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14.智紀、さっそく部活動を始める
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四階は基本教職員が使うフロアらしい。
一応会議室っぽいのが何室かあるそうで、そこに嵐山さんは俺たちを連れて行った。東側の角部屋である。俺たちの部屋は南東寄りにあるが、こっちの会議室は北東だった。というわけで真上ではない。
「どうだい、いい眺めだろう!」
カーテンを開け、窓を開けると嵐山さんは笑顔でそう言った。
「……はい」
「……ソウデスネ」
「…………」
先輩たちは困っている様子だった。なんとも頼りなさそうである。
もしかして嵐山さんに振り回されているのだろうか。俺たちもすでにかなり振り回されているっぽいけど。
「さっそくなんだけど自己紹介をしてくれ。とりあえず名前と学年だね」
嵐山さんがにこにこしながら言う。先輩たちからは言いづらそうだと判断して、俺から「一年二組の大林智紀です」と名乗った。次に村西、そして稲村が名乗る。
ひょろ長い先輩が、「三年一組、金子です」と名乗った。次に背の高い、メガネをかけた先輩は二年の小原と。最後に稲村よりは背の高い、前髪が長くて目え見えてんのかなって先輩が、二年の益子と名乗ってくれた。
みんなおどおどしてて、背が高いのに猫背でもったいないなと思った。
「あのぅ……もしかして先輩方って、人見知りとかですか?」
どう聞いたらいいのかわからなくて、ついそう声をかけてしまった。先輩方はみなぶんぶんと縦に首を振った。
俺より背が高いのにもったいないなと思う。
ま、背については俺のコンプレックスだからできるだけ持ち込まないようにするけどさ。
「じゃあどうして生物管理部に参加されることにしたんですか?」
「……そ、それは……」
「オカメインコに……」
「……助けてもらったから……」
三人が三人ともピー太に助けられたらしい。
「そ、そうなんですか。それならよかったです」
そういう事情だったのかと、少しだけ合点がいった。
「そ、その……大林君は……」
「オカメインコとは……」
「……関係は、どう……?」
なんかこの三人連携がばっちりだなと思った。けっこう仲がいいのだろう。
「あ、ええと……俺、ピー太の元飼主で、その、ここで再会したってゆーか……」
自分で言っててありえないだろと思った。俺が住んでたところはこの学校がある隣の県である。この学校に来るまでに電車とバスを乗り継いで三時間以上はかかった。新幹線とかは走っていない区間だけど、それでもけっこう遠いはずである。
ピー太はどうやってここまで来たんだ?
って、飛んでだよな……。
「そ、それは……」
「すごい……!」
「……奇跡……」
「ですよね」
なんか三人共感動しているみたいだった。ぷるぷる震えている。意味がわからない。
「はーい。交流ができたところで活動するよー」
これ、交流ができたっていうのか? 村西はぼーっとしてるみたいだし、稲村はなんか口押さえて笑ってるし。クックッとか笑い声漏れてんだよ。
「はうっ!?」
俺は稲村の脇腹にチョップを入れた。
「な、何するんだよー?」
「笑ってんじゃねえよ」
「いいじゃん。笑うぐらい!」
「じゃれるのは後にしてくれるかなー? かくかくしかじかでフクロウの家を作ることになりました。とりあえず家の大きさとかは調べておくけど、なんかこうしたいとかいう案はあるかな?」
「え……」
村西、稲村と顔を見合わせた。こうしたいなんて案は特にないなぁ。
一応かくかくしかじかの部分は先輩たちと内容共有はした。
先輩たちは賛成するというようにぶんぶんと首を縦に振った。その動きも三人共揃っていた。
「作るとなるとどこからですか? 板とか材料はどこから調達するんですか?」
それまで黙っていた村西が聞いた。確かに、ホームセンターから鳥小屋を買ってくるなんてわけではないだろう。フクロウ、けっこうでかかったしな。でも入口はカラスが入り込めなような大きさである必要がある。それだとフクロウがぎりぎり入れるような大きさの穴を空けないといけないんじゃないか? そしたらフクロウにも協力してもらわないといけないよな。
……協力してくれるんだよな?
