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15.智紀、他の部活を見に行く
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森林管理部という部がある。
つーか、この学校「管理部」多いな。山だから管理しないといけないんだろうな。そうしたら山管理部とかがあってもいいけどそんな名前の部はない。
「森林管理部はわかるんですが、山の管理部みたいなのはないんですか?」
「それは山大好き部があるから特にないかな」
嵐山さんが答えた。そういえばそんな名前の部もあったなと思い出した。
森林は管理だけど山は大好きなんだな。
「山大好き部って山登りしてるんでしたっけー?」
稲村が尋ねる。
「うん、学校の敷地はこの山と裏の二つの山だからね。主に見回ってもらっているんだよ」
「じゃあ森林管理部って……」
「どちらかといえば木の間伐とか、森林自体の管理だね。見て回るだけじゃなくて、実際に手をかけてくれているから助かってるよ」
「それはすごいですね」
さすがにそこまではできないなと思う。それを考えると生物管理部ってどこまでやるんだろう。
「嵐山さん、生物管理部って虫とかはどうするんですか? ってなんか虫の部活ありましたっけ」
今日クラスに来た部活の勧誘を思い出す。
「うん。虫は虫大好き部があるからそちらに任せればいいと思うよ」
山大好き部といい、わかりやすいネーミングだと思う。なんとなくカッコよさげな名を付けたくもなるが、わかりやすいのが一番だ。
「だったらうちも動物大好き部とかにしてもいいんじゃ?」
稲田が首を傾げた。
「好きなだけでは何もできないだろう? 見回りとか、いろいろな情報を持ち帰ったりはしてくれるけどね」
ああそういう……となんとなく納得してしまった。学校の特性かもしれないが、この高校はアウトドア系の部活が多い気がする。
「えーと、今日の森林管理部の活動範囲は、と」
嵐山さんはスマホを取り出した。
「うーんと、GPSの反応はあっちだね」
「GPS!?」
つい反応してしまった。
「いてぇっ!」
うるさいとばかりにピー太につつかれてしまった。ひどい。お前だって俺の側で大声で鳴くじゃないかー。
「まあまあ、ピー太君も落ち着いてねー」
稲村に宥められてふんすとなるピー太。だからなんなんだお前は。
嵐山さんについて田んぼと畑の更に南側に向かって歩いていくと林の中に入った。南側の林の中も当然ながらひんやりしている。そのまま歩いていくと、カーンカーンと何かを打つような音が聞こえてきた。
「間伐かな?」
そのまま進んでいくと、作業着姿の生徒たちが枝打ちをしているのが見えた。
「やあ、ちょっと相談に来たんだけどいいかな?」
嵐山さんがひょいひょいと彼らの間を進んで、ちょうど太い枝を切り終えた生徒に声をかけた。
「……なんでしょうか、理事長」
「えー、理事長とか呼ばないで、嵐山さんって呼んでよ。なんかじじくさいじゃん」
「理事長は理事長です。ご用件は?」
顔を上げた人はなんつーか体育会系というかガテン系な人だった。俺たちとは全然違う。俺も筋トレとかしていたけど、あの人に比べればもやしもいいとこだ。ちょっと落ち込んだ。
「新しい部を発足させたんだけど、その初活動で薪がほしいんだ」
「薪、ですか?」
その生徒はようやく俺たちを見た。
「……あんなもやしたちに薪を渡してどうするんです?」
もやしって言った。今はっきりもやしって言われた!
事実だけどちょっと腹が立った。
ピピーッ!!
俺の腕に乗っていたピー太が鳴く。そして飛び上がった。
「ピー太?」
ピー太は高く飛び上がったかと思うと、その生徒の背後に飛び、背を何度もつついた。
「いたっ、こらっ、痛いぞっ、ピータ君やめてくれ~!」
あんな怖そうな人をつついて大丈夫かと心配になったけど、え? 今ピー太君って言った?
