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34.魔法は使えないけど投げることはできる

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またも二か月ぶりの更新です。亀でごめんなさいー(汗
お気に入り100名様とても嬉しいですー。ありがとうございます!
ーーーーー



 馬車は王都を囲む城壁の外に向かった。確かにその方が紐も思う存分投げられそうである。
 さすがに王都の中で紐を投げるのはためらわれた。両端に石が括りつけられている紐である。もし間違って当たった場合、打ちどころが悪ければ死にそうだ。

「生きてる方がいいんですかね?」
「今日はどちらでもかまいません。いやあ~嬉しいですなぁ……」

 パンズが馬車の中で身体を揺らした。おっさん、その太ってる身体を揺すられたら馬車も揺れるから勘弁してくれ。

「パンズよ、揺らすでない」
「はっ、これは失礼いたしました!」

 猫紙がちょうどよく迷惑そうに言ってくれた。パンズは揺れるのを止めた。猫紙さま、さまさまである。

〈……そなたまた失礼なことを考えてはおらなんだか?〉
〈ヤダナー。猫紙サマノキノセイデスヨー〉

 思ったことまで感じ取られるとかどうなってるんだ。まぁそれだけ猫紙と繋がってる証拠のようなものなんだろうけど。
 もう少しプライバシーに配慮していただきたいものだ。
 ちなみにパンズが馬車を向けたのは北門である。北門は夕方までは開いているそうだ。北門から少し馬車を走らせるともう荒涼な大地が広がっていた。どこまでも見渡せるかんじだった。
 ホント、村とか都市の間ってなんもないよなー。ここって王都なのにちょっとでも離れたら何もないっていったい……。

「さあさあタツキさん、こちらならどうでしょうか?」
「そうですね……意外と飛んでますね」

 馬車から下りて空を見上げると、ちらほら鳥が飛んでいるのが見えた。鳥たちは絶対届かないだろうというように悠然と飛んでいる。

「うーん……」

 土地が広すぎてちょっと距離感が掴めない。

「何度か失敗するとは思うんですけど、待っていてもらえますか?」
「わかりました」

 パンズは道の端に馬車を改めて移動させると、その側に卓と椅子を用意させた。暑いということもあってか、ビーチパラソルのような傘も用意されている。猫紙を抱いたままのミンメイが椅子に腰掛けさせられ、すぐにお茶を用意されていた。
 なんか優雅だよなぁ。こっちは鳥狩りだってのに。
 別にそれをどうのこうの言うつもりはないのでとても高いところを飛んでいる鳥に狙いを定めた。進む方向を予測して紐を投げる。
 ヒュン! と小気味いい音がして、紐が飛んでいった。

「チッ!」

 さすがに一回では無理なようだった。俺はとっとと移動して、用意していた二本目を投げた。

「……よし」

 今度はうまく身体に絡みついたようで、よたよたと動きがおかしくなった鳥が落ちてきた。それをヨウシュウ商会の従業員が網で拾う。

「おおおーーーっ! さすがタツキさんです!」
「タツキさん、すごい!」
「バイ鳥じゃな。内臓がなかなかうまくてのぅ……」

 見なくても猫紙が舌なめずりしているのがわかった。頼むから食いつくのは後にしてくれ。一羽ぐらいは譲るし。

「どんどん投げるけど……そういえば連絡用の鳥みたいなのも飛んでるんじゃなかったっけ? 俺、さすがに足とかについてる印みたいなのってわかんないよ?」
「……しょうのない奴じゃ」

 いや、それ、しょうがないとかじゃないよな?
 猫紙はミンメイの膝から下りると俺の側に来た。

「どれじゃ」
「あれは?」

 指をさす。猫紙はちら、と見てすぐに返事をした。

「よい」
「わかった」

 狙いを定めて再び紐を投げる。投げた時の爽快感がたまらない。そしてそれに鳥がかかればなおよかった。
 何回か失敗したが、それを補うぐらいの爽快感を求めた。そんな風に夢中になって紐を投げ続けたら、なんと八羽もでかい鳥が獲れた。
 ロホロホ鳥も獲れたし、バイ鳥の二羽目も、そして名前を知らない鳥も何羽か。指示をしてくれたのはありがたかったが、猫紙の口元がかなりやばい。そろそろ涎が垂れそうだぞ?

「いやあ~、タツキさんは素晴らしい狩人です! これからもずっと商会にいてほしいぐらいです!」

 パンズが揉み手して俺を迎えた。王城に持って行くのはバイ鳥とロホロホ鳥にするらしい。お金はしっかり払ってくれると保証してくれた。
 狩人って評価がちょっとアレだが、他に何かをしてるわけじゃないしな。今はまだ狩人ということで諦めよう。
 失敗した紐を回収し、鳥に絡みついた紐も返してもらった。もっと紐を作ってもいいかもしれない。割れた石は交換しないとな。
 さすがにあれだけ集中して投げたら汗をかいたようだった。
 猫紙は鳥がしまわれると垂れていた涎をなかったことにしたようで、ミンメイの膝に戻って気持ちよさそうに目を伏せた。干し肉をミンメイからもらって満足そうに噛んでいる。こうして見るとやっぱりただの三毛猫だ。
 ミンメイの隣に腰掛けてお茶とお茶菓子をもらった。

「鳥はすぐに献上した方がいいんですよね?」
「はい、明日にでも献上しましょう」

 その際はまた王城に上がることになるだろう。
 そろそろ王都の門が閉まる時間だということで、俺たちは慌てて戻ったのだった。
 美鈴、頼むからあともう少しだけ待っててくれよ。
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