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50.俺流の炒飯を作ってみた
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炒飯を適度に焦がすチートはなくなっている。
となると俺のやり方で作るしかない。油は多め、火を入れる前に米に味付け、火を入れてから溶き卵を混ぜて、他の具材を混ぜる。そうしたら蓋をして放置だ。どう考えても炒飯の作り方ではないと思う。でもこうすると、フライパンとか鍋に接する面がよく焦げておこげのようになるのである。
これは城の厨房を借りて作らせてもらった。
パラパラの炒飯とは真逆の、変なところが固まった炒飯だ。
「はい、お待ち!」
中華料理屋のコックだったら一発でクビだなと思うような炒飯である。
美鈴は皿によそられた俺作の炒飯を見て、とても嬉しそうに笑んだ。
「これよ! これ! これが食べたかったの!」
固まった部分を箸で掴んで食べる美鈴。
「そう、この適度に固まったこれがいいの!」
王たちは引きつった顔をしながら一口ずつ食べ、首を傾げた。おこげになっている部分を食べた王妃は一瞬目を見開き、「あら、これおいしいわ」と呟いた。美鈴がにんまりして、
「王妃殿下、ありがとうございます」
王妃に礼を言った。
「ふむ……」
王の好みではなかったみたいだ。もちろんフン王子もフンと言いたげな顔をしている。いちいち腹が立つ野郎だ。
「これはこれで……」
とパンズはもりもり食べている。
「すっごくおいしいのだけど、もっと早く作ってもらいたかったわ。今度はちゃんと食事の時間に合わせて作ってちょうだい」
美鈴に言われて苦笑した。オマケということで量は作らなかったから、残りはパンズが全て平らげてくれた。あざーっす。
「これがタツキさんの炒飯なのですな。なかなかおいしかったです。私めにもまた食べさせていただけると嬉しいですな!」
「いやいや……」
そんな大商人に食べさせられるような出来ではありませんて。
ちなみに、猫紙は肉がなくなるとどんどんおかわりを所望して延々肉や魚を食べ続けていた。よく食うなぁ。
「うむ、なかなかうまかったぞ」
あれだけ豪快に食べていたというのに猫紙は全然汚れていない。お盆の上もキレイなものだ。何故か隣に腰掛けているフン王子の、猫紙側に面した部分が汚くなっていた。なんつー飛び方をしているのかと笑いそうになった。コントかよ。
「戻ろうぞ」
猫紙が言う。
「かしこまりました」
パンズがにこにこして立ち上がろうとすると、王が手で制した。
「コホン……料理については満足してもらえたようでよかった」
「はい、おいしかったです。やはり王城の料理は最高ですね」
美鈴がしれっと答えた。
「そこでだ……ミレイ殿に頼みがある」
えー? と思った。確かに豪華な夕飯だったけど、それは美鈴を軟禁したお詫びというか、そういう意味合いがあって呼ばれたのではなかったのか。
俺は首を傾げた。おかしい。
〈猫紙さま〉
〈うむ、ふざけた話じゃのう〉
「かような頼み、聞くに能わず。竜樹、美鈴、パンズ、戻るぞ」
猫紙がテーブルからトンッと下り、俺の肩に飛び乗った。
「神よ!」
王が声を上げた。
「王よ。美鈴に何を言うつもりじゃ? その内容によってば神罰が落ちると心得よ」
「神罰……?」
フン王子が呟いた。
「美鈴は我の加護を与えている竜樹の伴侶じゃ。この二人を引き離そうとすることは許さぬ!」
猫紙が強い言い方で、そう決めた。
「そんなっ! 炒飯ともいえない物を作る者などどこがいいというんだ! ミレイは私と一緒に……わああっ!」
フン王子が立ち上がり、そう言いながら近づいてこようとした時、何故か足もとに何かが落ちていたらしい。それを踏んで王子が転んだ。そこにどういうわけか暴れ馬が駆け込んできて、フン王子を踏んだかと思うと呆然する俺たちを残してまた駆けて行った。
「ええー……」
「……一番軽い神罰じゃのう」
猫紙が当たり前のように言う。まぁ確かにここに馬車は入ってこられないだろう。
「お、王子! 大丈夫ですか! 王子!!」
侍従や兵士たちが慌てたようにフン王子に群がる。
「……も、申し訳ありませんでした……」
王だけでなく、王妃、王太子、王太子妃までが青ざめ、一斉にその場で平伏した。王以外は完全にとばっちりだなと思った。
「……ふざけたことを言わないのなら不問に付します。それよりもフン王子を早く治療して差し上げてください」
美鈴が呆れたように言い、俺たちは無事パンズの館に帰ることができた。
パンズは上機嫌である。猫紙を擁しているということで今後は商談が有利に進むことだろう。もちろん猫紙があまり度を越したことはしないようにと釘を刺してはいたが。
美鈴には先に入浴してもらい、俺はソファでぐでっとした。王都に来てから怒涛の展開でかなり疲れたといっていい。でも俺の炒飯がまともに作れたことはよかったと思った。
「神罰ってすごいんだなー……」
「神罰じゃからのぅ。おかげで畏怖が集まっておる」
「畏怖ってどうなんだ?」
「それもまた信仰の一部じゃ。我の力もだんだんと増しておるぞ」
