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23.ピー太、人違いをする
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オレサマがこの山の上に暮らすようになってから季節がいくつも過ぎた。
暑い季節が終わり、過ごしやすい季節になり、今度はとんでもなく寒くなり、それからまた暖かかくなってと、なかなかに目まぐるしい。
寒い季節になる前にリョウカンが小屋を作ってくれたから、どうにか暖かい季節まで生き延びることができた。
あのリョウカンはえらい。
それでも寒い季節を越せなかった物がいたこともまた確かだった。
暖かくなってくると、シンニュウセイとやらがわらわらと学校にやってくる。
一度に大勢やってくる時もあれば、一人ずつ時間差でやってくることもある。
今回も沢山来たものだと眺めていた時、なんとなく元の飼主を思わせる後ろ姿を見かけた。
まさか、と思った。
ここはきっと飼主が暮らしていた町よりも遠い。オレサマはこの山まで何日もかけて飛んできたのだ。
それでももし元飼主に会えたならと思ってはいた。
「ピータ、ピータ、ピーッ! ピーッ!」
とその後ろ姿に向かって声をかけた。
「え?」
振り向いたその姿は、なんとなく似ていたが違っていた。
そのまま飛んでいてもしょうがないので、オレサマはその者の頭の上に留まった。
「えーっと……君はピータ君というのかな?」
「ピータ!」
しょうがないのでとりあえず名乗った。
「そうか。僕は、藤沢智也(ふじさわともや)という」
「ピー、トモー?」
「うん、智也だ」
名前が似ている気がするがやっぱり違うみたいだ。
「トモー、ノリー?」
「違うよ。智也という」
「ピータ、ピーッ!」
残念だった。オレサマはその者の頭から飛び立った。
それからも何度かその者の姿は見かけた。やっぱり後ろ姿は似ていたから、オレサマは忘れられずに何度か声をかけた。
けれどやっぱりそれは元飼主ではなかった。
「もしかしたら、僕の姿がトモノリという子と似ているのかな?」
さすがにその者も気付いたらしい。だからといって何ができるわけでもない。
そのうちその者の背もぐんぐん伸びて、トモノリとは似ても似つかなくなった。
オレサマのトモノリは今頃どうしているだろう。元気で過ごしてくれているといい。
オレサマは遠く離れたところに来てしまった。トモノリに生きていると知らせることもできない。
できれば泣かないでいてほしかった。
それからまた季節が何度か巡り、オレサマはとうとうトモノリと再会したのである。
なんという偶然であろうか。オレサマがトモノリのことばかり考えていたからかもしれない。
うむ、オレサマが望んだからそれがトモノリに伝わったに違いない。やはりオレサマとトモノリは相思相愛である。
「こほん、私も生物管理部に入れてもらえないだろうか」
背がぐんぐん伸びてしまったトモヤがトモノリに頼んだ。
「え? 生徒会長って忙しいんじゃ……」
「私が在籍すればいろいろ便宜をはかってやることもできるのだが……」
「えええ……」
トモノリは何故か渋った。そういうところがトモノリのいいところである。
「便宜って、どうはかってくれるんですかー?」
トモノリの友人だとかいうイナが間に入った。
「今年度の予算の増額はさすがに無理だが、何か貸出の許可が必要なら私に声をかけてくれればいい」
「確かにそれは便利かも。どうするー?」
「うーん? 別に交換条件とかいらなくないか? 入りたければ入ってくれればいいし。人数多い方が作業も捗るだろ?」
トモノリはあっけらかんと言った。
「君、面白いね。僕も入ろうかな」
一緒に付いて来ていた胡散臭い者が言う。
「かまいませんけど、けっこう肉体労働ですよ?」
「それは楽しそうだね」
「河野も入るのか?」
「うん、よかったら入れて?」
「いいですよ。でも生徒会長と副会長が入るなんて、不思議ですね」
トモノリは無邪気に言う。オレサマはトモヤともう一人を眺めた。トモヤは純粋にオレサマたちのことを考えているようだが、もう一人はトモヤを気にしているらしい。トモノリに興味はなさそうだった。
「そうかな。これからよろしくねー」
「よろしくお願いします」
まぁオレサマのトモノリに危害を加えたりするのでなければいいだろうと、オレサマはトモヤを熱く見つめる視線には気づかなかったフリをしたのだった。
ーーーーー
