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42.智紀、期末テストをがんばる
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理事長というのは嵐山さんのことである。学校には理事長室というものがあるが、まずそこにいた試しがない。いつも寮の入口で、何やら書類みたいなものとにらめっこをしていることが多い。たまにTVゲームなんかもやっててずるいと思うこともある。
そんなわけで理事長に用があったら寮に向かった方が早いのだ。
単刀直入に聞いてみた。
「嵐山さん、サバイバル大会って何すんの?」
「ああ、もう二学期の予定が配られたのかい? うん、まぁいろいろだよ。内申点つくから参加してね」
「やっぱつくんだ……」
それは嫌でも参加せねばなるまいと思う。
「具体的に何をするんですか? 木登りは聞きましたけどー」
稲村が更に聞く。嵐山さんはにんまりした。
「冒険少年って番組知ってる?」
「ああ、あれ……」
村西は知っているらしい。俺は見たことがないから知らない。なんか島みたいなところへ行って何泊かするような番組なんだっけ?
「水のろ過をしてもらったりするし、植物から繊維を取り出して縄を編んでもらったり、服みたいなのを作ってもらったりもするかな。それからクイズとかもあるよー」
「えー……今って令和ですよね?」
「遭難した時の応急処置とか対処法は知っておいた方がいいんじゃない?」
稲村の不満そうな言葉に、嵐山さんはにこにこしながら答えた。
「まぁ、確かに……」
ここ山だしな。知っておくに越したことはないだろう。令和だろうがなんだろうが、山で人が遭難するってのはよくあることだ。
あとは山だとこういうこともするんじゃないかなということを思い出した。
「そういえば、炭焼きとかはしないんですか?」
「冬にやるよ。森林管理部と一緒にやりたければ参加するといいよー。内申点つくからね」
内申点大事。って何の為に稼ぐのかよくわからなくなってくるけど。
俺たちはまだ一年生だから進級の為だよな。
「将来的に役に立たなくても、万が一ってことがあるから知っておくに越したことはないよねー」
「それは、そうですね……」
とりあえず今は期末試験の準備である。二学期のことは二学期に考えようと思った。
試験一週間前になった。林の中、鳥小屋があるところまでは人を替えて毎日見回りに向かっているが(一応ルートを変えて見回りをしている。死角を増やすと必ず悪さをする人がいるので)、それだけではピー太は足りないらしい。
「トモーノリー、ピータッ、ピータッ!」
と、今日も部屋に戻って問題集を広げていると頭の上でジタジタしている。だから髪が鳥の巣状態になるからやめろっての。
「……村西、すまん……」
うるさいよな。
「遊んでほしいんだろ。しょうがない」
なんでこんなにうちのルームメイトはいいやつなんだろうか。お菓子を買ってやろう。(なんで俺はえらそうなのか)
部屋の扉をノックする音がしたと思ったら、すぐに扉が開いて稲村が入ってきた。それノックの意味ある?
「トモ君、ムラ君置いてよー!」
「勉強するなら」
うるさいのはピー太だけで十分だ。
頭の上にいたのに問題集の上に乗られたら見えない。
「ピー太……勉強の邪魔はするなよ」
頭で軽く押してどかした。でも乗ってくる。
「ピー太……俺に勉強させないと一緒にいる時間がなくなるぞ?」
これは前にも言ったと思うんだがなぁ。
ピー太はコキャコキャ首を傾げると、問題集からは下りた。やれやれである。
何やってんのー? というようにピー太も問題集を眺める。なんか一緒に見てるみたいで楽しくなってくる。
「ホント、ピー太君て頭いいよねー」
稲村がにこにこしながら言う。頭いいのはわかったからとりあえず邪魔をしないでほしかった。
稲村は定期的に俺たちの部屋に来る。ルームメイトが別の友達と部屋にいることが多いらしい。
「来年は部屋変わってほしいよー。(ルームメイトが)相手の部屋に行くこともあるんだけどさ、ほんっと落ち着かないっ!」
「そっか、たいへんだな」
頭を撫でたら稲村はにっこりした。えへへーとか言っている。村西が近づいてきて、稲村の頭をガシガシ撫でた。
「いたっ、痛いよムラ君っ!」
「部屋替えの申請書とか出せないのか?」
「よっぽど仲が悪いとかじゃないとダメみたいなんだよねー。でも迷惑はしてるんだけどさー」
「そっかー」
俺が文句を言いに行くっつーのも違うしな。俺的には稲村がこの部屋にいても全然気にならないし。あ、でも村西に迷惑か。
みんなで勉強しながらその日は過ごした。
そして期末テストである。
三日間で九教科だ。お弁当給食はないので寮に戻ってお昼は食べることになる。
だんだん暑くなってきた。まだ梅雨は明けてなくて空はどんよりしているけれども、夏が近いことが感じられた。
「そういえばみんな夏休みはどうするんだ?」
ふと気になって聞いた。
「俺は残る」
「僕も家には帰らないかなー。トモ君は?」
「俺も寮だ」
「そっかー、みんな残るんだね。うれしー!」
夏休み前に楽しくなってしまった。しかし何はともあれ期末試験なんである。毎回緒方が騒いでいてうるさかったけど、もうそれは風物詩として楽しむことにしたのだった。
そんなわけで理事長に用があったら寮に向かった方が早いのだ。
単刀直入に聞いてみた。
「嵐山さん、サバイバル大会って何すんの?」
「ああ、もう二学期の予定が配られたのかい? うん、まぁいろいろだよ。内申点つくから参加してね」
「やっぱつくんだ……」
それは嫌でも参加せねばなるまいと思う。
「具体的に何をするんですか? 木登りは聞きましたけどー」
稲村が更に聞く。嵐山さんはにんまりした。
「冒険少年って番組知ってる?」
「ああ、あれ……」
村西は知っているらしい。俺は見たことがないから知らない。なんか島みたいなところへ行って何泊かするような番組なんだっけ?