「材料! いいところに気がついたね。森林管理部があるから、そこから薪をもらってくるとしよう」
嵐山さんが言う。村西は少し難しい顔をした。
「森林管理部って自分たちで薪を割ってるんですよね?」
「そうだよ」
「それって、ただでもらえるものなんですか?」
「ホント、いいところに気づくよねぇ」
やっぱりただというわけにもいかないらしい。俺は山暮らしとか経験がないというのもあり、話を聞くまでは木を切ればすぐに薪として使えるものだと思っていた。実際には一年以上とか乾かさないと使用できないものらしい。木は水分を含んでいるからなんだって。
それはただでもらっていいものじゃないだろうって俺でも思う。
ただ薪の相場もわからないから、そこは相談するしかないだろう。
「お金、って言っても……うちの部って予算ないですよね?」
「ないね。まだ発足したばかりだから、生徒会に申請出さないと無理かな」
嵐山さんが即答する。
「じゃあどうやって薪を調達するんですかー?」
稲村が尋ねる。
「とりあえず森林管理部に行って聞いてみようか」
その方が確かに話は早そうだった。
また階段を下りて嵐山さん、先輩たちと共に寮の外へ出たら、バッサバッサと羽音が聞こえた。
「あっ、ピー太君」
稲村が声を上げる。どうやらこの辺りを回っていたらしい。
「いてっ!」
音が近づいてきたと思ったらまたピー太は俺の頭の上に留まった。
「頭は止めてくれよ~」
「ちょうどいいからピー太君も一緒に行こうか」
嵐山さんに言われて、ピー太は俺の腕に移ってからピー! と元気よく鳴いたのだった。
一応会議室っぽいのが何室かあるそうで、そこに嵐山さんは俺たちを連れて行った。東側の角部屋である。俺たちの部屋は南東寄りにあるが、こっちの会議室は北東だった。というわけで真上ではない。
「どうだい、いい眺めだろう!」
カーテンを開け、窓を開けると嵐山さんは笑顔でそう言った。
「……はい」
「……ソウデスネ」
「…………」
先輩たちは困っている様子だった。なんとも頼りなさそうである。
もしかして嵐山さんに振り回されているのだろうか。俺たちもすでにかなり振り回されているっぽいけど。
「さっそくなんだけど自己紹介をしてくれ。とりあえず名前と学年だね」
嵐山さんがにこにこしながら言う。先輩たちからは言いづらそうだと判断して、俺から「一年二組の大林智紀です」と名乗った。次に村西、そして稲村が名乗る。
ひょろ長い先輩が、「三年一組、金子です」と名乗った。次に背の高い、メガネをかけた先輩は二年の小原と。最後に稲村よりは背の高い、前髪が長くて目え見えてんのかなって先輩が、二年の益子と名乗ってくれた。
みんなおどおどしてて、背が高いのに猫背でもったいないなと思った。
「あのぅ……もしかして先輩方って、人見知りとかですか?」
どう聞いたらいいのかわからなくて、ついそう声をかけてしまった。先輩方はみなぶんぶんと縦に首を振った。
俺より背が高いのにもったいないなと思う。
ま、背については俺のコンプレックスだからできるだけ持ち込まないようにするけどさ。
「じゃあどうして生物管理部に参加されることにしたんですか?」
「……そ、それは……」
「オカメインコに……」
「……助けてもらったから……」
三人が三人ともピー太に助けられたらしい。
「そ、そうなんですか。それならよかったです」
そういう事情だったのかと、少しだけ合点がいった。
「そ、その……大林君は……」
「オカメインコとは……」
「……関係は、どう……?」
なんかこの三人連携がばっちりだなと思った。けっこう仲がいいのだろう。
「あ、ええと……俺、ピー太の元飼主で、その、ここで再会したってゆーか……」
自分で言っててありえないだろと思った。俺が住んでたところはこの学校がある隣の県である。この学校に来るまでに電車とバスを乗り継いで三時間以上はかかった。新幹線とかは走っていない区間だけど、それでもけっこう遠いはずである。
ピー太はどうやってここまで来たんだ?
って、飛んでだよな……。
「そ、それは……」
「すごい……!」
「……奇跡……」
「ですよね」
なんか三人共感動しているみたいだった。ぷるぷる震えている。意味がわからない。
「はーい。交流ができたところで活動するよー」
これ、交流ができたっていうのか? 村西はぼーっとしてるみたいだし、稲村はなんか口押さえて笑ってるし。クックッとか笑い声漏れてんだよ。
「はうっ!?」
俺は稲村の脇腹にチョップを入れた。
「な、何するんだよー?」
「笑ってんじゃねえよ」
「いいじゃん。笑うぐらい!」
「じゃれるのは後にしてくれるかなー? かくかくしかじかでフクロウの家を作ることになりました。とりあえず家の大きさとかは調べておくけど、なんかこうしたいとかいう案はあるかな?」
「え……」
村西、稲村と顔を見合わせた。こうしたいなんて案は特にないなぁ。
一応かくかくしかじかの部分は先輩たちと内容共有はした。
先輩たちは賛成するというようにぶんぶんと首を縦に振った。その動きも三人共揃っていた。
「作るとなるとどこからですか? 板とか材料はどこから調達するんですか?」
それまで黙っていた村西が聞いた。確かに、ホームセンターから鳥小屋を買ってくるなんてわけではないだろう。フクロウ、けっこうでかかったしな。でも入口はカラスが入り込めなような大きさである必要がある。それだとフクロウがぎりぎり入れるような大きさの穴を空けないといけないんじゃないか? そしたらフクロウにも協力してもらわないといけないよな。
……協力してくれるんだよな?
「材料! いいところに気がついたね。森林管理部があるから、そこから薪をもらってくるとしよう」
嵐山さんが言う。村西は少し難しい顔をした。
「森林管理部って自分たちで薪を割ってるんですよね?」
「そうだよ」
「それって、ただでもらえるものなんですか?」
「ホント、いいところに気づくよねぇ」
やっぱりただというわけにもいかないらしい。俺は山暮らしとか経験がないというのもあり、話を聞くまでは木を切ればすぐに薪として使えるものだと思っていた。実際には一年以上とか乾かさないと使用できないものらしい。木は水分を含んでいるからなんだって。
それはただでもらっていいものじゃないだろうって俺でも思う。
ただ薪の相場もわからないから、そこは相談するしかないだろう。
「お金、って言っても……うちの部って予算ないですよね?」
「ないね。まだ発足したばかりだから、生徒会に申請出さないと無理かな」
嵐山さんが即答する。
「じゃあどうやって薪を調達するんですかー?」
稲村が尋ねる。
「とりあえず森林管理部に行って聞いてみようか」
その方が確かに話は早そうだった。
また階段を下りて嵐山さん、先輩たちと共に寮の外へ出たら、バッサバッサと羽音が聞こえた。
「あっ、ピー太君」
稲村が声を上げる。どうやらこの辺りを回っていたらしい。
「いてっ!」
音が近づいてきたと思ったらまたピー太は俺の頭の上に留まった。
「頭は止めてくれよ~」
「ちょうどいいからピー太君も一緒に行こうか」
嵐山さんに言われて、ピー太は俺の腕に移ってからピー! と元気よく鳴いたのだった。
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