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35.鳥を持って再び王城へ
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バイ鳥の一羽分は猫紙のものになったようだ。パンズが肩を落としていたのが気の毒だった。
他にも鳥は狩ったからそれで我慢してもらいたい。
商会に戻ったらまたお茶が用意された。いったい一日に何回お茶をするんだろう。そろそろおなかががぽがぽになりそうだと思ったが、ミンメイが嬉しそうなので気にしないことにした。
王都に来るまでとはいえ、この少女にはとても世話になった。本来なら礼を渡して村に返してやるべきなのかもしれないが、猫紙は首を振った。
「我を信仰する者を離すわけにはいかぬ。それに、この娘は村へ帰りたいとは一欠けらも思ってはおらぬ」
そんなことを前に猫紙が言っていた。今猫紙に必要なのは信仰心だ。信仰心が多ければ多いほど猫紙は力を持つ。そしてその力を行使して魔法のようなことを行うのだ。
〈失礼なことを申すでない。神の力じゃ〉
〈頭の中まで覗かないでいただけますかねぇー〉
ミンメイの膝でくつろいでいる猫紙に心の中で文句を言った。
パンズはいろいろ指示をしてから戻ってきた。そして俺に深々と頭を下げた。
「タツキ様、本当にありがとうございます。鳥はみな上質のものでございました。ミレイ様を助け出した際には精いっぱいお守りしますのでどうかこちらにしばらくご滞在願えませんでしょうか」
そんなに頭を下げられるような働きはしていない。俺はさすがに戸惑った。思わず猫紙に縋るような目を向けてしまった。
〈……そなたが求めるものはなんじゃ〉
猫紙はうっすらと目を開けたがすぐに閉じた。そんなことぐらい自分で決めろと言うように。
それもそうだった。この旅は美鈴を取り戻す為のものだ。
「……今はまだお約束はできません。まずは美鈴に会って、どうしたいかを聞いてからです。俺から離れたいとか、そういうことは聞くつもりはありませんけど」
この世界では二年が経っていると聞いているから、ちょっと不安ではある。でもまずは美鈴に会ってからだと思った。美鈴は残された俺を案じていたとあの幼女は言っていた。明日が本当に待ち遠しくてならなかった。
翌日、パンズの付き添いのような形でまた王城へ向かうこととなった。俺の腕の中には三毛猫が収まっている。
猫紙は昨日のうちにいろいろパンズに言いつけていた。昨夜どう動くのかを確認もしてある。ちなみにミンメイは今日も留守番だ。昨日と似た衣裳を着せられた俺を見て、
「今日もとてもお似合いです!」
と目をキラキラさせて言ってくれた。中身が伴ってなくて申し訳ないなと少し居心地が悪かった。
段取りとしてはこうだ。パンズだけが鳥を献上しに来たとしたらせいぜい侍従長までしか出てこないという。(侍従長が出てくるのもすごいとは思う)王子を引っ張り出すのは難しかろうが俺と猫紙が行けば王が出てくる、もしくは王の側近が顔を出す可能性が高いということで同席することになった。
身分の高い者が出てくればあとは猫紙の独壇場だ。
王子でなければ猫紙の言葉をありがたく聞くだろう。もちろんそれだけではなく根回しもされているようだ。そうじゃなきゃのこのこここまでこれないよな。顔を出すのもいわゆる大人の事情というやつだ。
バイ鳥とロホロホ鳥というのは俺が思っていたよりも貴重なものだったようだ。
ただ、昨日は俺もより堂々と飛んでいる鳥を選んだ。そのせいか落とした鳥はどれもなかなかの大きさだった。今回王に献上する為に持ってきたバイ鳥とロホロホ鳥は俺から見てもなかなかに立派なものだ。
この国(?)で飛んでいる鳥はとても高いところを飛ぶ。低いところを飛んでいるのは身が少なそうな小さい鳥ばかりだ。大きい鳥は弓矢で狙いにくいところを飛んでいるから俺の紐にはとても無防備で、引っかかればすぐに落ちてくる。ようはまだ擦れていないのだ。
鳥だけでなく運命の神様も来たという知らせがいったのか、俺たちはすぐに昨日も通された建物へ連れて行かれた。あ、これまた銅鑼がバーンバーンと鳴らされるパターンなんじゃ? と思ったが今日は叩く人はいないようだった。ケイ王が来たことに変わりはなかったが、昨日と違いいろいろ省略されていたので内心ほっとした。
