか……」
なんか、イノシシだけじゃなくて、ピー太とか、ユーリの姿が見えたような気がしたんだが……あれはいったいどういうことなんだろう。追われていたわけじゃなくて追いかけていったように見えたけど。
それとも俺の目の錯覚か?
「避難しなさい! 急いで建物の中へ!」
先生たちがやってきて校舎の方へ生徒を誘導しようとする。でもみんなパニックを起こしたような状態になっているから、なかなかうまくいかないみたいだった。俺? 村西と一緒に木にしがみついた状態だ。いいところに枝があるのでそれほど疲れない。つってもさすがに一時間はしがみついてられないだろうけど。
そう考えると木の上で過ごす動物とかってすげーなとかのん気なことを思った。
ようは喧噪を上から見てる状態だから、あんまり非常事態という認識をしていないのだろう。
少しして離れたところからドーン! という派手な音がし、また周りがざわざわと騒がしくなった。
校舎に向かったのは半分ぐらいのようだ。こういう避難訓練も日頃からしておかないといけないんだろうな。
「……イノシシかぁ……」
今のドーンはなんだろう。木かなんかにぶつかったとか? イノシシって自滅とかするもん?
「こらー! 危ないから校舎に入れー!」
俺たちも木から下りるように言われ、みなしぶしぶ校舎に入った。
だからどうなったんだよ、いったい。
昇降口でざっと汚れを落として、教室へ移動する。一年は教室が四階だから移動するのもたるい。
「……やっと着いた」
今日は特にたるい気がする。
「お疲れー」
稲村は先に着いていた。手をひらひら振っている。
「疲れたー」
席に着く。なんでこんなに疲れてるんだろう。
「木登り、もうしてたとか?」
「あー……」
そういえばイノシシって聞いたからそこにあった木に登って様子見してたんだよな。それで疲れたのかと納得した。
「登った」
「だからじゃない?」
「かもなー」
「俺の焼きそば~……」
緒方はまだ始めていなかったらしい。つーか焼きそばを焼き始めてたとしても中断させられるとかつらいんじゃないかな。
なんて話したら担任がやってきた。
「今状況を確認している最中だから自習しててくれ。確認でき次第どうするかを伝える」
「せんせー」
他の生徒が手を上げた。
「なんだ?」
「状況の確認ってどれぐらいで終わんの? 腹減ったりしたらどうすればいいんですかー?」
「ああ、そうだな。ちょっと今はわからんから何かあれば職員室に声をかけるように」
先生はそう言って慌ただしく戻っていった。
なんか拍子抜けだった。
「山菜採りと山頂トライアル組ってどうしてるんだろうねー?」
稲村がぼそっと呟く。確かに山根はまだ戻ってきていないし、他にもちらほらいない生徒がいそうだった。
「……どうしてるんだろうな」
どちらにせよ今の俺たちにできることは、大人しく待っているぐらいだろう。イノシシは俺と村西が登った木よりも10mぐらい離れたところをドドドドドと走っていたように思う。怪我人がいないことを祈るばかりだ。
「なぁ、稲村」
「なーに?」
「イノシシが駆けてったところって見たか?」
「僕は直接は見てないよ?」
「そっか」
じゃあ、ピー太とかユーリとかの姿が見えたような気がしたのは、後で村西に確認しないとわからないかなと思ったのだった。
それにしてもあいつら、何やってたんだ?
