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39.俺の一番はパラパラ炒飯です
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さすがに夕飯の手伝いを始める前に、美鈴は下ろしてくれた。俺はもう精神的にボロボロである。ううう……すっごく汚された感が強い(なんか違う)
「竜樹、そこから動いてはだめよ。移動は全て私が担うからね?」
「美、美鈴……その……トイレは……」
「トイレに行くぐらいならかまわないわ」
「ありがとう……」
別に鎖とかで繋がれているわけではないが、そうされているようなものだ。猫紙がトンッと俺の膝に乗り、丸くなる。
「おい、猫紙さま。この状況どうにかなんないか?」
美鈴がいなくなったことを確認して、俺は小声で猫紙に尋ねた。
「ならぬな」
猫紙は即答してそっぽを向いた。そして、心の中で話しかけてきた。
〈気をつけよ。美鈴はかなり遠くの音も聞こえるようじゃぞ〉
〈げっ、マジか……〉
どんだけ美鈴の能力って高いんだよ?
「そんな~」
俺はしかたなく猫紙を撫でた。中身はとんでもない神様だけど猫の姿だから手触りは最高なんだよな。
〈そなた、今ろくでもないことを考えてはおらなんだか?〉
〈猫紙さまの気のせいデショー?〉
そう時間も経たずに夕飯の支度が整ったらしい。美鈴が自ら呼びにきた。
「竜樹、夕飯の準備ができたわよ」
にこにこしている。相変わらず目は笑ってなくて怖いのだが……。
「ああ、ありがとう」
ソファから立ち上がろうとする俺を美鈴は手で制した。
「?」
「だめよ? 私が満足するまで自分で動くのは禁止」
美鈴はそう言って当たり前のように俺を抱き上げた。美鈴さま、いいかげん勘弁してください~!
「美鈴……俺はヒロインじゃないぞ」
「そうね。私にとってもヒーローだわ。でもヒーローがヒロインに抱き上げられてはいけないなんて話はないはずよ?」
「ヒロインは普通ヒーローを抱き上げたりはしねえよ!」
あまりの羞恥に俺は叫んだ。
「じゃあ普通じゃないのよ。諦めて?」
「えー……」
猫紙は自分の足で歩いているようだ。美鈴に抱き上げられている俺の腹の上というのはさすがに嫌だが、なんか自分で歩かせてはいけない気がした。
「美鈴……わかった。俺に関しては美鈴の好きにすればいい。でも猫紙さまは丁重に扱ってくれ。頼む」
「……まぁね? 元はといえば私が邪魔をしたからこの二年神様はこの世界に来られなかったのだものね? 猫紙さま、私の肩でも頭でも、乗れるところにお乗りください」
「では乗せてもらおうか」
猫紙はそういうとぴょーんと飛んで、後ろから美鈴の頭を抱えるようにした。猫紙の頭が美鈴の頭の上に乗っている。猫は高いところが好きなんだなということを納得した。美鈴は変わらず笑顔であったが、不機嫌なことはよくわかった。だがしょうがない。美鈴の手は今俺で塞がっているのだから。
「……食堂へ向かうわ。リン・ミンメイさんだったかしら? 彼女には……」
「我が伝えておこう」
猫紙はそう言ったが下りる気配はない。心に呼び掛けているのだろうか。
「……テレパスみたいなものかしら? 便利ね」
「そなたがもう少し我を信用してくれれば、そなたとも使えるようになるが」
「……あまり必要性は感じないわ」
「この世界に来てからの、我の目を通して見る竜樹の姿も見せようと思えば見せられるがのぅ」
「えっ!?」
猫紙がとんでもないことを言いだした。何? 猫紙の目って録画機能とかあるわけ?
「……猫神様……私たち仲良くなれそうね」
「ふっ……もう仲良しじゃろうて」
「そうね……ふ、ふふふ……」
怖い。美鈴も猫紙も怖い。なにその録画機能。俺の姿なんていったい誰が見たいというのか。美鈴はどんだけ俺のこと心配してたんだよー。
そんなことを話しながらやっと食堂に着いた。はっきり言って俺は会話には入っていない。だが美鈴の腕の中という事実は変わらない。まさにSAN値が……と言いたくなる状況である。頼むから俺に自分の足で歩く権利を!
パンズはすでに食堂にいて、俺たちの姿を見ると立ち上がった。満面の笑みである。
「タツキさん、ミレイさん、どうぞ好きなお席におかけください」
「ありがとう」
礼は美鈴が言った。
「ミンメイさんは私の隣に座ってもらうわね」
「はい……」
美鈴には逆らえません。別にミンメイとは何もないんだけどな。男としての矜持とかそんなものはもう一気に地に落ちた。もうどうとでもしてくれと思う。
ほどなくして、ミンメイがやってきた。
「遅くなりまして申し訳ありません!」
ミンメイはすごく恐縮していた。
「気にしなくて大丈夫よ。揃ったわね」
美鈴は笑むと立ち上がった。
「ちょっと作ってくるわね」
「よろしく」
炒飯はやっぱり出来たてじゃないとな。
入れ替わりで使用人が前菜を運んできた。前菜だけで何品も並ぶ。やっぱり中華っぽいんだよな。って衣裳からして中華世界なんだからもう諦めろ俺。
一人ずつ皿が並べられたから、美鈴が食べられないということはないはずだ。このチャーシューっぽいのうまい。
「おまたせ」
それほど時間を置かずに、美鈴が炒飯を作って持ってきてくれた。俺が大好きな美鈴のパラパラ炒飯だ。
「……待ってた」
涙が出そうだった。
あれから二か月と約二週間強。やっと俺は美鈴の炒飯を食べることができたのだった。
「竜樹、そこから動いてはだめよ。移動は全て私が担うからね?」
「美、美鈴……その……トイレは……」
「トイレに行くぐらいならかまわないわ」
「ありがとう……」
別に鎖とかで繋がれているわけではないが、そうされているようなものだ。猫紙がトンッと俺の膝に乗り、丸くなる。
「おい、猫紙さま。この状況どうにかなんないか?」
美鈴がいなくなったことを確認して、俺は小声で猫紙に尋ねた。
「ならぬな」
猫紙は即答してそっぽを向いた。そして、心の中で話しかけてきた。
〈気をつけよ。美鈴はかなり遠くの音も聞こえるようじゃぞ〉
〈げっ、マジか……〉
どんだけ美鈴の能力って高いんだよ?
