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49.智紀、サバイバル大会の参加について考える

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 九月末にサバイバル大会があるということで、二学期に入ってすぐぐらいに参加競技の決定と練習をすることになった。
 木登りはもちろんあった。
 その他の競技として、川の水をろ過してから蒸留するとか(ろ過するだけではないらしい)、薪割りとか、山菜採り、山頂までのトライアル、草刈り、火おこしなどがあった。他にも廃油を使った石鹸作りや、草から繊維を取り出して縄を綯うなどやることが多彩だ。
 うん、確かにサバイバル大会だなと思った。

「うーん……」

 一応みんな少なくとも一競技には参加しないといけないらしい。

「稲村は何やる?」
「どれもだいたい体育会系だよね。まぁ、体育祭の代わりってことだからそうなんだろうけど……」

 稲村は体育があまり好きではないのでげんなりした顔をしていた。
 ちなみに山頂までのトライアルだと山頂でパンと牛乳が待っているらしい。タイムを競う競技ではあるが、勝ち負けで成績に影響はないことから参加人数はそれなりに多いみたいだ。
 それから、火おこしがうまくできるとその種火を使って焼きそば作りができるらしい。それで参加する一年生は多いらしいが、二、三年に参加者が少ないようなことを聞いて、あー、と思った。

「火おこしってかなりたいへんそうだよね?」

 稲村にこそっと言われて、俺は無言で頷いた。
 コツが掴めれば早いのかもしれないが、ずぶの素人がいざ火おこしをしようとしてできるとは限らない。火打ち石か? それとも木と木を組み合わせて摩擦熱? なかなか腕が疲れそうだ。
 何に参加するかは一日考えてもいいらしいが、全ての競技に最低でも最低五人は参加するように振り分ける為、五人に満たない競技は参加人数が多いところからじゃんけんなどで移る必要があるそうだ。

「トモ君は何やるー?」
「俺は木登りかな」

 毎日筋トレをしている成果がほしい。そうでなければ山頂までのトライアルに参加したかったがけっこう参加人数が多そうなのでやめたのだ。

「僕は石鹸作ろうかなー。将来役に立ちそう~」
「いーんじゃね?」

 山根はというと、山菜採りに向かうらしい。採ってきたものが全て食べられる物だと、調理して食べることも可能らしい。食堂のおばさんが判断してくれるそうだ。

「知識を試すいい機会だからね……」

 ふふふとか山根は悪い笑みを浮かべてそんなことを言っていた。

「えー? 僕たちにもお裾分けしてよー」
「たくさん採れたらな」
「山根やさしーい!」

 稲村が山根にじゃれている。緒方は火おこしをするらしい。がんばって火を付けて焼きそばを作ってほしいと思った。

「山根、俺の分もよろしく!」
「たくさん採れたらな……」

 稲村に便乗したら呆れられた。好き嫌いはないからゲテモノ以外ならなんでも食うぞ。
 その日の授業を終えて村西と合流する。村西はどの競技に参加するんだ? と聞いたら村西も木登りをすると言っていた。

「じゃあ練習がんばろうな!」
「そうだな」

 校舎を出ればピピーッ! と鳴き声がしてバサバサとピー太、ピーコ、ピコーが飛んできた。その後ろからピースケが飛んできたけど、生徒会長はいない。

「ピースケ、藤沢先輩はいないぞ」

 そう伝えたら、ピースケは一旦俺の頭の上で休み、ふっと嘆息した。なんかかわいい。

「藤沢先輩って多分生徒会だよな?」
「そうじゃないー?」
「多分な」
「俺、ピースケのこと生徒会室まで届けてくるよ」

 ピースケは会長のことが気に入ったみたいだしな。ピー太に腕に移ってもらい、ピースケには頭に乗っていてもらった。

「えー? じゃあ僕も行くー」
「俺も」
「え? 付き合ってくれるの? 俺愛されてるなー」

 そう笑って校舎に戻った。稲村と村西に小突かれる。ピーコとピコーはイレギュラーに対応できないのか、稲村と村西の腕で身体をゆらゆらと動かしていた。なんかキョドっているような仕草である。
 ピー太がピピッ! と鳴くとピーコとピコーはやっと落ち着いた。俺の頭の上のピースケもおとなしくなった。もしかしたら俺の頭の上で座ったのかもしれない。なんか頭の上があったかい。フンはされていないことを祈る。
 生徒会室は二階だ。
 生徒会室の扉をノックする。

「すみませーん。一年の大林です。会長いますかー?」
「はーい」

 開けてくれたのはいつも通り河野先輩だった。

「どうかしたのかな?」
「ピースケが昇降口で待ってたので届けにきました」
「ピースケ?」

 一番奥の席に腰掛けていた藤沢先輩が立ち上がり、急いでこちらへ来た。

「そうか。大林君、ありがとう」
「いえいえ~」

 生徒会長も丸くなったと思う。ふと思い出して聞いてみた。

「そういえば会長と副会長はサバイバル大会は何に参加するんですか?」
「ああ……今年は草刈りだな。河野もあまり草刈りに参加できていないのでな」
「そうなんですか」

 草刈りを率先してやる人なんているんだ? と目を丸くしてしまった。
 そんなちょっとしたイレギュラーはあったが、サバイバル大会に向けて俺と村西はそれから練習にいそしんだのだった。(けっこう村西もノリがいいのである)
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