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33.智紀、テスト結果を確認す
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テストの結果が返された。
何点取れるかとか、正直見当もつかなかった。どうにか埋めたというかんじである。
それほどいい点数とは言えなかったが、赤点は回避したのでよしとしよう。
こっそりガッツポーズをした。
「テストどうだった~?」
授業が終われば稲村がくっついてくる。稲村は元々甘えん坊らしく、最近はくっついてくることが多くなった。俺よりは背が高いのだが(もしかして俺がこの学校で一番チビかもしれない、くそう)、華奢なのであまり気にならない。なんだか弟にまとわりつかれているような感覚である。
「赤点ではない」
「そっかー。僕も赤点は取らなかったよー」
ひらひら振ったテストの点数は95点と書かれていた。頭いいんだな。
昼食時、緒方は蒼褪めていた。
「緒方?」
「……英語がああああああ」
「あー……」
「そっかー……」
山根は無言で食べている。山根は農業管理部だから関係ないのだろう。そういえば農業管理部に入ってて赤点を取ったらどうなるんだろうな?
「山根は?」
「赤点なんて取るわけないだろう。今回は主に中学の復習だぞ」
「ううう……」
緒方が泣きそうになっている。山根が何気にひどい。聞かなきゃよかった。
稲村が、俺が気になったことを聞く。
「もし農業管理部の生徒が赤点取ったらどうなるのー?」
「入ってる時点で内申点は加点だろう? どちらにせよ勉強が本分であることに変わりはない」
「まぁ、それはそうだねー」
「勉強なんか嫌いだー!」
緒方が嘆く。他の一部の生徒も嘆いていたことから、なかなかにカオスだった。
授業が終わって昇降口を出ると、ピー太がバサバサと飛んできて頭の上に留まった。もう俺もさすがに諦めた。頭の上に留まるのが楽なんだろうな。
「トモーノリー!」
「お迎えありがとなー」
腕に移ってもらって寮に向かう。
「ピー太、いつから待ってるんだ? 俺にばっか構わなくてもいいからな?」
ずっと待ってもらっているのは悪いしさ。ピー太はコキャッと首を傾げた。何を言ってるんだ? と言いたそうである。
「ホント、いつから待ってるんだろうねー? 大体の時間を把握してるのかなー?」
稲村と村西も不思議そうだ。寮の入口でピー太とは別れる。たった五分なのだけど、会えるのがとても嬉しい。
別れる時も、ん? って不思議そうに首を傾げてから俺にすりっとして飛んでいくんだよな。ああもうかわいいい!
こんな幸せがあっていいのかと思いながら寮のガラス戸をくぐった。
寮の入口のところに嵐山さんがいたので、気になったことを聞いてみた。
「嵐山さん」
「ん? 大林君たちか。おかえり」
「ただいまです。赤点取らないと田植えって参加できないんですか?」
「え? 参加したいの?」
嵐山さんは目を丸くした。
「どうしてもってわけじゃないんですけど、経験したことないんで……」
「意欲があるのはけっこうだけど、今年はそれなりに赤点取った子たちがいるみたいだから人員は足りてるんじゃないかな。一応聞いてはみるよ」
「足りてるならいいんです。どうしてもってわけじゃないんで」
「そう?」
何が何でも参加したいわけではないので、ダメならダメでよかった。
「そういえばカケスの小屋作りってまだ途中でしたよね?」
「そうだったっけ? 寮の裏手の作業小屋に確か置いてあるはずだから、作業するなら何人かでね。軍手も忘れずに」
「はい、ありがとうございます」
カケスの小屋作りも気になっていたのだ。やっと再開できる。
「あと、鷹匠の一人がタカと一緒にこの山に移住してきたいって言ってるから、今度改めて紹介するね」
「あー……マジでこっちに住むんですか?」
「一緒に住みたかったらしいんだよ。ここならタカものびのびと暮らせるだろう?」
「でも鳥たちが……」
「そこらへんも含めて紹介するから、その時はピー太君たちにも集まってもらうようかな。大丈夫、この山に住むって言ってもタカはペットみたいなものだからね。そこらへんは徹底させてもらうよ」
「ならいいんですけど……」
タカはペットと言っても猛禽類だ。ピー太たちが襲われてしまう危険性は0ではない。本音を言うなら来ないでほしいと思った。
「餌は鷹匠側に用意させるし、顔合わせもさせる。それでも不安なら断るよ。僕もピー太君たちを危険に晒したいわけじゃないから」
「……お願いします」
相手は人間じゃないからどういう挙動をするかはわからない。
タカが来ても平和に暮らせればいいなと思った。
何点取れるかとか、正直見当もつかなかった。どうにか埋めたというかんじである。
それほどいい点数とは言えなかったが、赤点は回避したのでよしとしよう。
こっそりガッツポーズをした。
「テストどうだった~?」
授業が終われば稲村がくっついてくる。稲村は元々甘えん坊らしく、最近はくっついてくることが多くなった。俺よりは背が高いのだが(もしかして俺がこの学校で一番チビかもしれない、くそう)、華奢なのであまり気にならない。なんだか弟にまとわりつかれているような感覚である。
「赤点ではない」
「そっかー。僕も赤点は取らなかったよー」
ひらひら振ったテストの点数は95点と書かれていた。頭いいんだな。
昼食時、緒方は蒼褪めていた。
「緒方?」
「……英語がああああああ」
「あー……」
「そっかー……」
山根は無言で食べている。山根は農業管理部だから関係ないのだろう。そういえば農業管理部に入ってて赤点を取ったらどうなるんだろうな?
