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28.智紀、友達たちと過ごす

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 すっきりさっぱりして、大浴場を出、Tシャツと短パンに着替えたところで運動部の生徒たちがどやどやと入ってきた。

「え? 稲村来てたのかー? もっと早く来ればよかったよ」
「は?」

 同じクラスの奴に声をかけられて、稲村が冷たい声を発した。

「トモ君、ムラ君、早くいこー」
「あ、ああ……」

 村西はうちのクラスの奴を一瞥した。俺は稲村に腕を掴まれて脱衣所を出た。
 三人で部屋に戻る。

「……稲村、ああいうことは多いのか?」
「んー、まぁね……」

 村西と稲村がなんかわかりあっている気がする。俺は二人を見たけど、教えてはくれなさそうだった。なんか疎外感を覚えたけど、聞いてはいけなさそうな雰囲気だったので聞かなかったフリをした。
 ここに来てからこういうことがままある。でもなんだか触れてはいけない気がした。
 今夜は一緒に過ごすから話す気があれば話してくれるだろう。
 夕飯を食べて部屋に戻ったら、もう暗くなっていた。そういえばカーテンを閉めていなかったなと思ってカーテンを閉めようとしたら、窓をコツコツと叩くような音がした。

「え?」

 部屋の中が明るくてよく見えなかったけど、フクロウが来ていた。

「あ、あれ? フクロウさん?」
「開けていいぞ」

 村西が先に言ってくれたので慌てて窓を開けた。

「こんばんは?」

 ホーとフクロウは鳴いた。プラスチックの小さいコップに水を入れて出したらフクロウは飲みづらそうに飲んでくれた。
 ホーと鳴き、くるんっと首を回してからフクロウはバサバサッと羽ばたいて林の方へ戻って行った。

「ど、どうしたんだろ……」
「ピー太君てけっこう心配性だよねー」

 稲村がやっと笑顔になった。なんでここでピー太が出て来るんだ?

「ピー太? 心配性?」
「ピー太が大林のことを気にしてフクロウに声をかけたんじゃないか?」
「えええ?」

 俺なんかよりピー太の方がよっぽど心配だけどな。カラスもそれなりに増えてるみたいだって生徒会長の藤沢先輩も言ってたし。

「ピー太たちの方が心配だけど。カラス増えてるって聞いてるし」
「確かに、増えすぎは問題だな」
「カラスって森とか林の方が暮らしにくいから町にいるんでしょ? 下の町とかで増えたのがこっちまで来てるってことは相当問題なんじゃないの?」

 村西と稲村が頷く。

「つっても……どうしたらいいんだろうな」

 カラス対策とかって一朝一夕でどうにかなることじゃないと思うんだ。
 夕飯を食べてから、稲村は一旦部屋に戻った。

「あー、戻りたくないー。部屋戻ってるといいけど……」

 ため息をつきながらそんなことを言っていた。村西を見ると、首を振られた。個人的なことだから聞くなということらしい。
 知らないこと、けっこう多いけどそれはしょうがない。
 嵐山さんが点呼を取りに来たので、ついでにカラスのことを聞いてみた。

「あー、そうなんだよねぇ。追い払うぐらいしか対策はないんだけど、また知り合いの鷹匠に頼んでみるかなー」
「鷹匠?」
「タカはカラスの天敵だからね。飛んでいる場所は避けるんだよ」
「でもそれって、他の小鳥とかも怯えませんか?」
「飛ばしてる間は小屋とかに入っててもらうしかないかな。でも三年前ぐらいにも一度飛ばしてもらったんだよね。その時は一日小屋から出ないでねーって言って餌をいっぱい小屋に入れてきたんだ。タカに捕まったら困るし」
「餌があれば確かに……」

 あまり小屋から出たりはしないかも。タカは肉食だろうから小鳥の餌には見向きもしないだろうし。

「ちょっと当たってみるよ」
「お願いします」

 追い払うのが根本的な解決にならないということぐらいわかっている。だからといって勝手に駆除はできないし、自治体に相談したところですぐに対策はできないだろう。この山の範囲だけでもタカが飛んでいればカラスは逃げるかもしれない。
 でも鷹匠を呼ぶって、けっこう金かかりそうだなと思った。


 嵐山さんが階段を上っていってから少しして、稲村が戻ってきた。

「お邪魔します」
「入れ入れ」

 嵐山さんが戻ってきたら困るので急いで部屋に入れた。
 稲村にぎゅっとくっつかれた。

「? 稲村?」
「はー……トモ君てば癒される~。もうちょっとだけくっついてていい?」
「? まぁいいけど?」

 なんか嫌なことでもあったのかな?
 村西を見やると、村西は肩をすくめた。
 なんかいろいろ聞きたいことはあったのだが、稲村が参っているみたいだから聞かないことにした。
 まだGWは続くしな。
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