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48.智紀、二学期も楽しく過ごす
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二学期になった。
朝晩は涼しいと感じることが多くなってきた。
元々山の上なので下界に下りなければそれほど暑くはない。でも太陽に近いのかなんなのか、日陰以外では陽射しがすごく強く感じられる。
気のせいかもしれないけど。
ピー太たちは変わらず元気である。
ピー太やセキセイインコたちは当たり前のように俺たちの頭の上に乗るが、スズメやカケスは近づいてくることはあっても頭の上に乗ったりはしてこない。これが元々の野生とそうでないものの違いかもしれないと思った。
そして嵐山さんから一人一つずつ、オニヤンマのおもちゃのようなものをもらった。ピンがついていることから、どこかにくっつけるのかもしれない。
「これ、なんですか?」
「オニヤンマだよ」
「それはなんとなくわかりますけど」
だからなんだと聞きたいわけで。
「聞いたことない? 虫除けに多少寄与するんだよ。大概の虫ってオニヤンマに捕食されるから、胸とかに付けておくと蚊に刺されにくくなるかもね」
「ほー」
そんな便利グッズがあるらしい。
「うちは生物管理部だから虫除けとかの薬剤はあんまり使いたくないでしょ。でも虫には刺されたくないしねーってことであげる」
「ありがたいですけど……他の生徒には……」
嵐山さんは入口の貼り紙を指さした。希望者にはオニヤンマのバッジを支給しますと書いてある。
「うーん。でも理由とか効果とか特に書いてないですよねー?」
稲村が指摘した。確かにこれだけではみななんでオニヤンマ? と思うのではないだろうか。
「僕がここにいるんだから僕に聞けばいいと思わない? それか自分で調べるとか、興味があれば自分から動くと思うよ~」
まぁそれは確かに。でもまず興味がなければ俺みたいに貼り紙自体が目に入らない奴もいるだろうしな。そこまで親切にする義務もないといえばないのか。もう高校生だしな。
「ありがとうございます。これってどう使えばいいんですか?」
「部屋に吊るしておいてもいいし、リュックにくっつけてもいいんじゃないかなー。いろいろ試してみてよ。他の虫から見えてないと意味ないだろうしね」
「わかりました。ありがとうございます」
なんだかんだいって嵐山さんは親切である。リュックに付けることにした。
朝晩涼しいということもあり、朝寮を出る時はYシャツだ。夏物でポロシャツも買ってもらったがあんまり着ていない。なにせ山だから長袖長ズボンの方が都合がいいのだ。ピー太も腕に留まるから、半袖だと爪が食い込んで痛いし。
インコの爪って切ってもいいものなんだろうか? でも切ると木に留まったりするのに不便かなとかいろいろ考えてしまう。
部屋に戻ったらピー太が先回りしていたので村西に断って窓を開けた。
相変わらず頭に乗ってから腕に移動する。腕に乗られると爪がやっぱり食い込む。Yシャツ着てるからマシだけど。
「トモーノリー!」
今日のピー太はご機嫌だ。腕に留まってトトトッ、トトトッと歩いている。
「村西、インコの爪って切ってもいいと思う?」
「……籠の中で暮らしてるなら切った方がいいだろうが……」
「あ、そっか。そしたら下手に切らない方がいいのかな」
痛いからって切ってしまったら、ピー太が木に留まれなくなってしまうかもしれない。
「村西、ありがとー」
「……いや」
ピピピーッ! と窓の外から鳴き声がした。なんだろうと思ったら、
「うわぁっ!?」
「えっ?」
村西が突然大きな声を上げ、急いで窓をガラッと開けた。そして両手を出す。バサバサバサバサッとかなりがんばって羽ばたいているような音がして、村西の腕にピコーがどうにか留まった。下からがんばって飛んできたみたいである。そのままピコーは村西の腕にポテッと伏せた。
「危ない、危ないっ!」
村西は慌てて両腕をひっこめた。そして慌ててベッドまで運んだ。ピコーはぜえはあしている。やっぱり太っているみたいだ。
村西もはーはーと息が荒い。よっぽど驚いたのだろう。
「……こんなところまで飛んできちゃだめだろう……」
村西は額の汗を拭いた。
「ピコー、ホントに村西に懐いたな~」
「びっくりした……大林、エサあるか?」
「あるよ」
鳥のエサは余分に買ってある。村西に小袋を一個渡した。そして俺も自分の手に少しエサを出した。ピー太がピピッ! と鳴いて啄む。
「ありがとな」
「いいよいいよ。あ、水も用意するよ」
紙コップの上の方を切って低くしたコップに水を汲んで村西に渡す。便利だと思っていくつか作ってあった。鳥にエサとか水とかあげる時に役に立つんだよな。
そしてピー太とピコーにエサや水をあげた後、二羽は満足したように窓の向こうへ飛んでいった。なんかおやつが欲しかったのかもしれない。それにしてもピコーはがんばったなと思う。ちょっとよろよろしていた。
大丈夫かな?
