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7.智紀、入学式に出席す
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学生寮から歩いて五分で校舎って、あんまり情緒がないなと思ったのは俺だけだろうか。
まぁ近くていいけど。
行きは下りだし。
村西と、食堂で合流した稲村と三人で学校に向かう。昇降口にクラス名簿が貼り付けられていた。
「トモ君は? あ、同じクラスだー!」
稲村が先に見つけたらしい。俺は自分では背伸びしてもなかなか見えなくて不満である。なんでみんな俺よりでかいんだよ!
「ムラ君は別のクラスか。残念だね」
「そっか。残念だなー」
三人で同じクラスだったら楽しそうだったのに。そう言うと村西にじいっと見つめられた。
「え? 何?」
「……なんでもない」
一年生は教室が四階だと聞いて「えー」と不満の声が漏れた。二年が三階で、三年が二階らしい。学年が上がるごとに楽になるみたいだ。じいちゃんかよ。
で、一クラス約三十人で、それが各学年三クラスという、多いんだか少ないんだかよくわからない学校だった。
「全部で約270人か。どうなんだろうな?」
「何が?」
「学校の大きさとか」
「そうだね。どうなんだろうね?」
うちの中学より人数は少ないけど、ここ私立だしなー。
上履きに履き替えて階段を上る。さすがに朝から四階まで上るのはきついなと思った。もっと鍛えた方がいいな、うん。
四階で村西とは別れた。
一年二組の教室に入った。ちえーと思った。俺はクラスがABCとかのをちょっと期待していたのだが、この学校は一組二組らしい。
ま、誰にも言う気はないけど。
担任の先生は数学教師で、奥田という中年の男性だった。可もなく不可もなく見た目である。うん、普通だ。
「これから体育館に移動する」
連絡事項などを確認して、俺たちは体育館に移動することになった。体育館は校舎の裏にあった。二階の真ん中らへんに連絡通路があり、北へ向かう。階段を下りたらそこが体育館の入口だった。ちなみに、一階にも出入り口があるがそこは校舎とは繋がっていないらしい。変なのと思った。(一応二階の連絡通路が屋根みたいになるから、一階から体育館に向かう場合も雨で濡れたりはしない設計である)
体育館では先生方と一部の保護者が待っていた。
保護者は本当に一部だけだった。俺のところみたいにすでに日本にいない親とかもいるんだろう。そもそも高校の入学式って親も来るものなんだっけ? 俺は首を傾げた。
理事長挨拶と言われて顔を上げたら、体育館の壇上に嵐山さんがいた。
「……え?」
「新入生諸君、おはようございます。僕がこの春嵐(しゅんらん)高校の理事長兼校長兼寮監の嵐山です。よろしく」
嵐山さんはしてやったりと言いたげな笑顔だった。
理事長兼校長兼寮監て……なんか仕事多くないか?
「何か問題があれば速やかに僕に伝えてほしい。テストの答えを教えろとかは聞けないけど、できるだけ君たちの要望に応えていきたいと思っているので仲良くしてほしい」
周りを見るとみんな呆気に取られたような顔をしていた。そうだよな。
一部の生徒はだるそうにしていたり、壇上を睨みつけていたりしたけど、きっと毎年のことなんだろう。
担任の紹介と、新入生代表の挨拶を終えてこれで終わりかなと思ったら、この高校に勤めている人たちの紹介もあった。
そうだよな。三年間お世話になるんだから知っておいた方がいいよな。
学校事務の鈴木さんも紹介されていた。
そうしてやっと教室に戻った。
「明日は学校探検と部活動説明会がある。それからこの学校での生活の注意事項なども説明するから休まないように」
担任の奥田先生に言われて、プリントなどを確認した。教科書なんかを受け取り、今日はそれで終わりになった。
稲村が近づいてきた。
「トモ君、びっくりしたね~」
「ああ、嵐山さん?」
「そうそう~」
教室を出ると、村西もちょうど出てきたところだったので連れ立って寮に戻ることにした。校舎を出た途端、ピピーッ! と声がしたかと思うとピー太が俺の頭の上に留まった。
「おい、こらピー太……」
「オハヨー」
「……おはよう……」
そういえば今朝はピー太が来なかった。ピー太が起きられなかったのか、他に用事があったのかはわからない。
「頭はいてーから腕に移動してくれー」
頭に手を近づけてトトッと腕に移動してもらい、一息ついた。制服の生地が厚いせいか腕に乗られる分には痛くはない。
「ピー太君、おはよう」
稲村がにこやかに声をかける。
「オハヨー」
ちゃんと挨拶を返すらしい。俺は村西を見た。
「……え……」
村西は戸惑ったみたいだった。相変わらず一、二歩離れている。
「あ、ああ……ピー太、だっけか? おはよう」
「……オハヨー」
なんでピー太の声が少し低く感じられたのかな?
