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22.智紀、GW中の活動を相談す
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ゴールデンウィークって、5月3日から5日の三日間のことなんだろうけど、今年は6日が土曜日だから五連休になる。
でも寮にいたらそんなにそんなにやることはないと思うんだよな。
とはいえ生物管理部なのでGW中もずっとだらだら過ごして終わるわけはないだろう。林の中の見回りもあるし。
「GW中? どう活動するか考えようか~」
放課後、帰ってきてから嵐山さんに聞いたら、急きょ四階に集まることになった。先輩たちがぜえはあしている。
「よ、四階は……」
「きつい……」
「……つらい……」
「もっと体力をつけた方がいいんじゃないかな?」
嵐山さんが苦笑していた。
確か先輩たちの部屋は二階と三階だったはずだ。そこから一、二階上がるだけなのに何がしんどいんだろうとか思ってしまう。さすがに四階分を一気に上ったら疲れるだろうけどさ。
そんな疑問が顔に出ていたのか、
「僕たちは……」
「体力が……」
「……ないんだ……」
全然えばれないよ先輩方。
つーか息は荒いけど発言は相変わらず息ぴったりである。意味がわからない。
「これから体力つけていこうね。よくこの学校にいて体力つかないままでいられるよねー」
嵐山さんが笑う。まぁ寮内は至れり尽くせりな環境だから、ぶっちゃけ飯の時間以外は同じフロアから出なくても暮らせたりする。
大浴場は一階にしかないのだけど、シャワー室は各階にあったりする。一応シャワー室には鍵がかかるようになっているので安全だよと初日に教えてもらった。男だけなのになんで鍵? と思ったけど「男しかいないからね!」と嵐山さんははっはっはー! と笑ってごまかしていた。
村西を見たらサッと目を逸らしたからわかっているのかもしれない。そこらへんもGW中に追及しようと思う。
さてそんな寮内事情はともかく、GW中の割り振りである。先輩方は3,4,5日で実家に帰るらしい。全員が二泊三日不在するわけではなく一泊二日がずれるかんじのようだ。林の見回りは三人でしてもらうことになっているから、三人揃ってからの方がいいだろう。
というわけで俺たち三人と嵐山さんで3,4,5日は見回りをすることが決まった。6,7日に関しては先輩たちが戻ってきてから応相談である。
なにせうちの先輩方は体力ないし。
「そういえば先輩たちって、ピー太たちに何をどう助けてもらったんです?」
「カツアゲ……」
「からかい……」
「……同じく……」
「えええええ」
金子先輩はカツアゲに遭いそうになり、小原先輩は眼鏡を取られて周りが見えなくなってパニックを起こし、益子先輩は前髪を無理矢理切られそうになったとか。
カツアゲもこわいけど、眼鏡取るとか前髪切ろうとするとか犯罪じゃん。
眼鏡ないと見えないから眼鏡してるわけだし。前髪だって勝手に切ろうとしちゃいけないだろう。
「……それはひどいですね」
「ピー太君たちが……」
「つつき回して……」
「……助けてくれたから……」
「「「がんばります……」」」
とうとうハモッた。
嵐山さんは腹を抱えて笑っていた。気持ちはわかるけど失礼だなぁ。村西も笑ってんじゃねえよ。
「この学校、いじめ問題には敏感って口コミに書いてありましたけど、けっこう治安悪いんですか?」
嵐山さんは胸を押さえた。
「おおう……直球だね……」
理事長なんだからそこらへんの説明はしっかりしてくれないと困る。
入ったはいいけどひどい目に遭いましたじゃなんの為に来たのかわからない。
「うーん、まぁどうしても周りに何もない男子校だからね。鬱屈が溜まる生徒もいるんだよ。大体は僕たち職員が目を光らせて対処してるんだけど、それでも問題が0とはいえないなぁ。ごめんね」
嵐山さんはそう言って先輩たちに手を合わせた。先輩たちは慌てる。
「ただ、4,5年前にピー太君がここに来てからは未遂で終わることが多くなったんだよ。本来被害が出てからじゃ遅いしね。だからピー太君たちの為に何かしたかったのは本当」
体よく押し付けられた感がしないでもないが、俺自身ピー太とはできるだけかかわりたいからいいかと思った。
稲村がにっこりした。
「じゃあ嵐山さん。部費をいただけなかった分は嵐山さんのポケットマネーでお願いしますね? 僕たちは十分努力しましたからね?」
目が笑ってないよー。稲村がこわいよー。
「う、うん……わかったー」
というわけで、今年度の部の予算はどうにかなりそうだとほっとした。
安心して部屋に戻ると、また窓の外にピー太がいた。
「開けていいぞ」
俺が許可を取る前に村西がそう言ってくれた。村西にも甘えてばっかだな。
「ありがとう」
窓を開ければピー太が入ってきた。
「トモー、ノリー、ドコー? ドコー!」
頭の上に留まってジタジタされる。
「ごめんごめん。また部活だったんだ。もう少ししたらもっと一緒にいられるからなー」
頭に手を乗せると腕にトットッと移動する。顔の前に持ってきたら鼻を甘噛みするようにかじかじされた。
俺の家にいた頃より格段に目つきは鋭くなってるけど、拗ねてるピー太はかわいいなと思ったのだった。
ーーーーー
