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41.智紀、梅雨の時期も忙しい
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「今の時期にできることと言ったら、鳥小屋が雨漏りしてないかどうかのチェックぐらいじゃないかなー」
嵐山さんに言われてはっとした。確かにそれはしないといけないだろう。もしピー太の小屋が雨漏りしていて、ピー太が風邪を引いたりしたらたいへんである。他の鳥たちも同様だ。
「確認してきます!」
「一人で行っちゃだめだよー」
嵐山さんが苦笑して言う。飛び出そうとしてはっとする。つい稲山と村西を見てしまった。二人はしょうがないなぁというように頷いた。悪いとは思ったが、小屋の中の確認がしたい。今日は曇だから脚立を持って林の中へ入った。一応防水スプレーとか、木切れとトンカチ、釘も持参してはいる。もし雨漏りしている部分があれば応急処置を施す予定だ。
村西はがたいはいいがなかなかに身軽である。ひょいひょいと脚立を上がっては小屋の確認をしてくれて、雨漏りはないと教えてくれた。
俺は胸を撫で下ろした。
「村西、ありがとう」
「これぐらいなんてことない」
ぶっきらぼうに言われたけど、村西がめちゃくちゃ情に厚い奴だって俺は知ってる。
ピー太とピーコ、他のセキセイインコたちが同じ枝に留まって、興味深そうにこちらを見ていた。コキャコキャ首を傾げているのがかわいい。
「確認終わったぞー。なんかあったら教えてくれよなー」
相手は鳥だから鳴かれてもわからないかもしれないけど、付いてこいって素振りを見せたら付いていくからさ。
林からの帰りは、ピー太が俺の頭の上に、ピーコは稲村の頭の上、そしてピコーとかいうのが村西に頭の上に留まった。
「む、村西、大丈夫か?」
「……フンはしないでくれ」
飛んでくる姿はちょっと怖いらしいが、別に頭の上に乗られるのはいいらしい。そこまで鳥を嫌がっているわけではなくてよかった。
それにしてもピコーってどっかで聞いた名称だな。
「ピコーって聞いたことない?」
「紅茶かなんか?」
「それはオレンジペコーか」
なんて三人でわちゃわちゃ話しながら戻った。
「おや、珍しいこともあるものだねー?」
嵐山さんがたまたま表に出ていて、俺たちの頭にそれぞれ一羽ずつ乗っているのを見て目を丸くした。
「その子はなんていう名前なのかな。わかる?」
「ピコーだそうです」
村西がそう答えたら、嵐山さんは片足を上げて膝を曲げ、両手を開いて顔の横に上げた。驚いているような仕草である。なんなんだろういったい。
思わず稲村と村西と共に顔を見合わせてしまった。
「え? 知らない? もしかして僕、古いのかな……」
ぶつぶつなんか言ってたけど、脚立は返した。鳥小屋に雨漏りがなかったことを報告して、ピー太たちともそこで別れた。
雨は降らないまでもどんよりとした天気が続いている間に、期末テストの時期がやってきた。
なんか日が経つのが早い。森林管理部の手伝いとか、なんだか知らないけど生徒会の手伝いとかをさせられていたからかもしれなかった。もちろん勉強もしてはいた。
「ピータ、トモーノリー、ピータッ、ピータッ!」
「テスト前なんだって! そう怒るなよっ!」
例によってピー太が勉強の邪魔をしに来た。いっそのこと窓を開けるのを止めようかと思ったけど、そうしたらそうしたで窓に突撃しそうになるから危険だ。だからどうしてそんなに狂暴な子になってしまったのか。
そうじゃなきゃ生きていけなかったんだろうなってことはわかるんだけどさ。
おかげでピー太は文句を言いながらも俺の頭の上でじっとしている。
「……村西、うるさくてごめんな……」
「まぁ、大丈夫だ」
なんていいルームメイトなんだろう。アイスをおごることにした。
ピー太がジタジタして俺の頭が鳥の巣みたいになったところで、ピー太は呼びに来たタカに連れられて飛んで行った。ユーリはとても優秀だと思う。
「期末テストなんて、なんであるんだー!」
クラスでは相変わらず緒方が叫んでいた。そろそろ二学期の予定なども配られている。
「二学期にサバイバル大会? とかいうのがあるんだねー。知らなかった。何するんだろー?」
稲村が予定表を見て首を傾げた。
「サバイバル大会?」
そこまで見ていなかった。確かに十月の連休にサバイバル大会と書かれている。入学説明会とかも出てないからいろんなことがさっぱりだ。サバイバルっていうと、迷彩服とか着てやるサバゲーのことなんだろうか。
「緒方は知ってるか?」
「んー? なんか体育祭の名前を変えた心身を鍛えるお祭りみたいなことを聞いたけどな……」
緒方もあまり興味はないらしい。じゃあ俺が思い浮かべたサバゲーとは違うんだな。ちょっとやってみたかったけど。
「もうサバイバル大会の話か? 余裕だなぁ」
担任に言われて、緒方はゲッと言いたそうな顔をした。あからさまなのはどうかと思うぞ。
「せんせー、サバイバル大会って具体的に何するのー?」
稲村が手を上げて聞く。
「ん? ああ……木登りはするぞ」
「木登り。他には何をするんですかー?」
「毎年微妙に違うんだ。興味があるなら理事長に聞いてくれ」
「ああ……」
どうも理事長が独断と偏見で内容を決めるらしい。覚えていたら聞いてみようと思ったのだった。
ーーーーー
ピコーって紅茶の宣伝覚えてる人ー?