そう聞こえただけなのかよくわからなくて、俺は首を傾げたのだった。
まぁ近くていいけど。
行きは下りだし。
村西と、食堂で合流した稲村と三人で学校に向かう。昇降口にクラス名簿が貼り付けられていた。
「トモ君は? あ、同じクラスだー!」
稲村が先に見つけたらしい。俺は自分では背伸びしてもなかなか見えなくて不満である。なんでみんな俺よりでかいんだよ!
「ムラ君は別のクラスか。残念だね」
「そっか。残念だなー」
三人で同じクラスだったら楽しそうだったのに。そう言うと村西にじいっと見つめられた。
「え? 何?」
「……なんでもない」
一年生は教室が四階だと聞いて「えー」と不満の声が漏れた。二年が三階で、三年が二階らしい。学年が上がるごとに楽になるみたいだ。じいちゃんかよ。
で、一クラス約三十人で、それが各学年三クラスという、多いんだか少ないんだかよくわからない学校だった。
「全部で約270人か。どうなんだろうな?」
「何が?」
「学校の大きさとか」
「そうだね。どうなんだろうね?」
うちの中学より人数は少ないけど、ここ私立だしなー。
上履きに履き替えて階段を上る。さすがに朝から四階まで上るのはきついなと思った。もっと鍛えた方がいいな、うん。
四階で村西とは別れた。
一年二組の教室に入った。ちえーと思った。俺はクラスがABCとかのをちょっと期待していたのだが、この学校は一組二組らしい。
ま、誰にも言う気はないけど。
担任の先生は数学教師で、奥田という中年の男性だった。可もなく不可もなく見た目である。うん、普通だ。
「これから体育館に移動する」
連絡事項などを確認して、俺たちは体育館に移動することになった。体育館は校舎の裏にあった。二階の真ん中らへんに連絡通路があり、北へ向かう。階段を下りたらそこが体育館の入口だった。ちなみに、一階にも出入り口があるがそこは校舎とは繋がっていないらしい。変なのと思った。(一応二階の連絡通路が屋根みたいになるから、一階から体育館に向かう場合も雨で濡れたりはしない設計である)
体育館では先生方と一部の保護者が待っていた。
保護者は本当に一部だけだった。俺のところみたいにすでに日本にいない親とかもいるんだろう。そもそも高校の入学式って親も来るものなんだっけ? 俺は首を傾げた。
理事長挨拶と言われて顔を上げたら、体育館の壇上に嵐山さんがいた。
「……え?」
「新入生諸君、おはようございます。僕がこの春嵐(しゅんらん)高校の理事長兼校長兼寮監の嵐山です。よろしく」
嵐山さんはしてやったりと言いたげな笑顔だった。
理事長兼校長兼寮監て……なんか仕事多くないか?
「何か問題があれば速やかに僕に伝えてほしい。テストの答えを教えろとかは聞けないけど、できるだけ君たちの要望に応えていきたいと思っているので仲良くしてほしい」
周りを見るとみんな呆気に取られたような顔をしていた。そうだよな。
一部の生徒はだるそうにしていたり、壇上を睨みつけていたりしたけど、きっと毎年のことなんだろう。
担任の紹介と、新入生代表の挨拶を終えてこれで終わりかなと思ったら、この高校に勤めている人たちの紹介もあった。
そうだよな。三年間お世話になるんだから知っておいた方がいいよな。
学校事務の鈴木さんも紹介されていた。
そうしてやっと教室に戻った。
「明日は学校探検と部活動説明会がある。それからこの学校での生活の注意事項なども説明するから休まないように」
担任の奥田先生に言われて、プリントなどを確認した。教科書なんかを受け取り、今日はそれで終わりになった。
稲村が近づいてきた。
「トモ君、びっくりしたね~」
「ああ、嵐山さん?」
「そうそう~」
教室を出ると、村西もちょうど出てきたところだったので連れ立って寮に戻ることにした。校舎を出た途端、ピピーッ! と声がしたかと思うとピー太が俺の頭の上に留まった。
「おい、こらピー太……」
「オハヨー」
「……おはよう……」
そういえば今朝はピー太が来なかった。ピー太が起きられなかったのか、他に用事があったのかはわからない。
「頭はいてーから腕に移動してくれー」
頭に手を近づけてトトッと腕に移動してもらい、一息ついた。制服の生地が厚いせいか腕に乗られる分には痛くはない。
「ピー太君、おはよう」
稲村がにこやかに声をかける。
「オハヨー」
ちゃんと挨拶を返すらしい。俺は村西を見た。
「……え……」
村西は戸惑ったみたいだった。相変わらず一、二歩離れている。
「あ、ああ……ピー太、だっけか? おはよう」
「……オハヨー」
なんでピー太の声が少し低く感じられたのかな?
そう聞こえただけなのかよくわからなくて、俺は首を傾げたのだった。
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