ここまで来るなんて、ピコーは本当に村西が気に入ったのだろう。
「ピコー、さすがに太りすぎじゃないか……?」
村西が本気で心配していて、つい笑ってしまった。
朝晩は涼しいと感じることが多くなってきた。
元々山の上なので下界に下りなければそれほど暑くはない。でも太陽に近いのかなんなのか、日陰以外では陽射しがすごく強く感じられる。
気のせいかもしれないけど。
ピー太たちは変わらず元気である。
ピー太やセキセイインコたちは当たり前のように俺たちの頭の上に乗るが、スズメやカケスは近づいてくることはあっても頭の上に乗ったりはしてこない。これが元々の野生とそうでないものの違いかもしれないと思った。
そして嵐山さんから一人一つずつ、オニヤンマのおもちゃのようなものをもらった。ピンがついていることから、どこかにくっつけるのかもしれない。
「これ、なんですか?」
「オニヤンマだよ」
「それはなんとなくわかりますけど」
だからなんだと聞きたいわけで。
「聞いたことない? 虫除けに多少寄与するんだよ。大概の虫ってオニヤンマに捕食されるから、胸とかに付けておくと蚊に刺されにくくなるかもね」
「ほー」
そんな便利グッズがあるらしい。
「うちは生物管理部だから虫除けとかの薬剤はあんまり使いたくないでしょ。でも虫には刺されたくないしねーってことであげる」
「ありがたいですけど……他の生徒には……」
嵐山さんは入口の貼り紙を指さした。希望者にはオニヤンマのバッジを支給しますと書いてある。
「うーん。でも理由とか効果とか特に書いてないですよねー?」
稲村が指摘した。確かにこれだけではみななんでオニヤンマ? と思うのではないだろうか。
「僕がここにいるんだから僕に聞けばいいと思わない? それか自分で調べるとか、興味があれば自分から動くと思うよ~」
まぁそれは確かに。でもまず興味がなければ俺みたいに貼り紙自体が目に入らない奴もいるだろうしな。そこまで親切にする義務もないといえばないのか。もう高校生だしな。
「ありがとうございます。これってどう使えばいいんですか?」
「部屋に吊るしておいてもいいし、リュックにくっつけてもいいんじゃないかなー。いろいろ試してみてよ。他の虫から見えてないと意味ないだろうしね」
「わかりました。ありがとうございます」
なんだかんだいって嵐山さんは親切である。リュックに付けることにした。
朝晩涼しいということもあり、朝寮を出る時はYシャツだ。夏物でポロシャツも買ってもらったがあんまり着ていない。なにせ山だから長袖長ズボンの方が都合がいいのだ。ピー太も腕に留まるから、半袖だと爪が食い込んで痛いし。
インコの爪って切ってもいいものなんだろうか? でも切ると木に留まったりするのに不便かなとかいろいろ考えてしまう。
部屋に戻ったらピー太が先回りしていたので村西に断って窓を開けた。
相変わらず頭に乗ってから腕に移動する。腕に乗られると爪がやっぱり食い込む。Yシャツ着てるからマシだけど。
「トモーノリー!」
今日のピー太はご機嫌だ。腕に留まってトトトッ、トトトッと歩いている。
「村西、インコの爪って切ってもいいと思う?」
「……籠の中で暮らしてるなら切った方がいいだろうが……」
「あ、そっか。そしたら下手に切らない方がいいのかな」
痛いからって切ってしまったら、ピー太が木に留まれなくなってしまうかもしれない。
「村西、ありがとー」
「……いや」
ピピピーッ! と窓の外から鳴き声がした。なんだろうと思ったら、
「うわぁっ!?」
「えっ?」
村西が突然大きな声を上げ、急いで窓をガラッと開けた。そして両手を出す。バサバサバサバサッとかなりがんばって羽ばたいているような音がして、村西の腕にピコーがどうにか留まった。下からがんばって飛んできたみたいである。そのままピコーは村西の腕にポテッと伏せた。
「危ない、危ないっ!」
村西は慌てて両腕をひっこめた。そして慌ててベッドまで運んだ。ピコーはぜえはあしている。やっぱり太っているみたいだ。
村西もはーはーと息が荒い。よっぽど驚いたのだろう。
「……こんなところまで飛んできちゃだめだろう……」
村西は額の汗を拭いた。
「ピコー、ホントに村西に懐いたな~」
「びっくりした……大林、エサあるか?」
「あるよ」
鳥のエサは余分に買ってある。村西に小袋を一個渡した。そして俺も自分の手に少しエサを出した。ピー太がピピッ! と鳴いて啄む。
「ありがとな」
「いいよいいよ。あ、水も用意するよ」
紙コップの上の方を切って低くしたコップに水を汲んで村西に渡す。便利だと思っていくつか作ってあった。鳥にエサとか水とかあげる時に役に立つんだよな。
そしてピー太とピコーにエサや水をあげた後、二羽は満足したように窓の向こうへ飛んでいった。なんかおやつが欲しかったのかもしれない。それにしてもピコーはがんばったなと思う。ちょっとよろよろしていた。
大丈夫かな?
ここまで来るなんて、ピコーは本当に村西が気に入ったのだろう。
「ピコー、さすがに太りすぎじゃないか……?」
村西が本気で心配していて、つい笑ってしまった。
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