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36.智紀、プールに行く
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この学校にはプールがない。麓の町にもないらしい。
で、ホームセンターがある隣町には町営のプールがあるので、そこで水泳の授業を行うそうだ。
なんだその贅沢。
そんなわけで観光バスがやってきて、あれよあれよという間に俺たちは連れていかれた。ちなみにピー太がついてこようとしたが、ユーリが飛んできて行かないように説得してくれたらしい。(なんとなくドッグファイトっぽく見えて冷汗をかいたりした)
最近はユーリともすっかり仲良くなって、ピー太は迷子になるから山からは出してはいけないということを話してあったのが功を奏したみたいだった。
みんな頭いいよな。
「ちゃんと帰ってくるから、見回りよろしくなー」
とピー太に山を頼んで、胸を撫でおろしたのだった。
「大林ってすげーよな」
「え、何が?」
緒方に声をかけられて聞き返す。
「だってあのオカメインコといつも一緒にいるんだろ?」
「ああうん、まぁ……」
確かにそうだなと頷く。
「元飼主ってマジで?」
「うん。俺の名前知ってたし、間違いないと思う」
「すげーなぁ、奇跡じゃん」
「うん、そうだな」
しみじみ同意した。
飼っていた鳥が逃げてしまったという話はたまに聞く。貼り紙とか呼びかけとかをして見つかった例はある。でもこんな年単位で離れていて再び会えるなんて誰が思うだろう。お互いにどこに行くとか伝え合ってもいないのにまた会えたのは、奇跡だと思った。
「目つき悪いけどさー、大林に懐いてる姿はかわいいよなー」
「ピー太はかわいいんだよ」
目つきが悪くなっていようがなんだろうが、ピー太は俺のかわいいピー太だ。あんまり危険なことはしないでほしいなと思う。
「インコバカだ~」
緒方に茶化されたが、自覚はあるからいいのだ。「うっせ」と軽く小突いて小突き返されたけどさ。
観光バスは大きな体育館のような施設に着いた。ここで二時間授業らしい。室内プールだった。
「この町ってけっこうお金あるんだねー」
稲村がぼそりと呟いた。
「確か山の方に工場が二つぐらいあったはずだぞ」
山根が返事をした。なんでそんなこと知ってるんだ。
「えー? でも工場あっても法人税って国に払うんじゃなかったっけー?」
「法人税は国だが、工場などだと他に法人市民税ってものがあるはず。いわゆる昔の人頭税だな。これはその工場がある自治体に払うそうだ」
「だから自治体は工場の誘致とか積極的なんだねー。山根よく知ってるねー」
「まぁな」
なんか稲村と山根が難しい会話をしている。俺と緒方は全然わからなくて首を傾げた。
室内プールは温水プールだった。なかなか快適である。
今日はほぼ水慣れというやつで、ビート板だの、違った形のビート板みたいなのを使って遊んでいた。楽しいは楽しいんだが、女子がいないのが寂しい。男だけでイモ洗い状態はなんだかなぁと思う。
「稲村はあんま焼けてないなー」
「うん、僕昔からあんまり焼けないんだよねー。色素が沈着しないから赤くなるんだー」
「それは痛そうだな」
稲村とぷかぷか浮かんでいる近くに緒方と山根でおり、二人もぷかぷか浮かんでいる。これはこれで楽しいなと思ったのだった。
でもやっぱ水から上がると疲労感みたいなのがあった。やっぱ疲れるんだろうか。
腹減ったーと文句を言いながらもまた観光バスに乗って山の上に戻った。教室でお弁当給食である。がつがつ食べた。
「そろそろ梅雨だな」
「雨はやだなー」
梅雨って何をすればいいんだろう。鳥たちもあんまり飛ばないだろうし。
暖かくなってはきたけど朝晩はまだ冷える。梅雨になったら山って冷えるんじゃないだろうか。
放課後、校舎を出るとピー太がバサバサと飛んできた。ピーコも一緒だったらしい。稲村の胸に飛んできた。
「わわっ、ピーコちゃんだー!」
稲村の顔がデレデレしている。俺も似たような顔をしていると思うので言及はしない。村西が少し離れて歩くのもいつものことだ。
でも村西は村西なりに感謝しているようだった。
タカのユーリやピー太たちががんばってカラスを追いやったから、大分気持ち的に楽だという。先日部屋で改めて礼を言われてしまった。
カラスはみんなが困っている問題だから礼なんて言われることじゃない。村西はけっこう律儀だと思う。
寮に戻ると、嵐山さんがちょうど出てきた。
「あ、大林君たち、おかえりー」
「ただいまです。どうかしたんですか?」
「今年は梅雨入りが早まりそうだから、草むしりをお願いしようかと思ってねー。いろんな部に声をかけにいかないといけないんだ。生物管理部も草むしりはしてね~」
そう言って嵐山さんは坂を下りて行った。
俺は稲村、村西と顔を見合わせた。
「梅雨と草むしりってなんの関係があるんだ?」
ピー太も俺たちを見て、コキャッと首を傾げた。なんだよこれ、かわいいな。
