野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~

浅葱

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45.智紀、山頂まで登ってみる

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 夏休みだ。
 やることもそんなにないから、宿題は早めに終わってしまった。
 緒方は三教科赤点を取り、夏休み中は補習を受けなければならないらしい。一日でもサボると部活に参加させてもらえなくなるらしいのですごい顔をしていた。他にも赤点を取った生徒はちらほらいたらしいが、俺たちの仲間にはいなかったから問題はない。
 先輩たちも無事テストで結果を残したみたいだ。よかったよかった。
 とはいえ金子先輩たち(部のひょろひょろ先輩たち)は夏休みの前半は帰省するそうだ。どんなに遅くてもお盆明けには戻ってくると言っていた。
 それはもうしょうがない。俺は散歩も兼ねて、できるだけ朝晩林の中を見て回ることにした。もちろん一人では許可されないから、稲村か村西に付き添ってもらう形である。それに夏休み中は生徒会長の藤沢先輩と副会長の河野先輩も加わってくれた。
 多少思うところはあるがとても助かる。

「……もっと部員が増えればいいのだがな……」

 藤沢先輩が思案気に呟いた。視線の先は俺の腕に留まっているピー太だ。

「そうですね。見回りとかも楽にはなりますね」

 バサバサッと重そうな音がしたと思ったら、ピースケが藤沢先輩の頭の上に乗った。ピースケはセキセイインコなのだがかなりの食いしん坊らしく野生にしてはふっくらしている。

「ピースケ君、できれば肩に乗ってくれ……」

 文句を言いながらも藤沢先輩は嬉しそうだ。ピースケは飛ぶのにもちょっと気合がいるらしく、ふんっというかんじで飛び立つ。それってやっぱ体重が重いからではないのだろうか。ちょっと心配になるが、ふっくらしてる鳥ってかわいいからいいかとも思ってしまう。
 ピー太はすらりとしていてかっこいい。これはこれでありだ。
 今日は少しこの山を歩いてみようということで、上の方まで足を伸ばすことにした。
 寮の位置は山のちょうど中腹ぐらいにある。山登り大好き部がよく登っているらしく、道のようなものができていた。帰りはできるだけ草むしりをしてほしいと頼まれ、ちょっとげんなりした。
 でも手入れはしないと荒れるもんな。三十分ぐらいでいいならと話はつけてある。
 ピー太は肩に乗ってくれた。
 それなりに手入れはしてあるらしいが、日の光はなかなか届かない。そのせいか真夏だというのに涼しくも感じられた。
 虫が縦横無尽に飛んでいるのがちょっと困るが……。

「けっこう急ですね……」
「道はそれほど整備されていないからな」

 山頂に着いても開けているわけではないらしい。そう聞くとちょっと残念だった。

「えー、山頂に着いても景色とか見られないんですかー?」

 稲村が俺の心の声を代弁してくれた。

「観光地ではないからな。山頂を整備しても人が登るとは限らない。そもそもここは学校の敷地だろう」

 藤沢先輩がメガネの真ん中をくいっと押し上げる。

「それはそうですけどー」

 不満の声を上げる稲村に、肩に留まっていたピーコがすりっとすり寄った。

「あああああ、ピーコちゃんかわいいいいい! ありがとー!」

 稲村がもろにデレた。これはこれで楽しい。それを見てピー太も何か思うところがあったのか、俺の首にすりすりと頭を寄せてくれた。

「ピー太、かわいいいいい!!」

 俺も大概である。でもかわいいんだからしょうがない。
 そんなことをしながら山頂まで登った。
 うん、達成感はあまりない。でも道の状態などが知れてよかったと思う。途中、一部木が倒れているところも見かけたし。いわゆる危険個所のチェックも兼ねていたのだ。

「あと一時間で食堂が閉まるよ」

 河野先輩に言われて、急いで山を下りることにした。下りる際がけっこう危険だと聞いているので慎重に下りたら寮まで二十分近くかかった。まっすぐじゃないからけっこう歩くんだよなー。
 寮の入口でピー太とは別れたんだけど、食堂の前の木の枝で待っていた。
 だからピー太、優秀すぎないか?
 食堂のおばさんに許可を取り、小松菜のおひたしの一部をあげたりした。こういうのは理事長権限でどうとでもなるらしい。さすがは私立、である。

「ある程度ルールさえ守ってれば自由ってのがいいよな」

 ポツリと呟いた。

「私立だからかなー。ここってどちらかといえば私立でも学費は低い方らしいよー?」

 稲村が教えてくれた。確かに学費が安いに越したことはない。あんまりチェックはしてなかったけど。
 ピー太は小松菜のおひたしを食べてご機嫌だった。サラダのレタスもぱりぱり食べている。売店には鳥のエサも売っているので後で買ってやろうと思った。さすがに食堂まではピーコ、ピースケは来なかったので、やっぱり藤沢先輩に羨ましそうな顔で見られてしまった。
 ピー太はある程度食べると飛んで窓の外へ出、また少しすると戻ってくる。

「あれ? もしかしてピー太ってフンを外にしに行ってる?」

 うちの部屋でもフンをしたことがないから、俺の予想は当たっているのではないだろうか。
 ピピッ! とピー太は鳴き、ふんすというような顔をした。得意気になっているオカメインコがとてもかわいい。

「ピー太はえらいなぁ」

 ピー太の羽を優しく撫でる。ピー太がちらっと俺を見る。
 もっと撫でろと言っているみたいで、それはそれでとてもかわいかった。
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