「山根は?」
「赤点なんて取るわけないだろう。今回は主に中学の復習だぞ」
「ううう……」
緒方が泣きそうになっている。山根が何気にひどい。聞かなきゃよかった。
稲村が、俺が気になったことを聞く。
「もし農業管理部の生徒が赤点取ったらどうなるのー?」
「入ってる時点で内申点は加点だろう? どちらにせよ勉強が本分であることに変わりはない」
「まぁ、それはそうだねー」
「勉強なんか嫌いだー!」
緒方が嘆く。他の一部の生徒も嘆いていたことから、なかなかにカオスだった。
授業が終わって昇降口を出ると、ピー太がバサバサと飛んできて頭の上に留まった。もう俺もさすがに諦めた。頭の上に留まるのが楽なんだろうな。
「トモーノリー!」
「お迎えありがとなー」
腕に移ってもらって寮に向かう。
「ピー太、いつから待ってるんだ? 俺にばっか構わなくてもいいからな?」
ずっと待ってもらっているのは悪いしさ。ピー太はコキャッと首を傾げた。何を言ってるんだ? と言いたそうである。
「ホント、いつから待ってるんだろうねー? 大体の時間を把握してるのかなー?」
稲村と村西も不思議そうだ。寮の入口でピー太とは別れる。たった五分なのだけど、会えるのがとても嬉しい。
別れる時も、ん? って不思議そうに首を傾げてから俺にすりっとして飛んでいくんだよな。ああもうかわいいい!
こんな幸せがあっていいのかと思いながら寮のガラス戸をくぐった。
寮の入口のところに嵐山さんがいたので、気になったことを聞いてみた。
「嵐山さん」
「ん? 大林君たちか。おかえり」
「ただいまです。赤点取らないと田植えって参加できないんですか?」
「え? 参加したいの?」
嵐山さんは目を丸くした。
「どうしてもってわけじゃないんですけど、経験したことないんで……」
「意欲があるのはけっこうだけど、今年はそれなりに赤点取った子たちがいるみたいだから人員は足りてるんじゃないかな。一応聞いてはみるよ」
「足りてるならいいんです。どうしてもってわけじゃないんで」
「そう?」
何が何でも参加したいわけではないので、ダメならダメでよかった。
「そういえばカケスの小屋作りってまだ途中でしたよね?」
「そうだったっけ? 寮の裏手の作業小屋に確か置いてあるはずだから、作業するなら何人かでね。軍手も忘れずに」
「はい、ありがとうございます」
カケスの小屋作りも気になっていたのだ。やっと再開できる。
「あと、鷹匠の一人がタカと一緒にこの山に移住してきたいって言ってるから、今度改めて紹介するね」
「あー……マジでこっちに住むんですか?」
「一緒に住みたかったらしいんだよ。ここならタカものびのびと暮らせるだろう?」
「でも鳥たちが……」
「そこらへんも含めて紹介するから、その時はピー太君たちにも集まってもらうようかな。大丈夫、この山に住むって言ってもタカはペットみたいなものだからね。そこらへんは徹底させてもらうよ」
「ならいいんですけど……」
タカはペットと言っても猛禽類だ。ピー太たちが襲われてしまう危険性は0ではない。本音を言うなら来ないでほしいと思った。
「餌は鷹匠側に用意させるし、顔合わせもさせる。それでも不安なら断るよ。僕もピー太君たちを危険に晒したいわけじゃないから」
「……お願いします」
相手は人間じゃないからどういう挙動をするかはわからない。
タカが来ても平和に暮らせればいいなと思った。
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