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19.智紀、生徒会長に会う
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「部の発足も無事できたみたいだから、僕は戻るね~。みんながんばってー」
嵐山さんはそう言うと、踵を返した。
生徒会室の前である。
「えええええ」
いきなり知らない先輩に、書類を見もしないで部費の申請の却下されたのにそのまま帰るとか何事?
「失礼ですが、却下の理由をお聞かせ願いますか?」
稲村は諦めなかった。細っこいしどちらかといえば頼りない印象がある稲村だけど、その時の目は厳しかった。
「……こんな時期に部費の申請をされてもすでに終っている。来年度予算の申請なら九月だ。それまでにまた練り直してくるんだな」
バカにするように言われて黙ってなんかいられなかった。
「部費を申請する時期は遅かったかもしれませんが、杓子定規なのはどうかと思います。せめて書類に目を通していただけませんか?」
俺は突き返された書類を眼鏡先輩の前に出した。
「ほほう……目を通すだけでいいか?」
「いえ、だめならだめな部分について説明をいただきたいです。今後の申請に生かしたいので」
そう言うと眼鏡先輩は口元を緩めた。そうしてやっと俺を見て、訝し気な顔をした。
「大林君と言ったか」
「はい」
「下の名前は?」
「? 智紀です」
いいかげん眼鏡先輩の名前ぐらい教えてほしいと思ったが、その前に聞かれたので答えてみた。すると眼鏡先輩はやっと俺を見て、更に俺の頭に視線を移した。
「……ピータ君」
眼鏡先輩は眼鏡の真ん中の部分を指先でクイッと上げた。
「彼がピータ君の言っていたトモノリ君かな?」
ピピッ! とピー太が答えた。えー? またなんかうちのピー太がやらかしたのか?
「そうか……だが全然私とは似ていないではないかっ!」
「わあっ!」
いきなり大きな声を上げられてびっくりした。
「え? どゆこと?」
俺とこの先輩をピー太が間違えたことがあるのか?
俺はまじまじと先輩を眺めた。俺よりも頭一つ分弱背が高い先輩である。ってことは身長は175cm以上はあるってことだろう。
どこをどうやったら俺と間違えるんだ?
「ああ~、確かに」
声を上げたのは副会長である河野先輩だった。
「河野!」
眼鏡先輩が慌てたように声を上げる。
「ああ、ごめんね。これ、うちの生徒会長で藤沢っていうんだけど、一年の時は背が低くてさ……そうだな、多分大林君ぐらいしかなかったんだよ」
「「「えええええ」」」
さすがに驚いてみんなで声を上げてしまった。
ピーッ、ピーッ! とピー太とピーコに抗議される。お前らの声だって大概うるさいからな?
「河野! 私はさすがにこんなチビではなかったぞ!」
「そんなことないよ。指をさすのはやめなさい。それでね、多分だけど……当時の藤沢は今の大林君に雰囲気が似てたかもしれない」
雰囲気?
どうやらピー太は二年前に会長と俺を間違えたらしい。そういえば鳥ってあんまり目がよくないとは聞くな。
それにしてもチビって……事実とはいえ腹が立つんだけど。
「すぐに誤解は解けたんだけど、藤沢の方がピー太君のことをしばらく探していたんだよね」
「こ、河野! いいかげんなことを言うな!」
「事実だろ」
河野先輩って性格悪いなーと思った。
「あのー……」
俺はスッと手を上げた。
「何?」
河野先輩がにこやかに聞く。
「そういう秘密というか、誰かの個人的なことって、初対面に近い下級生に話していいことではないと思います。会長、俺たちは聞かなかったことにします」
そう言って俺は先輩たちに頭を下げた。眼鏡先輩こと藤沢先輩は戸惑ったような顔をした。
「それはともかくとして、この書類ちゃんと見てください。この山に住んでいる生き物たちのことを考えて申請しています。どうぞよろしくお願いします」
「あ、ああ……」
ピー太とピーコは揃ってコキャッと首を傾げた。そしてピー太は俺の腕に移ってくれた。
「戻ろう」
そう二人にも声をかけて寮に戻った。寮の前でピー太とピーコとは別れた。なんかとっても濃い放課後だった気がする。
あー、疲れた。
「村西」
「なんだ?」
「予算申請、通ると思う?」
ベッドに倒れて聞いてみた。
「さぁ、どうだろうな。全く響かないってことはないとは思うぞ」
「ならいいんだけど……」
一つでも二つでもいいから予算が通ればいいなと思ったのだった。
ーーーーー
ライト文芸大賞参加中です。
面白いと思っていただけましたら、是非投票よろしくお願いします。
本日夕方にもう1話上げます。
よろしくー
嵐山さんはそう言うと、踵を返した。
生徒会室の前である。
「えええええ」
いきなり知らない先輩に、書類を見もしないで部費の申請の却下されたのにそのまま帰るとか何事?