王は貢物である鳥を見ると目を輝かせた。そして上機嫌で鳥を獲ったのは誰かと聞いた。
「これらの鳥を捕らえましたのは、運命を司る神様の加護を受けていらっしゃるタツキ様でございます」
「ほぅ……神の加護とはそなに素晴らしいものか」
王は感嘆の声を上げた。
「こなに素晴らしい鳥をいただけるとは……褒美を取らせたいと思うがどうか」
王の側にいる人も「それがよろしいかと」と頷いて同意した。だがそれに猫紙は首を振った。
「褒美は必要ない。それよりも我の言葉を聞け」
「は……」
王様たちは目を丸くした。そして俺の腕の中の三毛猫を凝視する。視線の先が俺の腕の中だとわかっていても一瞬怯みそうになった。猫紙の前足が俺の腕に触れた。
〈そなたは美鈴のことでも考えておるがよい〉
安心させてくれる腕の中の存在を、少しだけ頼もしく思った。
「昨日会った王子じゃが、本来であれば運命が交差しない者と共におる。その者を引き離しここへ連れて参れ。さすれば破滅への道は遠くなるじゃろう」
猫紙が厳かに告げた。
王はそれを聞き、一気に顔を青ざめさせた。
「神よ……運命が交差しない者の処分は……」
「処分はせぬ。王子が手元から離さぬ女性は本来このタツキの伴侶である。丁重に扱え」
「承知しました!」
王は猫紙に跪いた。
それからの周りの行動は早かった。すぐに衛士が集められた。王の側に控えていた厳つい人は何やら巻物のようなものを他の人から受け取り、
「これよりフン王子の元へ参る!」
と高らかに宣言した。こんなに大声で言って大丈夫なのかなと少し心配になったが、猫紙に前足で腕を叩かれたので大丈夫だと信じることにした。あの王子、フン王子っていうのか。
〈タツキ、我らも参るぞ〉
〈え?〉
〈王子の破滅への道を更に遠ざける為、我らも参ろう〉
猫紙が勝手に宣言する。
えええ、俺ここで待ってちゃいけないのかよ。そう思ったが当事者には違いないのでついていくことにした。だって王様たちがえらく感激してるんだもん。くそう、ええ行きますよ。行けばいいんだろっ!(ヤケ)
他にも鳥は狩ったからそれで我慢してもらいたい。
商会に戻ったらまたお茶が用意された。いったい一日に何回お茶をするんだろう。そろそろおなかががぽがぽになりそうだと思ったが、ミンメイが嬉しそうなので気にしないことにした。
王都に来るまでとはいえ、この少女にはとても世話になった。本来なら礼を渡して村に返してやるべきなのかもしれないが、猫紙は首を振った。
「我を信仰する者を離すわけにはいかぬ。それに、この娘は村へ帰りたいとは一欠けらも思ってはおらぬ」
そんなことを前に猫紙が言っていた。今猫紙に必要なのは信仰心だ。信仰心が多ければ多いほど猫紙は力を持つ。そしてその力を行使して魔法のようなことを行うのだ。
〈失礼なことを申すでない。神の力じゃ〉
〈頭の中まで覗かないでいただけますかねぇー〉
ミンメイの膝でくつろいでいる猫紙に心の中で文句を言った。
パンズはいろいろ指示をしてから戻ってきた。そして俺に深々と頭を下げた。
「タツキ様、本当にありがとうございます。鳥はみな上質のものでございました。ミレイ様を助け出した際には精いっぱいお守りしますのでどうかこちらにしばらくご滞在願えませんでしょうか」
そんなに頭を下げられるような働きはしていない。俺はさすがに戸惑った。思わず猫紙に縋るような目を向けてしまった。
〈……そなたが求めるものはなんじゃ〉
猫紙はうっすらと目を開けたがすぐに閉じた。そんなことぐらい自分で決めろと言うように。
それもそうだった。この旅は美鈴を取り戻す為のものだ。
「……今はまだお約束はできません。まずは美鈴に会って、どうしたいかを聞いてからです。俺から離れたいとか、そういうことは聞くつもりはありませんけど」
この世界では二年が経っていると聞いているから、ちょっと不安ではある。でもまずは美鈴に会ってからだと思った。美鈴は残された俺を案じていたとあの幼女は言っていた。明日が本当に待ち遠しくてならなかった。