「水のろ過をしてもらったりするし、植物から繊維を取り出して縄を編んでもらったり、服みたいなのを作ってもらったりもするかな。それからクイズとかもあるよー」
「えー……今って令和ですよね?」
「遭難した時の応急処置とか対処法は知っておいた方がいいんじゃない?」
稲村の不満そうな言葉に、嵐山さんはにこにこしながら答えた。
「まぁ、確かに……」
ここ山だしな。知っておくに越したことはないだろう。令和だろうがなんだろうが、山で人が遭難するってのはよくあることだ。
あとは山だとこういうこともするんじゃないかなということを思い出した。
「そういえば、炭焼きとかはしないんですか?」
「冬にやるよ。森林管理部と一緒にやりたければ参加するといいよー。内申点つくからね」
内申点大事。って何の為に稼ぐのかよくわからなくなってくるけど。
俺たちはまだ一年生だから進級の為だよな。
「将来的に役に立たなくても、万が一ってことがあるから知っておくに越したことはないよねー」
「それは、そうですね……」
とりあえず今は期末試験の準備である。二学期のことは二学期に考えようと思った。
試験一週間前になった。林の中、鳥小屋があるところまでは人を替えて毎日見回りに向かっているが(一応ルートを変えて見回りをしている。死角を増やすと必ず悪さをする人がいるので)、それだけではピー太は足りないらしい。
「トモーノリー、ピータッ、ピータッ!」
と、今日も部屋に戻って問題集を広げていると頭の上でジタジタしている。だから髪が鳥の巣状態になるからやめろっての。
「……村西、すまん……」
うるさいよな。
「遊んでほしいんだろ。しょうがない」
なんでこんなにうちのルームメイトはいいやつなんだろうか。お菓子を買ってやろう。(なんで俺はえらそうなのか)
部屋の扉をノックする音がしたと思ったら、すぐに扉が開いて稲村が入ってきた。それノックの意味ある?
「トモ君、ムラ君置いてよー!」
「勉強するなら」
うるさいのはピー太だけで十分だ。
頭の上にいたのに問題集の上に乗られたら見えない。
「ピー太……勉強の邪魔はするなよ」
頭で軽く押してどかした。でも乗ってくる。
「ピー太……俺に勉強させないと一緒にいる時間がなくなるぞ?」
これは前にも言ったと思うんだがなぁ。
ピー太はコキャコキャ首を傾げると、問題集からは下りた。やれやれである。
何やってんのー? というようにピー太も問題集を眺める。なんか一緒に見てるみたいで楽しくなってくる。
「ホント、ピー太君て頭いいよねー」
稲村がにこにこしながら言う。頭いいのはわかったからとりあえず邪魔をしないでほしかった。
稲村は定期的に俺たちの部屋に来る。ルームメイトが別の友達と部屋にいることが多いらしい。
「来年は部屋変わってほしいよー。(ルームメイトが)相手の部屋に行くこともあるんだけどさ、ほんっと落ち着かないっ!」
「そっか、たいへんだな」
頭を撫でたら稲村はにっこりした。えへへーとか言っている。村西が近づいてきて、稲村の頭をガシガシ撫でた。
「いたっ、痛いよムラ君っ!」
「部屋替えの申請書とか出せないのか?」
「よっぽど仲が悪いとかじゃないとダメみたいなんだよねー。でも迷惑はしてるんだけどさー」
「そっかー」
俺が文句を言いに行くっつーのも違うしな。俺的には稲村がこの部屋にいても全然気にならないし。あ、でも村西に迷惑か。
みんなで勉強しながらその日は過ごした。
そして期末テストである。
三日間で九教科だ。お弁当給食はないので寮に戻ってお昼は食べることになる。
だんだん暑くなってきた。まだ梅雨は明けてなくて空はどんよりしているけれども、夏が近いことが感じられた。
「そういえばみんな夏休みはどうするんだ?」
ふと気になって聞いた。
「俺は残る」
「僕も家には帰らないかなー。トモ君は?」
「俺も寮だ」
「そっかー、みんな残るんだね。うれしー!」
夏休み前に楽しくなってしまった。しかし何はともあれ期末試験なんである。毎回緒方が騒いでいてうるさかったけど、もうそれは風物詩として楽しむことにしたのだった。
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