「失礼ですが、却下の理由をお聞かせ願いますか?」
稲村は諦めなかった。細っこいしどちらかといえば頼りない印象がある稲村だけど、その時の目は厳しかった。
「……こんな時期に部費の申請をされてもすでに終っている。来年度予算の申請なら九月だ。それまでにまた練り直してくるんだな」
バカにするように言われて黙ってなんかいられなかった。
「部費を申請する時期は遅かったかもしれませんが、杓子定規なのはどうかと思います。せめて書類に目を通していただけませんか?」
俺は突き返された書類を眼鏡先輩の前に出した。
「ほほう……目を通すだけでいいか?」
「いえ、だめならだめな部分について説明をいただきたいです。今後の申請に生かしたいので」
そう言うと眼鏡先輩は口元を緩めた。そうしてやっと俺を見て、訝し気な顔をした。
「大林君と言ったか」
「はい」
「下の名前は?」
「? 智紀です」
いいかげん眼鏡先輩の名前ぐらい教えてほしいと思ったが、その前に聞かれたので答えてみた。すると眼鏡先輩はやっと俺を見て、更に俺の頭に視線を移した。
「……ピータ君」
眼鏡先輩は眼鏡の真ん中の部分を指先でクイッと上げた。
「彼がピータ君の言っていたトモノリ君かな?」
ピピッ! とピー太が答えた。えー? またなんかうちのピー太がやらかしたのか?
「そうか……だが全然私とは似ていないではないかっ!」
「わあっ!」
いきなり大きな声を上げられてびっくりした。
「え? どゆこと?」
俺とこの先輩をピー太が間違えたことがあるのか?
俺はまじまじと先輩を眺めた。俺よりも頭一つ分弱背が高い先輩である。ってことは身長は175cm以上はあるってことだろう。
どこをどうやったら俺と間違えるんだ?
「ああ~、確かに」
声を上げたのは副会長である河野先輩だった。
「河野!」
眼鏡先輩が慌てたように声を上げる。
「ああ、ごめんね。これ、うちの生徒会長で藤沢っていうんだけど、一年の時は背が低くてさ……そうだな、多分大林君ぐらいしかなかったんだよ」
「「「えええええ」」」
さすがに驚いてみんなで声を上げてしまった。
ピーッ、ピーッ! とピー太とピーコに抗議される。お前らの声だって大概うるさいからな?
「河野! 私はさすがにこんなチビではなかったぞ!」
「そんなことないよ。指をさすのはやめなさい。それでね、多分だけど……当時の藤沢は今の大林君に雰囲気が似てたかもしれない」
雰囲気?
どうやらピー太は二年前に会長と俺を間違えたらしい。そういえば鳥ってあんまり目がよくないとは聞くな。
それにしてもチビって……事実とはいえ腹が立つんだけど。
「すぐに誤解は解けたんだけど、藤沢の方がピー太君のことをしばらく探していたんだよね」
「こ、河野! いいかげんなことを言うな!」
「事実だろ」
河野先輩って性格悪いなーと思った。
「あのー……」
俺はスッと手を上げた。
「何?」
河野先輩がにこやかに聞く。
「そういう秘密というか、誰かの個人的なことって、初対面に近い下級生に話していいことではないと思います。会長、俺たちは聞かなかったことにします」
そう言って俺は先輩たちに頭を下げた。眼鏡先輩こと藤沢先輩は戸惑ったような顔をした。
「それはともかくとして、この書類ちゃんと見てください。この山に住んでいる生き物たちのことを考えて申請しています。どうぞよろしくお願いします」
「あ、ああ……」
ピー太とピーコは揃ってコキャッと首を傾げた。そしてピー太は俺の腕に移ってくれた。
「戻ろう」
そう二人にも声をかけて寮に戻った。寮の前でピー太とピーコとは別れた。なんかとっても濃い放課後だった気がする。
あー、疲れた。
「村西」
「なんだ?」
「予算申請、通ると思う?」
ベッドに倒れて聞いてみた。
「さぁ、どうだろうな。全く響かないってことはないとは思うぞ」
「ならいいんだけど……」
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