注:危ないので智紀の真似はしないでください。鳥の嘴、けっこう痛いです(汗
でも寮にいたらそんなにそんなにやることはないと思うんだよな。
とはいえ生物管理部なのでGW中もずっとだらだら過ごして終わるわけはないだろう。林の中の見回りもあるし。
「GW中? どう活動するか考えようか~」
放課後、帰ってきてから嵐山さんに聞いたら、急きょ四階に集まることになった。先輩たちがぜえはあしている。
「よ、四階は……」
「きつい……」
「……つらい……」
「もっと体力をつけた方がいいんじゃないかな?」
嵐山さんが苦笑していた。
確か先輩たちの部屋は二階と三階だったはずだ。そこから一、二階上がるだけなのに何がしんどいんだろうとか思ってしまう。さすがに四階分を一気に上ったら疲れるだろうけどさ。
そんな疑問が顔に出ていたのか、
「僕たちは……」
「体力が……」
「……ないんだ……」
全然えばれないよ先輩方。
つーか息は荒いけど発言は相変わらず息ぴったりである。意味がわからない。
「これから体力つけていこうね。よくこの学校にいて体力つかないままでいられるよねー」
嵐山さんが笑う。まぁ寮内は至れり尽くせりな環境だから、ぶっちゃけ飯の時間以外は同じフロアから出なくても暮らせたりする。
大浴場は一階にしかないのだけど、シャワー室は各階にあったりする。一応シャワー室には鍵がかかるようになっているので安全だよと初日に教えてもらった。男だけなのになんで鍵? と思ったけど「男しかいないからね!」と嵐山さんははっはっはー! と笑ってごまかしていた。
村西を見たらサッと目を逸らしたからわかっているのかもしれない。そこらへんもGW中に追及しようと思う。
さてそんな寮内事情はともかく、GW中の割り振りである。先輩方は3,4,5日で実家に帰るらしい。全員が二泊三日不在するわけではなく一泊二日がずれるかんじのようだ。林の見回りは三人でしてもらうことになっているから、三人揃ってからの方がいいだろう。
というわけで俺たち三人と嵐山さんで3,4,5日は見回りをすることが決まった。6,7日に関しては先輩たちが戻ってきてから応相談である。
なにせうちの先輩方は体力ないし。
「そういえば先輩たちって、ピー太たちに何をどう助けてもらったんです?」
「カツアゲ……」
「からかい……」
「……同じく……」
「えええええ」
金子先輩はカツアゲに遭いそうになり、小原先輩は眼鏡を取られて周りが見えなくなってパニックを起こし、益子先輩は前髪を無理矢理切られそうになったとか。
カツアゲもこわいけど、眼鏡取るとか前髪切ろうとするとか犯罪じゃん。
眼鏡ないと見えないから眼鏡してるわけだし。前髪だって勝手に切ろうとしちゃいけないだろう。
「……それはひどいですね」
「ピー太君たちが……」
「つつき回して……」
「……助けてくれたから……」
「「「がんばります……」」」
とうとうハモッた。
嵐山さんは腹を抱えて笑っていた。気持ちはわかるけど失礼だなぁ。村西も笑ってんじゃねえよ。
「この学校、いじめ問題には敏感って口コミに書いてありましたけど、けっこう治安悪いんですか?」
嵐山さんは胸を押さえた。
「おおう……直球だね……」
理事長なんだからそこらへんの説明はしっかりしてくれないと困る。
入ったはいいけどひどい目に遭いましたじゃなんの為に来たのかわからない。
「うーん、まぁどうしても周りに何もない男子校だからね。鬱屈が溜まる生徒もいるんだよ。大体は僕たち職員が目を光らせて対処してるんだけど、それでも問題が0とはいえないなぁ。ごめんね」
嵐山さんはそう言って先輩たちに手を合わせた。先輩たちは慌てる。
「ただ、4,5年前にピー太君がここに来てからは未遂で終わることが多くなったんだよ。本来被害が出てからじゃ遅いしね。だからピー太君たちの為に何かしたかったのは本当」
体よく押し付けられた感がしないでもないが、俺自身ピー太とはできるだけかかわりたいからいいかと思った。
稲村がにっこりした。
「じゃあ嵐山さん。部費をいただけなかった分は嵐山さんのポケットマネーでお願いしますね? 僕たちは十分努力しましたからね?」
目が笑ってないよー。稲村がこわいよー。
「う、うん……わかったー」
というわけで、今年度の部の予算はどうにかなりそうだとほっとした。
安心して部屋に戻ると、また窓の外にピー太がいた。
「開けていいぞ」
俺が許可を取る前に村西がそう言ってくれた。村西にも甘えてばっかだな。
「ありがとう」
窓を開ければピー太が入ってきた。
「トモー、ノリー、ドコー? ドコー!」
頭の上に留まってジタジタされる。
「ごめんごめん。また部活だったんだ。もう少ししたらもっと一緒にいられるからなー」
頭に手を乗せると腕にトットッと移動する。顔の前に持ってきたら鼻を甘噛みするようにかじかじされた。
俺の家にいた頃より格段に目つきは鋭くなってるけど、拗ねてるピー太はかわいいなと思ったのだった。
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注:危ないので智紀の真似はしないでください。鳥の嘴、けっこう痛いです(汗
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