翌日、パンズの付き添いのような形でまた王城へ向かうこととなった。俺の腕の中には三毛猫が収まっている。
猫紙は昨日のうちにいろいろパンズに言いつけていた。昨夜どう動くのかを確認もしてある。ちなみにミンメイは今日も留守番だ。昨日と似た衣裳を着せられた俺を見て、
「今日もとてもお似合いです!」
と目をキラキラさせて言ってくれた。中身が伴ってなくて申し訳ないなと少し居心地が悪かった。
段取りとしてはこうだ。パンズだけが鳥を献上しに来たとしたらせいぜい侍従長までしか出てこないという。(侍従長が出てくるのもすごいとは思う)王子を引っ張り出すのは難しかろうが俺と猫紙が行けば王が出てくる、もしくは王の側近が顔を出す可能性が高いということで同席することになった。
身分の高い者が出てくればあとは猫紙の独壇場だ。
王子でなければ猫紙の言葉をありがたく聞くだろう。もちろんそれだけではなく根回しもされているようだ。そうじゃなきゃのこのこここまでこれないよな。顔を出すのもいわゆる大人の事情というやつだ。
バイ鳥とロホロホ鳥というのは俺が思っていたよりも貴重なものだったようだ。
ただ、昨日は俺もより堂々と飛んでいる鳥を選んだ。そのせいか落とした鳥はどれもなかなかの大きさだった。今回王に献上する為に持ってきたバイ鳥とロホロホ鳥は俺から見てもなかなかに立派なものだ。
この国(?)で飛んでいる鳥はとても高いところを飛ぶ。低いところを飛んでいるのは身が少なそうな小さい鳥ばかりだ。大きい鳥は弓矢で狙いにくいところを飛んでいるから俺の紐にはとても無防備で、引っかかればすぐに落ちてくる。ようはまだ擦れていないのだ。
鳥だけでなく運命の神様も来たという知らせがいったのか、俺たちはすぐに昨日も通された建物へ連れて行かれた。あ、これまた銅鑼がバーンバーンと鳴らされるパターンなんじゃ? と思ったが今日は叩く人はいないようだった。ケイ王が来たことに変わりはなかったが、昨日と違いいろいろ省略されていたので内心ほっとした。
王は貢物である鳥を見ると目を輝かせた。そして上機嫌で鳥を獲ったのは誰かと聞いた。
「これらの鳥を捕らえましたのは、運命を司る神様の加護を受けていらっしゃるタツキ様でございます」
「ほぅ……神の加護とはそなに素晴らしいものか」
王は感嘆の声を上げた。
「こなに素晴らしい鳥をいただけるとは……褒美を取らせたいと思うがどうか」
王の側にいる人も「それがよろしいかと」と頷いて同意した。だがそれに猫紙は首を振った。
「褒美は必要ない。それよりも我の言葉を聞け」
「は……」
王様たちは目を丸くした。そして俺の腕の中の三毛猫を凝視する。視線の先が俺の腕の中だとわかっていても一瞬怯みそうになった。猫紙の前足が俺の腕に触れた。
〈そなたは美鈴のことでも考えておるがよい〉
安心させてくれる腕の中の存在を、少しだけ頼もしく思った。
「昨日会った王子じゃが、本来であれば運命が交差しない者と共におる。その者を引き離しここへ連れて参れ。さすれば破滅への道は遠くなるじゃろう」
猫紙が厳かに告げた。
王はそれを聞き、一気に顔を青ざめさせた。
「神よ……運命が交差しない者の処分は……」
「処分はせぬ。王子が手元から離さぬ女性は本来このタツキの伴侶である。丁重に扱え」
「承知しました!」
王は猫紙に跪いた。
それからの周りの行動は早かった。すぐに衛士が集められた。王の側に控えていた厳つい人は何やら巻物のようなものを他の人から受け取り、
「これよりフン王子の元へ参る!」
と高らかに宣言した。こんなに大声で言って大丈夫なのかなと少し心配になったが、猫紙に前足で腕を叩かれたので大丈夫だと信じることにした。あの王子、フン王子っていうのか。
〈タツキ、我らも参るぞ〉
〈え?〉
〈王子の破滅への道を更に遠ざける為、我らも参ろう〉
猫紙が勝手に宣言する。
えええ、俺ここで待ってちゃいけないのかよ。そう思ったが当事者には違いないのでついていくことにした。だって王様たちがえらく感激してるんだもん。くそう、ええ行きますよ。行けばいいんだろっ!(ヤケ)
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