とりあえず部屋に荷物を置き、嵐山さんが戻ってきてから聞いてみることにしたのだった。
で、ホームセンターがある隣町には町営のプールがあるので、そこで水泳の授業を行うそうだ。
なんだその贅沢。
そんなわけで観光バスがやってきて、あれよあれよという間に俺たちは連れていかれた。ちなみにピー太がついてこようとしたが、ユーリが飛んできて行かないように説得してくれたらしい。(なんとなくドッグファイトっぽく見えて冷汗をかいたりした)
最近はユーリともすっかり仲良くなって、ピー太は迷子になるから山からは出してはいけないということを話してあったのが功を奏したみたいだった。
みんな頭いいよな。
「ちゃんと帰ってくるから、見回りよろしくなー」
とピー太に山を頼んで、胸を撫でおろしたのだった。
「大林ってすげーよな」
「え、何が?」
緒方に声をかけられて聞き返す。
「だってあのオカメインコといつも一緒にいるんだろ?」
「ああうん、まぁ……」
確かにそうだなと頷く。
「元飼主ってマジで?」
「うん。俺の名前知ってたし、間違いないと思う」
「すげーなぁ、奇跡じゃん」
「うん、そうだな」
しみじみ同意した。
飼っていた鳥が逃げてしまったという話はたまに聞く。貼り紙とか呼びかけとかをして見つかった例はある。でもこんな年単位で離れていて再び会えるなんて誰が思うだろう。お互いにどこに行くとか伝え合ってもいないのにまた会えたのは、奇跡だと思った。
「目つき悪いけどさー、大林に懐いてる姿はかわいいよなー」
「ピー太はかわいいんだよ」
目つきが悪くなっていようがなんだろうが、ピー太は俺のかわいいピー太だ。あんまり危険なことはしないでほしいなと思う。
「インコバカだ~」
緒方に茶化されたが、自覚はあるからいいのだ。「うっせ」と軽く小突いて小突き返されたけどさ。
観光バスは大きな体育館のような施設に着いた。ここで二時間授業らしい。室内プールだった。
「この町ってけっこうお金あるんだねー」
稲村がぼそりと呟いた。
「確か山の方に工場が二つぐらいあったはずだぞ」
山根が返事をした。なんでそんなこと知ってるんだ。
「えー? でも工場あっても法人税って国に払うんじゃなかったっけー?」
「法人税は国だが、工場などだと他に法人市民税ってものがあるはず。いわゆる昔の人頭税だな。これはその工場がある自治体に払うそうだ」
「だから自治体は工場の誘致とか積極的なんだねー。山根よく知ってるねー」
「まぁな」
なんか稲村と山根が難しい会話をしている。俺と緒方は全然わからなくて首を傾げた。
室内プールは温水プールだった。なかなか快適である。
今日はほぼ水慣れというやつで、ビート板だの、違った形のビート板みたいなのを使って遊んでいた。楽しいは楽しいんだが、女子がいないのが寂しい。男だけでイモ洗い状態はなんだかなぁと思う。
「稲村はあんま焼けてないなー」
「うん、僕昔からあんまり焼けないんだよねー。色素が沈着しないから赤くなるんだー」
「それは痛そうだな」
稲村とぷかぷか浮かんでいる近くに緒方と山根でおり、二人もぷかぷか浮かんでいる。これはこれで楽しいなと思ったのだった。
でもやっぱ水から上がると疲労感みたいなのがあった。やっぱ疲れるんだろうか。
腹減ったーと文句を言いながらもまた観光バスに乗って山の上に戻った。教室でお弁当給食である。がつがつ食べた。
「そろそろ梅雨だな」
「雨はやだなー」
梅雨って何をすればいいんだろう。鳥たちもあんまり飛ばないだろうし。
暖かくなってはきたけど朝晩はまだ冷える。梅雨になったら山って冷えるんじゃないだろうか。
放課後、校舎を出るとピー太がバサバサと飛んできた。ピーコも一緒だったらしい。稲村の胸に飛んできた。
「わわっ、ピーコちゃんだー!」
稲村の顔がデレデレしている。俺も似たような顔をしていると思うので言及はしない。村西が少し離れて歩くのもいつものことだ。
でも村西は村西なりに感謝しているようだった。
タカのユーリやピー太たちががんばってカラスを追いやったから、大分気持ち的に楽だという。先日部屋で改めて礼を言われてしまった。
カラスはみんなが困っている問題だから礼なんて言われることじゃない。村西はけっこう律儀だと思う。
寮に戻ると、嵐山さんがちょうど出てきた。
「あ、大林君たち、おかえりー」
「ただいまです。どうかしたんですか?」
「今年は梅雨入りが早まりそうだから、草むしりをお願いしようかと思ってねー。いろんな部に声をかけにいかないといけないんだ。生物管理部も草むしりはしてね~」
そう言って嵐山さんは坂を下りて行った。
俺は稲村、村西と顔を見合わせた。
「梅雨と草むしりってなんの関係があるんだ?」
ピー太も俺たちを見て、コキャッと首を傾げた。なんだよこれ、かわいいな。
とりあえず部屋に荷物を置き、嵐山さんが戻ってきてから聞いてみることにしたのだった。
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