「そんな~」
俺はしかたなく猫紙を撫でた。中身はとんでもない神様だけど猫の姿だから手触りは最高なんだよな。
〈そなた、今ろくでもないことを考えてはおらなんだか?〉
〈猫紙さまの気のせいデショー?〉
そう時間も経たずに夕飯の支度が整ったらしい。美鈴が自ら呼びにきた。
「竜樹、夕飯の準備ができたわよ」
にこにこしている。相変わらず目は笑ってなくて怖いのだが……。
「ああ、ありがとう」
ソファから立ち上がろうとする俺を美鈴は手で制した。
「?」
「だめよ? 私が満足するまで自分で動くのは禁止」
美鈴はそう言って当たり前のように俺を抱き上げた。美鈴さま、いいかげん勘弁してください~!
「美鈴……俺はヒロインじゃないぞ」
「そうね。私にとってもヒーローだわ。でもヒーローがヒロインに抱き上げられてはいけないなんて話はないはずよ?」
「ヒロインは普通ヒーローを抱き上げたりはしねえよ!」
あまりの羞恥に俺は叫んだ。
「じゃあ普通じゃないのよ。諦めて?」
「えー……」
猫紙は自分の足で歩いているようだ。美鈴に抱き上げられている俺の腹の上というのはさすがに嫌だが、なんか自分で歩かせてはいけない気がした。
「美鈴……わかった。俺に関しては美鈴の好きにすればいい。でも猫紙さまは丁重に扱ってくれ。頼む」
「……まぁね? 元はといえば私が邪魔をしたからこの二年神様はこの世界に来られなかったのだものね? 猫紙さま、私の肩でも頭でも、乗れるところにお乗りください」
「では乗せてもらおうか」
猫紙はそういうとぴょーんと飛んで、後ろから美鈴の頭を抱えるようにした。猫紙の頭が美鈴の頭の上に乗っている。猫は高いところが好きなんだなということを納得した。美鈴は変わらず笑顔であったが、不機嫌なことはよくわかった。だがしょうがない。美鈴の手は今俺で塞がっているのだから。
「……食堂へ向かうわ。リン・ミンメイさんだったかしら? 彼女には……」
「我が伝えておこう」
猫紙はそう言ったが下りる気配はない。心に呼び掛けているのだろうか。
「……テレパスみたいなものかしら? 便利ね」
「そなたがもう少し我を信用してくれれば、そなたとも使えるようになるが」
「……あまり必要性は感じないわ」
「この世界に来てからの、我の目を通して見る竜樹の姿も見せようと思えば見せられるがのぅ」
「えっ!?」
猫紙がとんでもないことを言いだした。何? 猫紙の目って録画機能とかあるわけ?
「……猫神様……私たち仲良くなれそうね」
「ふっ……もう仲良しじゃろうて」
「そうね……ふ、ふふふ……」
怖い。美鈴も猫紙も怖い。なにその録画機能。俺の姿なんていったい誰が見たいというのか。美鈴はどんだけ俺のこと心配してたんだよー。
そんなことを話しながらやっと食堂に着いた。はっきり言って俺は会話には入っていない。だが美鈴の腕の中という事実は変わらない。まさにSAN値が……と言いたくなる状況である。頼むから俺に自分の足で歩く権利を!
パンズはすでに食堂にいて、俺たちの姿を見ると立ち上がった。満面の笑みである。
「タツキさん、ミレイさん、どうぞ好きなお席におかけください」
「ありがとう」
礼は美鈴が言った。
「ミンメイさんは私の隣に座ってもらうわね」
「はい……」
美鈴には逆らえません。別にミンメイとは何もないんだけどな。男としての矜持とかそんなものはもう一気に地に落ちた。もうどうとでもしてくれと思う。
ほどなくして、ミンメイがやってきた。
「遅くなりまして申し訳ありません!」
ミンメイはすごく恐縮していた。
「気にしなくて大丈夫よ。揃ったわね」
美鈴は笑むと立ち上がった。
「ちょっと作ってくるわね」
「よろしく」
炒飯はやっぱり出来たてじゃないとな。
入れ替わりで使用人が前菜を運んできた。前菜だけで何品も並ぶ。やっぱり中華っぽいんだよな。って衣裳からして中華世界なんだからもう諦めろ俺。
一人ずつ皿が並べられたから、美鈴が食べられないということはないはずだ。このチャーシューっぽいのうまい。
「おまたせ」
それほど時間を置かずに、美鈴が炒飯を作って持ってきてくれた。俺が大好きな美鈴のパラパラ炒飯だ。
「……待ってた」
涙が出そうだった。
あれから二か月と約二週間強。やっと俺は美鈴の炒飯を食べることができたのだった。
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