野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~

浅葱

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3.智紀、ルームメイトに会う

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「エレベーターはあるけど基本は階段を使ってくれ。エレベーターは荷物とか、負傷した生徒を運ぶものだと思ってねー」

 寮監の嵐山さんの言葉に頷く。
 一階のロビーからまっすぐ廊下を東に向かって進む。西から食堂、談話室、リネン室、売店と嵐山さんに説明してもらい、一番東側の階段を上がった。その真ん前が俺の部屋だった。
 嵐山さんがドアをノックする。

「こんにちはー、寮監の嵐山です。ルームメイトを連れてきたよー」
「……はい」

 低い声がしてドアが開いた。

「入るねー。はい、大林君も入って~」
「……お邪魔します」
「お邪魔しますって、君の部屋でもあるんだよ」

 嵐山さんは楽しそうに笑った。
 そのまま嵐山さんは戻るのかと思ったけど、戻る気配がない。俺は部屋と、ルームメイトという青年をまじまじと眺めた。
 ……でっかい。
 身長だけでなく、全体的にでかい。なんともコンプレックスを刺激されるなと思った。

「村西君、悪いんだけど東側の窓を開けてくれないかな?」
「え? あ、はい」

 声が低くてでっかいルームメイトは村西というらしい。村西は言われた通り東側の窓を開けた。その途端何かがすごいスピードで飛び込んできた。バババッと音がして、俺はビビッた。
 何? この学校っていったいなんなんだ?
 ピィーーッ!

「……え?」

 バサバサと羽の音がして、俺の頭に何かが乗っかった。この感触は……。

「ピー太?」
「ピータ!」

 爪が食い込んで痛いんだけど。しかも自分で「ピータ!」とか名乗るのはいいんだけどうるさい。

「痛いっての」

 先ほど寮の入口で別れたピー太が、わざわざ部屋までやってきたらしい。そういえば嵐山さんがピー太に何か言っていた気がする。ピー太、どんだけ頭がいいんだよ?

「そ、その鳥って……」

 村西は顔色を悪くして後ずさった。

「そうだよ~。新入生の頭にいちいち乗りにきたオカメインコのピー太君だよ」

 嵐山さんが楽しそうに村西に伝えた。俺は呆れた。

「ピー太、そんなことしてたのか。迷惑かけちゃだめだろう……」

 ピピッとピー太が鳴く。頭に手を近づけるとそっちにトンッと乗って腕に移った。爪食い込んで痛いしちょっと重いなー。
 それを顔の前まで移動した。うん、ピー太だ。

「いやいや、いいんだよ。それぐらいしてもらった方がみんな悪さをしなくなるからね。おかげで目立ったいじめなんかもないし、ピー太君にはとても助けられているんだよ」
「はい?」

 嵐山さんの言っていることがよくわからなかった。

「いやー、飼主がいたとは思っていたけどまさか元の飼主がこの学校に来てくれるとはね~。これはさすがに僕も想定外だったな~。じゃ村西君とピー太君、あとはよろしくー」

 嵐山さんは言いたいことだけ言うと、部屋を出て行ってしまった。
 ピー太はピピッと返事をした。いったいどうなっているんだ?
 さすがに状況がつかめなくて、俺はピー太を見て、それから村西を見た。村西は困ったような顔をして頭を掻いた。

「えーと、そっちが君のベッドと椅子と机だから……とりあえず荷物置いて座ったら?」
「あ、うん……」

 ピー太に一旦下りてもらってボストンバッグを下ろし、俺は椅子に腰掛けた。俺の机の上にいたピー太がトテトテトテッとやってきて、俺の腕に乗った。手乗りインコか。ちょっと重いし爪痛いけど。

「俺は村西一義(むらにしかずよし)、君は?」
「あ……大林智紀、です……」
「トモー、ノリー」
「お前はピー太だろ」

 灰色の羽を撫でる。

「元飼主って本当か?」

 村西にじっと見つめられてなんか居心地が悪い。

「うん、多分……そう、かな?」
「なんだそれ」

 村西がははっと笑った。その笑顔にほっとして、俺もへへっと笑った。ピー太は俺と村西を何度か見た後、トンッと移動して窓から出て行った。って、ここ二階だよなぁ。インコってそんなに飛べるものだったのか。

「もう、今は戻ってこないかな……」
「戻ってこないんじゃないか?」

 村西に確認し、とりあえず窓を閉めた。開けとくとまだ寒いのだ。一応カーテンだけ夜まで閉めないようにして、ピー太が来たらわかるようにさせてもらった。
 つーか、ピー太はいったいどこに住んでんだよ? こっから見える東側の林の中だろうか。俺は木々が植わっている方をじっと眺めたが、さっぱりわからなかった。
 もうピー太の姿は見えない。
 落ち着いてから村西にいろいろ聞いてみた。
 村西は俺より二日早くここに来ていたらしく、風呂とか飯の時間とか、門限とかを適当に教えてくれた。荷物を片付けようとして、よく考えたら着替えとかそういうのって寮監のところにあるんじゃんと気づいて受け取りに行ったりもした。村西はヒマだからと付き合ってくれた。いい奴である。
 そうして初日はバタバタとすぎたのだった。
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