「第十五回サバイバル大会を始めまーす! 怪我などしないように気を付けて楽しんでね!」
校庭にて出された嵐山さんの号令で、各自スタートの場所へと移動した。
水のろ過&蒸留、石鹸作り、山菜採り、山頂までのトライアルなどは時間がかかる為早めに始まる。草刈りや木登りについても午前中の方が余力があるだろうということで午前中からだ。
火おこしはコツさえつかめばそこまで時間がかからないということで、11時ぐらいの開始となっている。縄を綯うなども10時ぐらいからだった。
木登りには軍手など自分の手に合ったものを使ってもいいし、靴も選べる。俺は軍手を嵌めて登ることにした。
タイムトライアルではあるが、勝敗に内申点は全く関係ないので確実に登った方がいい。登るのはどうにかなるんだがやっぱ下りる時が怖いんだよなー。
ウォーミングアップは朝の見回りでしてきている。
そろそろ出番かなーと思っていたら、なんかざわざわといきなり騒がしくなった。
「え? なんだ?」
「なんだろうな?」
村西と共にきょろきょろと辺りを見回す。
騒がしいのもそうだが、なんだか音みたいなのも聞こえ始めた。地震かな? と思うような音である。
と、
「イノシシッ!?」
「イノシシが出たぞーーーー!!」
という声がした。
「えっ? イノシシ?」
「マジか!?」
みながわっと散る。俺と村西は登る為の木の側にいた為、何も考えずにひょいひょいと木に登った。
ドドドドド……という音がだんだん近づいてくる。嘘だろ? と思ったが、本当にイノシシが10mぐらい近いところを駆け抜けて行った。
「マジか……」
なんか、イノシシだけじゃなくて、ピー太とか、ユーリの姿が見えたような気がしたんだが……あれはいったいどういうことなんだろう。追われていたわけじゃなくて追いかけていったように見えたけど。
それとも俺の目の錯覚か?
「避難しなさい! 急いで建物の中へ!」
先生たちがやってきて校舎の方へ生徒を誘導しようとする。でもみんなパニックを起こしたような状態になっているから、なかなかうまくいかないみたいだった。俺? 村西と一緒に木にしがみついた状態だ。いいところに枝があるのでそれほど疲れない。つってもさすがに一時間はしがみついてられないだろうけど。
そう考えると木の上で過ごす動物とかってすげーなとかのん気なことを思った。
ようは喧噪を上から見てる状態だから、あんまり非常事態という認識をしていないのだろう。
少しして離れたところからドーン! という派手な音がし、また周りがざわざわと騒がしくなった。
校舎に向かったのは半分ぐらいのようだ。こういう避難訓練も日頃からしておかないといけないんだろうな。
「……イノシシかぁ……」
今のドーンはなんだろう。木かなんかにぶつかったとか? イノシシって自滅とかするもん?
「こらー! 危ないから校舎に入れー!」
俺たちも木から下りるように言われ、みなしぶしぶ校舎に入った。
だからどうなったんだよ、いったい。
昇降口でざっと汚れを落として、教室へ移動する。一年は教室が四階だから移動するのもたるい。
「……やっと着いた」
今日は特にたるい気がする。
「お疲れー」
稲村は先に着いていた。手をひらひら振っている。
「疲れたー」
席に着く。なんでこんなに疲れてるんだろう。
「木登り、もうしてたとか?」
「あー……」
そういえばイノシシって聞いたからそこにあった木に登って様子見してたんだよな。それで疲れたのかと納得した。
「登った」
「だからじゃない?」
「かもなー」
「俺の焼きそば~……」
緒方はまだ始めていなかったらしい。つーか焼きそばを焼き始めてたとしても中断させられるとかつらいんじゃないかな。
なんて話したら担任がやってきた。
「今状況を確認している最中だから自習しててくれ。確認でき次第どうするかを伝える」
「せんせー」
他の生徒が手を上げた。
「なんだ?」
「状況の確認ってどれぐらいで終わんの? 腹減ったりしたらどうすればいいんですかー?」
「ああ、そうだな。ちょっと今はわからんから何かあれば職員室に声をかけるように」
先生はそう言って慌ただしく戻っていった。
なんか拍子抜けだった。
「山菜採りと山頂トライアル組ってどうしてるんだろうねー?」
稲村がぼそっと呟く。確かに山根はまだ戻ってきていないし、他にもちらほらいない生徒がいそうだった。
「……どうしてるんだろうな」
どちらにせよ今の俺たちにできることは、大人しく待っているぐらいだろう。イノシシは俺と村西が登った木よりも10mぐらい離れたところをドドドドドと走っていたように思う。怪我人がいないことを祈るばかりだ。
「なぁ、稲村」
「なーに?」
「イノシシが駆けてったところって見たか?」
「僕は直接は見てないよ?」
「そっか」
じゃあ、ピー太とかユーリとかの姿が見えたような気がしたのは、後で村西に確認しないとわからないかなと思ったのだった。
それにしてもあいつら、何やってたんだ?
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