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32.智紀、中間テストを受ける

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 田植えか、と思ったけどその前に中間テストである。

「トモーノリー、トモーノリー!」

 ピー太がかまえとばかりに部屋にやってくるのだが、どれぐらい勉強すれば点数が取れるのかがわからないから問題集にかじりついていた。ピー太はしかたないと思ったらしく、俺の頭の上でジタジタやってた。そのうちハゲそうで困る。
 爪が伸びてて痛いのだ。

「お邪魔するよー」

 稲村がお菓子を持ってやってきた。ホント、いい奴だよな。

「あ、ピー太君だ~。トモ君いいなー」
「俺は勉強しないとやヴぁいんだが……」
「やヴぁいって自分でわかってて勉強するってすごいよねー」
「稲村はしないのか?」
「大体ポイントは押さえたから大丈夫かなって。また戻ってからやるよー」
「すげえな……」

 正直どこがポイントなのかわからん。だからテスト範囲の問題集をしらみつぶしにやるかんじだ。
 この問題集は嵐山さんからもらったものである。寮監に言えばもらえると担任に聞いたのでさっそくもらってきた。嵐山さんには「大林君は真面目だね」と言われた。
 別に真面目なわけじゃない。でもなにがなんでも三年間はピー太の側にいるんだと思ったら、学業もおろそかにしてはいけないと思ったのだ。(実際成績が振るわなかったら上海に来るように言われている。それは困る)

「うー……」

 それにしても暗記系は苦手だ。

「なんか覚えられたか覚えられてないかわかんねーんだよな……」
「そーゆーのってあるよねー。電波が届けば問題とかもスマホで調べられるのにー」

 稲村が言う。そうなのだ。スマホの使用は校舎の中以外は自由とはいえ、山の中なのか電波がない。だから自由なんだろうな。校舎にはパソコンルームもある。校舎の側でならスマホの電波も多少は入るんだが、そこらへんは絶妙だと思った。
 でも部活で使ってるGPSは位置情報がわかるって意味がわからんのだが。使ってる電波が違うんだろうか。(そこらへんは全くわからない)

「わざわざ下に下りてまでスマホ使わないよなぁ」
「そうなんだよね。部屋にある電話は内線だしねー」

 呼び出し用なんだか部屋に電話はある。だから稲村から部屋に行っていい? とかよくかかってくる。そこらへんは便利だ。
 家に電話とかしようと思ったら、寮の入口にある灰色の電話機を使用するか、校舎の側まで移動してスマホを使うしかない。
 電話といえば二回ぐらい国際電話が寮にかかってきた。寮の受付でしか電話は受けられないから(俺のスマホは国際電話は対応してないし、寮の中ではそもそも電波がないから受けられない)、あの時は呼び出しがあってからダッシュで受付へ向かった。

「中国からの電話は高いんだぞ!」

 父さんに怒られた。理不尽である。

「……受付でしか受けられないからかけてこなくていいよ」
「なんて薄情なことを言うんだ!」

 今度は嘆かれた。すこぶる面倒くさい。やっぱり離れて正解だと思った。

「山の上の学校だなんて、退屈だろう!」
「え? そんなことないよ。ピー太もいるし」
「ピー太?」
「うん、父さんが逃がしちゃったオカメインコが山にいてさー。奇跡だろ?」
「そんなことが……オカメインコ違いじゃないのか! それ以前になんで山にオカメインコがいるんだ? 誰かが飼ってるのか?」
「山の中に住んでるし、俺の名前も呼んだよ。つーかオカメインコ違いってなんだよ。奇跡が起きたんだよ。つーわけで楽しく暮らしてるから安心してくれ」

 そう言って電話を切った。本気で面倒くさい。

「……メールかなんかしてあげたらどうだい?」

 嵐山さんに言われてしまった。

「毎日のようにメール来るんですけどね」

 ピー太のことは言ってなかったなと今頃になって思った。ちなみに毎日メールをくれるのは弟である。基本的に学校の愚痴と、言葉の壁についてだ。しょうがないだろ、わかってて行ったんだろうに。中国語の発音難しすぎ! とか文句が多い。
 海外は海外で楽しいんだろうけど、俺はピー太だけじゃなくて友達がいるこっちがいいやと思ったのだった。
 話を戻そう。
 中間テストに向けての勉強である。
 初めての定期テストはよくわからないまでも、ピー太に妨害されたりといろいろあったがどうにか終わった。

「あー……」
「終ったー……」

 昼食は寮で食べろとのことだ。歩いて5分だから助かる。上りだけど。
 テストは月、火曜日だった。テスト返却はもう明日からあるらしい。鬼か。
 で、田植えは今度の土日だそうだ。うん、鬼だな。

「赤点だったらどうする?」
「田植え参加した方がいいよねー」
「……赤点はないんじゃないか?」

 稲村、村西としゃべりながら寮に戻ったのだった。
 え? ピー太は朝見送りしてくれたぞ。
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