野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~

浅葱

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27.智紀、大浴場へ行く

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「いやー、びっくりしたよー……今までこんな目に遭ったことなかったからさ……」

 嵐山さんがはーっとため息をついた。
 カラスはさすがに怖いなと俺も思う。

「今までなかったんですか?」

 村西が顔を引きつらせながら、意外そうに聞いた。

「うん、まぁたまたまだろうけどね」
「……ここというより、この辺りにカラスが増えていることは確認しています」

 藤沢先輩がそう言って眼鏡の真ん中の部分をクイッと指で押し上げた。

「やっぱりそうなのか。困ったね」

 嵐山さんはため息をついた。
 ピー太は俺の腕に戻ってきたけど、カケスたちも近くの木の上に四羽ぐらい留まっている。ピィピィチィチィとかなり鳴き声がするなーと思っていたら、他の木の上ではスズメが留まっているし、セキセイインコたちも近くにいた。
 ピピーッとピーコが飛んできて稲村の胸に留まった。

「わわっ! ピーコちゃんだ~」

 稲村大喜びである。
 藤沢先輩はじっとピー太を見ている。

「け、けっこう鳥いますね……」
「そうだな」

 藤沢先輩はぐるりと周りを見回した。するとカケスが一羽バサバサと飛んできて、藤沢先輩の頭に留まった。

「えっ!?」
「あっ、えっ?」
「トモヤ、カケスが留まったけどどうする? 追いやった方がいいかな」

 河野先輩もどうするか決めかねているみたいだ。さすがに追いやるのはどうかと思ったのだろう。でもカケスって意外と大きいな。
 カケスは藤沢先輩の頭の上を少し歩くと、ジェーと鳴いた。

「もしかして、君たちも小屋がほしい、とか?」

 嵐山さんがおそるおそる聞く。
 ジェジェッ! とカケスが返事をした。

「えー……いいけど何羽いるのかな? スズメみたいにおっきいのを一個作ればいいかなー?」
「え? スズメの小屋もあるんですか?」
「うん、作ったよ。おっきめなのを一個ね。中でもちゃもちゃしてるみたいだよ」
「うわ、見たいー」

 稲村がはしゃぐ。
 ってことでスズメの小屋も見せてもらったりした。
 林から出て、カラスが近くにいないことを確認してから嵐山さんがスマホを出した。

「うーん、今日は森林管理部は休みかな。もし越野君を見かけたら聞いておいてくれる?」
「はーい」

 返事をして、今日のところは部屋に戻った。ピー太は見回りに向かうらしく、俺たちの部屋までは来なかった。
 汗もかいたしシャワーでも浴びようかなと思っていたら、部屋をノックする音がした。

「はーい?」
「トモ君、ムラ君~」

 情けない声がした。稲村だった。

「? どうしたんだ?」
「ごめん、今日は置いてもらってもいーい……?」

 おそるおそるというように部屋の中を見た稲村は、俺たちを見るとほっとしたような顔をした。

「ああいいぞ。まだ時間は早いけど、いいだろ?」
「ああ、俺はかまわない」

 村西も同意してくれたことで、稲村は明日の朝までここにいることになった。でも点呼の時間は一旦戻るという。確かに、点呼時に部屋にいないと問題だもんな。
 稲村には俺のところに座っててもらうことにした。ベッドに転がっててもいいと伝える。

「え? どっか行くの?」
「シャワー浴びようかと思って」
「えー? だったらみんなで大浴場行こうよー」

 村西と顔を見合わせた。たまにはいいかと行くことにする。稲村は着替えも持ってきていた。準備がいいなと思った。
 大浴場は休日は三時ぐらいから開いている。そんな時間に湯を入れたら夜には冷たくなってしまいそうだが、運動部やアウトドア系の部活がガヤガヤと入って湯を汚したら抜いて入れ替えることになっているのだ。俺たち三人だけなら湯もそんなに汚さないだろうから入れ替える必要はないだろう。
 ちなみにここの水は全部山の湧き水などで補っているらしい。そんなに湧き水って出るもんなのかな?
 ちなみにこの学校にプールはない。プールは下の町にもなく、ホームセンターがある町まで行かないと入れない。
(下の町の小学校にはプールがあるところもあるらしい)

「おお、貸し切りだ~」

 湯は張ってあるけど誰もいなかった。

「三人でこれぐらい広いところに入れるといいよね~。トモ君とムラ君が一緒に来てくれてよかったー」
「? 一人でも来れるんじゃないか?」

 稲村は首を振った。

「トモ君て一人で大浴場来たことある?」
「ん?」

 ここに来てからのことを考える。村西とは何度か来たが、一人の時は基本シャワールームを使っているぐらいだ。そういえばそうした方がいいようなことを村西に言われていた。

「そういえば、ないな」
「そーゆーこと」

 何がそういうことなのかはわからなかったが、三人で浸かった湯はなかなか気持ちよかった。
 そういえばオカメインコって湯に浸かったりするんだろうか。さすがに茹で鳥になってしまうかと考える。
 頭の上にタオルを置いたオカメインコを想像する。頭のピン! と跳ねたところがなくなりそうだなと思った。
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