上 下
45 / 51

45.こんな便利なチートがあるのなら

しおりを挟む
 国境を渡れるチート。
 炒飯を作った際、裏をおいしく焦げさせるチートと交換されました。今後炒飯のチートは使えません。

 同行者は本人を含めず五人まで。神は人数には含めないが、触れていれば同行可能。身につけているもの以外は運ばれない。(アイテムボックスに入っているものは除く)
 一日四回までの制限あり。(片道を1回とカウントする。つまり往復しようと思えば一日二回できる)

 跳べる場所のリストを見ると、少し細かく設定されていた。
 国境を渡れるチートなので、この国の隣国が表示されているらしい。その数が随分と多くて、俺は首を傾げた。そんなに小さい国が周辺にいっぱいあるのかと思ったのだ。

「竜樹、どう?」
「んー……なんか国名がいっぱいあるんだけど、この国の隣国ってそんなにあるのか?」
「ハン国と国境を接しているのはせいぜい三つぐらいのはずだけど?」

 美鈴も首を傾げた。

「もしかしたら、海の向こうの隣国にも跳べるのかも?」
「そしたらどこまでだって行けそうだな。すげえ!」

 俺は興奮した。
 跳べる位置だが、例としてジャオ国国境線、ジャオ国辺境、ジャオ国都市などと少し細かくなっている。これ、海を隔てた隣国の国境線を指定したら海に落ちるんじゃないだろうか? なんか意地悪だな~。そういうのは自分で調べろってことなのかもしれない。って、どーやってだ。情報をよこせやコラ。

「……国情を調べる必要はありそうじゃのぅ」
「それはそうだな……この世界のことが載ってる百科事典みたいなのがあるといいんだけどなー」

 猫紙の言葉に頷いて呟くと、目の前に何かが現れた。

”世界情報が得られる図書館”という能力を得ますか?

「えええ?」
「竜樹、どうしたの?」

 どうもこの言葉は美鈴には見えていないらしい。猫紙は目を細めた。

「ほほう……そのように便利なちーと能力もあるのじゃな」

 どうやら猫紙には見えているらしい。神様自体がチートだからしょうがないのか。

「なぁに?」

 美鈴の声がキレている。これは早く答えないとまずい。

「いや、俺の目の前にさ、”世界情報が得られる図書館”という能力を得ますか? って文字が出てきててさ……」
「それは……すごいチートね。説明とか見られないの?」
「ちょっと見てみる……」

 能力の説明が見たいと考えたら、目の前にずらずらと説明文が出てきた。
 この図書館は俺と誰か一人までは共有できるらしい。この能力でいうところの”世界”とは、今俺がいる”世界”であり、もし俺がまた別の”世界”に飛ばされた場合はその”世界”の情報が得られるようだ。

「うわ、これもすっげえチートじゃん……」

 情報は多岐に渡る。世界の国の情勢。文化、食べ物、王家の有無、政治のありかた、歴史まであるし、生息する動物や地図、魔物の情報など膨大な知識を得られるようだ。

「最初からこの能力を与えろよ!」

 情報を制すものは世界を制すと言っても過言ではない。
 そう叫んだら、またひらひらと紙のようなものが落ちてきた。さすがにそれは美鈴に取られる前に俺が読んだ。

 はろー、竜樹さん
 異世界ライフ楽しんでますねー
 美鈴さんとの再会おめでとうございます!
 竜樹さん厭世的だったんで、最初から超便利なチートは与えたくなかったんですよねー
 ごめんなさい~
 美鈴さんに無事再会されたのでご祝儀の意味でチートの大盤振る舞いです!
 これからもいろんなことが起こると思うのでがんばってくださいね!
 
 俺は無言で紙をびりびりに破いた。
 この能力さえあれば、俺はもっと早くあの山中から出られて美鈴に会えたのではないだろうか。いや、そんな簡単にはいかないか。でも少なくともあんなに不安は感じなかったに違いない。やはりあの幼女許すまじ!
 つーかアイツ、ヒマなのかよ。俺たちを見てるヒマがあるなら仕事しやがれ。

「なんて書いてあったの?」
「下らないことだよ。これからいろんなことが起こるとか、書いてあったな……」

 それは何らかのトラブルなんだろうか。さすがにげんなりする。

「失礼します。主人が参りました」

 部屋の扉がノックされ、部屋の外に控えていた従業員に声をかけられた。

「どうぞ、入ってもらって」

 美鈴が返事をする。再び扉がノックされ、パンズが大きなおなかを揺らしながら部屋に入ってきた。

「タツキさん、ミレイさん、神様、今よろしいですかな?」
「ええ、大丈夫よ。なにか?」
「はい。役所からリンミンメイさんの後見人になる旨、証明書を発行してもらってまいりました」
「それはよかったわ。でも随分早かったわね」

 パンズは親指と人差し指で丸を作ってみせた。ああ、そういうことか。賄賂でそういうことがどうにかなるなら便利っちゃあ便利だよな。

「じゃあ、これからミンメイを連れ戻しに誰か来たとしても、連れていかれることはないのね」

 美鈴は嬉しそうに笑んだ。美鈴とミンメイが仲良くしてくれるのは嬉しいから、俺も嬉しかった。

「パンズ、ちょうどいいところに来てくれたわ。少し話があるの。私たちの今後と、貴方の未来について」
「はて、なんですかな?」
「それはね……」

 美鈴は自分の考えをパンズに披露した。パンズもそれに同意を示した。
 そして俺は、”世界情報が得られる図書館”の能力も手に入れたのだった。ちなみにこの図書館、一日に調べられるのはトータルで二時間程度らしい。なんで時間制限があるんだよと思ったが、図書館ということもあり、時間制限を付けないと寝食を忘れて能力に没頭してしまうものがいたからという経緯があるようだ。
 まぁ、情報って最大のチートだもんなぁ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

テイムしたトカゲに魔石を与え続けるとドラゴンになりました。

暁 とと
ファンタジー
テイムしたトカゲはドラゴンになる

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...