猫紙が楽しそうにククッと笑う。
「ミンメイを迎えに行こうぜ」
「そうじゃな」
そうしてやっと、もろもろの事件が幕を閉じたのだった。やれやれである。
となると俺のやり方で作るしかない。油は多め、火を入れる前に米に味付け、火を入れてから溶き卵を混ぜて、他の具材を混ぜる。そうしたら蓋をして放置だ。どう考えても炒飯の作り方ではないと思う。でもこうすると、フライパンとか鍋に接する面がよく焦げておこげのようになるのである。
これは城の厨房を借りて作らせてもらった。
パラパラの炒飯とは真逆の、変なところが固まった炒飯だ。
「はい、お待ち!」
中華料理屋のコックだったら一発でクビだなと思うような炒飯である。
美鈴は皿によそられた俺作の炒飯を見て、とても嬉しそうに笑んだ。
「これよ! これ! これが食べたかったの!」
固まった部分を箸で掴んで食べる美鈴。
「そう、この適度に固まったこれがいいの!」
王たちは引きつった顔をしながら一口ずつ食べ、首を傾げた。おこげになっている部分を食べた王妃は一瞬目を見開き、「あら、これおいしいわ」と呟いた。美鈴がにんまりして、
「王妃殿下、ありがとうございます」
王妃に礼を言った。
「ふむ……」
王の好みではなかったみたいだ。もちろんフン王子もフンと言いたげな顔をしている。いちいち腹が立つ野郎だ。
「これはこれで……」
とパンズはもりもり食べている。
「すっごくおいしいのだけど、もっと早く作ってもらいたかったわ。今度はちゃんと食事の時間に合わせて作ってちょうだい」
美鈴に言われて苦笑した。オマケということで量は作らなかったから、残りはパンズが全て平らげてくれた。あざーっす。
「これがタツキさんの炒飯なのですな。なかなかおいしかったです。私めにもまた食べさせていただけると嬉しいですな!」
「いやいや……」
そんな大商人に食べさせられるような出来ではありませんて。
ちなみに、猫紙は肉がなくなるとどんどんおかわりを所望して延々肉や魚を食べ続けていた。よく食うなぁ。
「うむ、なかなかうまかったぞ」
あれだけ豪快に食べていたというのに猫紙は全然汚れていない。お盆の上もキレイなものだ。何故か隣に腰掛けているフン王子の、猫紙側に面した部分が汚くなっていた。なんつー飛び方をしているのかと笑いそうになった。コントかよ。
「戻ろうぞ」
猫紙が言う。
「かしこまりました」
パンズがにこにこして立ち上がろうとすると、王が手で制した。
「コホン……料理については満足してもらえたようでよかった」
「はい、おいしかったです。やはり王城の料理は最高ですね」
美鈴がしれっと答えた。
「そこでだ……ミレイ殿に頼みがある」
えー? と思った。確かに豪華な夕飯だったけど、それは美鈴を軟禁したお詫びというか、そういう意味合いがあって呼ばれたのではなかったのか。
俺は首を傾げた。おかしい。
〈猫紙さま〉
〈うむ、ふざけた話じゃのう〉
「かような頼み、聞くに能わず。竜樹、美鈴、パンズ、戻るぞ」
猫紙がテーブルからトンッと下り、俺の肩に飛び乗った。
「神よ!」
王が声を上げた。
「王よ。美鈴に何を言うつもりじゃ? その内容によってば神罰が落ちると心得よ」
「神罰……?」
フン王子が呟いた。
「美鈴は我の加護を与えている竜樹の伴侶じゃ。この二人を引き離そうとすることは許さぬ!」
猫紙が強い言い方で、そう決めた。
「そんなっ! 炒飯ともいえない物を作る者などどこがいいというんだ! ミレイは私と一緒に……わああっ!」
フン王子が立ち上がり、そう言いながら近づいてこようとした時、何故か足もとに何かが落ちていたらしい。それを踏んで王子が転んだ。そこにどういうわけか暴れ馬が駆け込んできて、フン王子を踏んだかと思うと呆然する俺たちを残してまた駆けて行った。
「ええー……」
「……一番軽い神罰じゃのう」
猫紙が当たり前のように言う。まぁ確かにここに馬車は入ってこられないだろう。
「お、王子! 大丈夫ですか! 王子!!」
侍従や兵士たちが慌てたようにフン王子に群がる。
「……も、申し訳ありませんでした……」
王だけでなく、王妃、王太子、王太子妃までが青ざめ、一斉にその場で平伏した。王以外は完全にとばっちりだなと思った。
「……ふざけたことを言わないのなら不問に付します。それよりもフン王子を早く治療して差し上げてください」
美鈴が呆れたように言い、俺たちは無事パンズの館に帰ることができた。
パンズは上機嫌である。猫紙を擁しているということで今後は商談が有利に進むことだろう。もちろん猫紙があまり度を越したことはしないようにと釘を刺してはいたが。
美鈴には先に入浴してもらい、俺はソファでぐでっとした。王都に来てから怒涛の展開でかなり疲れたといっていい。でも俺の炒飯がまともに作れたことはよかったと思った。
「神罰ってすごいんだなー……」
「神罰じゃからのぅ。おかげで畏怖が集まっておる」
「畏怖ってどうなんだ?」
「それもまた信仰の一部じゃ。我の力もだんだんと増しておるぞ」
猫紙が楽しそうにククッと笑う。
「ミンメイを迎えに行こうぜ」
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