嵐山さんに言われてはっとした。確かにそれはしないといけないだろう。もしピー太の小屋が雨漏りしていて、ピー太が風邪を引いたりしたらたいへんである。他の鳥たちも同様だ。
「確認してきます!」
「一人で行っちゃだめだよー」
嵐山さんが苦笑して言う。飛び出そうとしてはっとする。つい稲山と村西を見てしまった。二人はしょうがないなぁというように頷いた。悪いとは思ったが、小屋の中の確認がしたい。今日は曇だから脚立を持って林の中へ入った。一応防水スプレーとか、木切れとトンカチ、釘も持参してはいる。もし雨漏りしている部分があれば応急処置を施す予定だ。
村西はがたいはいいがなかなかに身軽である。ひょいひょいと脚立を上がっては小屋の確認をしてくれて、雨漏りはないと教えてくれた。
俺は胸を撫で下ろした。
「村西、ありがとう」
「これぐらいなんてことない」
ぶっきらぼうに言われたけど、村西がめちゃくちゃ情に厚い奴だって俺は知ってる。
ピー太とピーコ、他のセキセイインコたちが同じ枝に留まって、興味深そうにこちらを見ていた。コキャコキャ首を傾げているのがかわいい。
「確認終わったぞー。なんかあったら教えてくれよなー」
相手は鳥だから鳴かれてもわからないかもしれないけど、付いてこいって素振りを見せたら付いていくからさ。
林からの帰りは、ピー太が俺の頭の上に、ピーコは稲村の頭の上、そしてピコーとかいうのが村西に頭の上に留まった。
「む、村西、大丈夫か?」
「……フンはしないでくれ」
飛んでくる姿はちょっと怖いらしいが、別に頭の上に乗られるのはいいらしい。そこまで鳥を嫌がっているわけではなくてよかった。
それにしてもピコーってどっかで聞いた名称だな。
「ピコーって聞いたことない?」
「紅茶かなんか?」
「それはオレンジペコーか」
なんて三人でわちゃわちゃ話しながら戻った。
「おや、珍しいこともあるものだねー?」
嵐山さんがたまたま表に出ていて、俺たちの頭にそれぞれ一羽ずつ乗っているのを見て目を丸くした。
「その子はなんていう名前なのかな。わかる?」
「ピコーだそうです」
村西がそう答えたら、嵐山さんは片足を上げて膝を曲げ、両手を開いて顔の横に上げた。驚いているような仕草である。なんなんだろういったい。
思わず稲村と村西と共に顔を見合わせてしまった。
「え? 知らない? もしかして僕、古いのかな……」
ぶつぶつなんか言ってたけど、脚立は返した。鳥小屋に雨漏りがなかったことを報告して、ピー太たちともそこで別れた。
雨は降らないまでもどんよりとした天気が続いている間に、期末テストの時期がやってきた。
なんか日が経つのが早い。森林管理部の手伝いとか、なんだか知らないけど生徒会の手伝いとかをさせられていたからかもしれなかった。もちろん勉強もしてはいた。
「ピータ、トモーノリー、ピータッ、ピータッ!」
「テスト前なんだって! そう怒るなよっ!」
例によってピー太が勉強の邪魔をしに来た。いっそのこと窓を開けるのを止めようかと思ったけど、そうしたらそうしたで窓に突撃しそうになるから危険だ。だからどうしてそんなに狂暴な子になってしまったのか。
そうじゃなきゃ生きていけなかったんだろうなってことはわかるんだけどさ。
おかげでピー太は文句を言いながらも俺の頭の上でじっとしている。
「……村西、うるさくてごめんな……」
「まぁ、大丈夫だ」
なんていいルームメイトなんだろう。アイスをおごることにした。
ピー太がジタジタして俺の頭が鳥の巣みたいになったところで、ピー太は呼びに来たタカに連れられて飛んで行った。ユーリはとても優秀だと思う。
「期末テストなんて、なんであるんだー!」
クラスでは相変わらず緒方が叫んでいた。そろそろ二学期の予定なども配られている。
「二学期にサバイバル大会? とかいうのがあるんだねー。知らなかった。何するんだろー?」
稲村が予定表を見て首を傾げた。
「サバイバル大会?」
そこまで見ていなかった。確かに十月の連休にサバイバル大会と書かれている。入学説明会とかも出てないからいろんなことがさっぱりだ。サバイバルっていうと、迷彩服とか着てやるサバゲーのことなんだろうか。
「緒方は知ってるか?」
「んー? なんか体育祭の名前を変えた心身を鍛えるお祭りみたいなことを聞いたけどな……」
緒方もあまり興味はないらしい。じゃあ俺が思い浮かべたサバゲーとは違うんだな。ちょっとやってみたかったけど。
「もうサバイバル大会の話か? 余裕だなぁ」
担任に言われて、緒方はゲッと言いたそうな顔をした。あからさまなのはどうかと思うぞ。
「せんせー、サバイバル大会って具体的に何するのー?」
稲村が手を上げて聞く。
「ん? ああ……木登りはするぞ」
「木登り。他には何をするんですかー?」
「毎年微妙に違うんだ。興味があるなら理事長に聞いてくれ」
「ああ……」
どうも理事長が独断と偏見で内容を決めるらしい。覚えていたら聞いてみようと思ったのだった。
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ピコーって紅茶の宣伝覚えてる人ー?
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