ピー太、察しがよくできるオスです。
あんまり目はよくないみたいです。
暑い季節が終わり、過ごしやすい季節になり、今度はとんでもなく寒くなり、それからまた暖かかくなってと、なかなかに目まぐるしい。
寒い季節になる前にリョウカンが小屋を作ってくれたから、どうにか暖かい季節まで生き延びることができた。
あのリョウカンはえらい。
それでも寒い季節を越せなかった物がいたこともまた確かだった。
暖かくなってくると、シンニュウセイとやらがわらわらと学校にやってくる。
一度に大勢やってくる時もあれば、一人ずつ時間差でやってくることもある。
今回も沢山来たものだと眺めていた時、なんとなく元の飼主を思わせる後ろ姿を見かけた。
まさか、と思った。
ここはきっと飼主が暮らしていた町よりも遠い。オレサマはこの山まで何日もかけて飛んできたのだ。
それでももし元飼主に会えたならと思ってはいた。
「ピータ、ピータ、ピーッ! ピーッ!」
とその後ろ姿に向かって声をかけた。
「え?」
振り向いたその姿は、なんとなく似ていたが違っていた。
そのまま飛んでいてもしょうがないので、オレサマはその者の頭の上に留まった。
「えーっと……君はピータ君というのかな?」
「ピータ!」
しょうがないのでとりあえず名乗った。
「そうか。僕は、藤沢智也(ふじさわともや)という」
「ピー、トモー?」
「うん、智也だ」
名前が似ている気がするがやっぱり違うみたいだ。
「トモー、ノリー?」
「違うよ。智也という」
「ピータ、ピーッ!」
残念だった。オレサマはその者の頭から飛び立った。
それからも何度かその者の姿は見かけた。やっぱり後ろ姿は似ていたから、オレサマは忘れられずに何度か声をかけた。
けれどやっぱりそれは元飼主ではなかった。
「もしかしたら、僕の姿がトモノリという子と似ているのかな?」
さすがにその者も気付いたらしい。だからといって何ができるわけでもない。
そのうちその者の背もぐんぐん伸びて、トモノリとは似ても似つかなくなった。
オレサマのトモノリは今頃どうしているだろう。元気で過ごしてくれているといい。
オレサマは遠く離れたところに来てしまった。トモノリに生きていると知らせることもできない。
できれば泣かないでいてほしかった。
それからまた季節が何度か巡り、オレサマはとうとうトモノリと再会したのである。
なんという偶然であろうか。オレサマがトモノリのことばかり考えていたからかもしれない。
うむ、オレサマが望んだからそれがトモノリに伝わったに違いない。やはりオレサマとトモノリは相思相愛である。
「こほん、私も生物管理部に入れてもらえないだろうか」
背がぐんぐん伸びてしまったトモヤがトモノリに頼んだ。
「え? 生徒会長って忙しいんじゃ……」
「私が在籍すればいろいろ便宜をはかってやることもできるのだが……」
「えええ……」
トモノリは何故か渋った。そういうところがトモノリのいいところである。
「便宜って、どうはかってくれるんですかー?」
トモノリの友人だとかいうイナが間に入った。
「今年度の予算の増額はさすがに無理だが、何か貸出の許可が必要なら私に声をかけてくれればいい」
「確かにそれは便利かも。どうするー?」
「うーん? 別に交換条件とかいらなくないか? 入りたければ入ってくれればいいし。人数多い方が作業も捗るだろ?」
トモノリはあっけらかんと言った。
「君、面白いね。僕も入ろうかな」
一緒に付いて来ていた胡散臭い者が言う。
「かまいませんけど、けっこう肉体労働ですよ?」
「それは楽しそうだね」
「河野も入るのか?」
「うん、よかったら入れて?」
「いいですよ。でも生徒会長と副会長が入るなんて、不思議ですね」
トモノリは無邪気に言う。オレサマはトモヤともう一人を眺めた。トモヤは純粋にオレサマたちのことを考えているようだが、もう一人はトモヤを気にしているらしい。トモノリに興味はなさそうだった。
「そうかな。これからよろしくねー」
「よろしくお願いします」
まぁオレサマのトモノリに危害を加えたりするのでなければいいだろうと、オレサマはトモヤを熱く見つめる視線には気づかなかったフリをしたのだった。
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ピー太、察しがよくできるオスです。
あんまり目はよくないみたいです。
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