「ピー太君?」
俺が反応する前に稲村がポツリと呟いた。
「ピー太君、それぐらいでやめてあげなよ。越野(こしの)君、さすがにもやしはいけないと思う。悪口も度を越すといじめに繋がるからね?」
「ピー太、戻ってこい」
嵐山さんの目は笑っていない。俺が声をかけるとピー太はバサバサと戻ってきた。今度はちゃんと腕に留まる。
なんだよ、やればできるじゃないか。
「ピータ君……」
「越野君、ピー太君が留まっているのは元飼主の大林君だ。仲良くしてくれたまえ」
「元飼主?」
いかつい生徒こと越野先輩は目を丸くした。
「あーと……ピー太、昔うちの籠から逃げちゃったんですよ。ここで再会したんです……」
「そんな……ことが……」
俺もそんな奇跡みたいなこと起きるなんて信じられなかったけど、奇跡ってなかなか起こることじゃないから奇跡なんだよな。
「それでね、越野君。薪はピー太君の友達のフクロウの小屋を作る為に使いたいんだけど……」
「どーぞいくらでも持ってってください! なんでしたら作るもの手伝いますし道具もいくらでもっ!」
何故か越野先輩は豹変した。
「い、いえ……さすがにそれは……」
「タダより怖い物はないよな」
「だねー」
村西と稲村もうんうんと頷く。
というわけでみんなで枝打ちの作業と薪割りを一時間ほど手伝うことで合意した。でも勝手に決めたせいでうちの先輩たちが戻る頃にはへろへろになってしまった。
申し訳ありません。
越野さんはピー太が大好きらしく、腕をぶんぶん振って見送ってくれた。
「ピー太、ありがとな」
ピーッ! とピー太はドヤ顔をした。ま、今日はしょうがないよなと思ったのだった。
ーーーーー
豹変 本来はよいほうへ変わるのに用いたが、現在では、よくないほうへ変わる意味でいうことが多い。(goo辞書より) 今回はよいほうへ変わる意味で用いています。
つーか、この学校「管理部」多いな。山だから管理しないといけないんだろうな。そうしたら山管理部とかがあってもいいけどそんな名前の部はない。
「森林管理部はわかるんですが、山の管理部みたいなのはないんですか?」
「それは山大好き部があるから特にないかな」
嵐山さんが答えた。そういえばそんな名前の部もあったなと思い出した。
森林は管理だけど山は大好きなんだな。
「山大好き部って山登りしてるんでしたっけー?」
稲村が尋ねる。
「うん、学校の敷地はこの山と裏の二つの山だからね。主に見回ってもらっているんだよ」
「じゃあ森林管理部って……」
「どちらかといえば木の間伐とか、森林自体の管理だね。見て回るだけじゃなくて、実際に手をかけてくれているから助かってるよ」
「それはすごいですね」
さすがにそこまではできないなと思う。それを考えると生物管理部ってどこまでやるんだろう。
「嵐山さん、生物管理部って虫とかはどうするんですか? ってなんか虫の部活ありましたっけ」
今日クラスに来た部活の勧誘を思い出す。
「うん。虫は虫大好き部があるからそちらに任せればいいと思うよ」
山大好き部といい、わかりやすいネーミングだと思う。なんとなくカッコよさげな名を付けたくもなるが、わかりやすいのが一番だ。
「だったらうちも動物大好き部とかにしてもいいんじゃ?」
稲田が首を傾げた。
「好きなだけでは何もできないだろう? 見回りとか、いろいろな情報を持ち帰ったりはしてくれるけどね」
ああそういう……となんとなく納得してしまった。学校の特性かもしれないが、この高校はアウトドア系の部活が多い気がする。
「えーと、今日の森林管理部の活動範囲は、と」
嵐山さんはスマホを取り出した。
「うーんと、GPSの反応はあっちだね」
「GPS!?」
つい反応してしまった。
「いてぇっ!」
うるさいとばかりにピー太につつかれてしまった。ひどい。お前だって俺の側で大声で鳴くじゃないかー。
「まあまあ、ピー太君も落ち着いてねー」
稲村に宥められてふんすとなるピー太。だからなんなんだお前は。
嵐山さんについて田んぼと畑の更に南側に向かって歩いていくと林の中に入った。南側の林の中も当然ながらひんやりしている。そのまま歩いていくと、カーンカーンと何かを打つような音が聞こえてきた。
「間伐かな?」
そのまま進んでいくと、作業着姿の生徒たちが枝打ちをしているのが見えた。
「やあ、ちょっと相談に来たんだけどいいかな?」
嵐山さんがひょいひょいと彼らの間を進んで、ちょうど太い枝を切り終えた生徒に声をかけた。
「……なんでしょうか、理事長」
「えー、理事長とか呼ばないで、嵐山さんって呼んでよ。なんかじじくさいじゃん」
「理事長は理事長です。ご用件は?」
顔を上げた人はなんつーか体育会系というかガテン系な人だった。俺たちとは全然違う。俺も筋トレとかしていたけど、あの人に比べればもやしもいいとこだ。ちょっと落ち込んだ。
「新しい部を発足させたんだけど、その初活動で薪がほしいんだ」
「薪、ですか?」
その生徒はようやく俺たちを見た。
「……あんなもやしたちに薪を渡してどうするんです?」
もやしって言った。今はっきりもやしって言われた!
事実だけどちょっと腹が立った。
ピピーッ!!
俺の腕に乗っていたピー太が鳴く。そして飛び上がった。
「ピー太?」
ピー太は高く飛び上がったかと思うと、その生徒の背後に飛び、背を何度もつついた。
「いたっ、こらっ、痛いぞっ、ピータ君やめてくれ~!」
あんな怖そうな人をつついて大丈夫かと心配になったけど、え? 今ピー太君って言った?
「ピー太君?」
俺が反応する前に稲村がポツリと呟いた。
「ピー太君、それぐらいでやめてあげなよ。越野(こしの)君、さすがにもやしはいけないと思う。悪口も度を越すといじめに繋がるからね?」
「ピー太、戻ってこい」
嵐山さんの目は笑っていない。俺が声をかけるとピー太はバサバサと戻ってきた。今度はちゃんと腕に留まる。
なんだよ、やればできるじゃないか。
「ピータ君……」
「越野君、ピー太君が留まっているのは元飼主の大林君だ。仲良くしてくれたまえ」
「元飼主?」
いかつい生徒こと越野先輩は目を丸くした。
「あーと……ピー太、昔うちの籠から逃げちゃったんですよ。ここで再会したんです……」
「そんな……ことが……」
俺もそんな奇跡みたいなこと起きるなんて信じられなかったけど、奇跡ってなかなか起こることじゃないから奇跡なんだよな。
「それでね、越野君。薪はピー太君の友達のフクロウの小屋を作る為に使いたいんだけど……」
「どーぞいくらでも持ってってください! なんでしたら作るもの手伝いますし道具もいくらでもっ!」
何故か越野先輩は豹変した。
「い、いえ……さすがにそれは……」
「タダより怖い物はないよな」
「だねー」
村西と稲村もうんうんと頷く。
というわけでみんなで枝打ちの作業と薪割りを一時間ほど手伝うことで合意した。でも勝手に決めたせいでうちの先輩たちが戻る頃にはへろへろになってしまった。
申し訳ありません。
越野さんはピー太が大好きらしく、腕をぶんぶん振って見送ってくれた。
「ピー太、ありがとな」
ピーッ! とピー太はドヤ顔をした。ま、今日はしょうがないよなと思ったのだった。
ーーーーー
豹変 本来はよいほうへ変わるのに用いたが、現在では、よくないほうへ変わる意味でいうことが多い。(goo辞書より) 今回はよいほうへ変わる意味で用いています。
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