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12.へー、この世界って魔法あるんだ。で、俺は?
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〈……ふむ、なかなかに複雑そうじゃの〉
この家でのミンメイの扱いがあまりよくなさそうだったので、実は猫紙に彼女を監視してもらっていた。猫紙は本当に優秀で、映像だけでなく音まで聞き取ることができ、まるでその場にいるように見ることができるらしい。これは昨日俺が鳥を捧げたからできるようになったんだとか。神さまは供物や信者の数で力が増減するってのは本当なんだな。
用意された部屋に戻り、猫紙にミンメイが置かれた情況を聞く。監視はあるが盗聴はされていないらしい。機械がないのにどうするんだって? それはほら、床下に人が潜むとか部屋の壁にコップ当てるとかさ。あとはこの世界、なんと魔法があるらしい。
「我が火種を出したじゃろう」
そういえば猫紙が火を出した時ミンメイはそれほど驚いた様子を見せなかった。魔法が使えるかどうかは生まれながらの才能によるもので、才能がない者は何をやっても無駄なんだとか。ちなみに俺は魔法の才能が全くないらしい。泣くぞ。
「つまり、この村にも魔法を使える奴がいるんだな」
「あの子どもの兄には少しばかり素質があるようじゃ。火を少し扱えるようじゃな」
「じゃあミンメイも使えるのか?」
「魔法の才で言えばあの子どもの方が上じゃ。だが全く訓練をしておらん。自分が魔法を使えるということも知らんじゃろう」
「へー。じゃあ教えてもらえば使えるようになるのか」
「うむ」
ミンメイの情況を整理してみる。
村長には息子(ミンメイの兄)と娘(ミンメイ)がいる。二人は腹違いで、二人の母は共に亡くなっている。ミンメイの母は兄に毛嫌いされており、母が亡くなってからミンメイは毎日「出て行け」と言われているらしい。兄には妻がおり、その妻が来てからミンメイは家の下働きをしている。
「いったいどこのシンデレラだよ……」
かわいそうすぎて泣けてくる。ミンメイのお母さんを嫌っていたとしてもミンメイにつらく当たるとかありえない。
「それだけではなさそうじゃがのう……」
「え、何? なんかあんの? もしかして……」
俺はなんとなくドロドロした展開を予想してみた。例えば兄は父親の後妻に懸想してて、ミンメイのことも好きなんだけど兄妹だから手を出さないように自制してつらくあたってるとか。
「そうかもしれぬのう」
「え? マジで?」
ミンメイが自分の部屋に戻り寝入った後、兄が訪ねてきたらしい。扉をそのまま開けようとして鍵がかかっていることを知ったのか舌打ちしているという。
「……マジか」
さすがに引く。
「あの兄嫁は夫の心情を理解しているようじゃな。故に引き離すつもりで下働きをさせているのじゃろう」
「こわっ。兄嫁さんが近親相姦を食い止めてるのかー」
「ああいう男だから、万が一バレたとしても妹のせいにしそうだしのう」
「サイテーだな。そしたらやっぱ連れ出すのは正解か」
俺は舌打ちした。もしかしてあの兄さん、自分の気持ちに気づいてないんじゃないか? それで妹につらく当たってるとか? つっても自覚があっても怖いけどなー。ドロドロしすぎてやだやだ。
「うむ。そなたが連れていくことであの子どもは我を信仰するようになろう。さすれば我の力も増すというもの」
「信者獲得目的かよ」
「何を言う! 我はそなたの守り神じゃぞ。力がなければそなたを守ることができぬではないか」
「難しすぎてわっかんね」
「……阿呆じゃの」
とうとうあほとか言われた。
そんなことを言い合いながら寝て、ベッドの上で起きるとかサイコーだった。
「文明とは素晴らしい!」
「……何を阿呆なことを言っているのか」
猫紙に呆れられたようだがそんなのどうでもいい。さあて朝飯食ったらまた旅に出る準備だ準備。
ーーーーー
※〈〉内の会話は頭の中でされています。念話とかそういう類です。
この家でのミンメイの扱いがあまりよくなさそうだったので、実は猫紙に彼女を監視してもらっていた。猫紙は本当に優秀で、映像だけでなく音まで聞き取ることができ、まるでその場にいるように見ることができるらしい。これは昨日俺が鳥を捧げたからできるようになったんだとか。神さまは供物や信者の数で力が増減するってのは本当なんだな。
用意された部屋に戻り、猫紙にミンメイが置かれた情況を聞く。監視はあるが盗聴はされていないらしい。機械がないのにどうするんだって? それはほら、床下に人が潜むとか部屋の壁にコップ当てるとかさ。あとはこの世界、なんと魔法があるらしい。
「我が火種を出したじゃろう」
そういえば猫紙が火を出した時ミンメイはそれほど驚いた様子を見せなかった。魔法が使えるかどうかは生まれながらの才能によるもので、才能がない者は何をやっても無駄なんだとか。ちなみに俺は魔法の才能が全くないらしい。泣くぞ。
「つまり、この村にも魔法を使える奴がいるんだな」
「あの子どもの兄には少しばかり素質があるようじゃ。火を少し扱えるようじゃな」
「じゃあミンメイも使えるのか?」
「魔法の才で言えばあの子どもの方が上じゃ。だが全く訓練をしておらん。自分が魔法を使えるということも知らんじゃろう」
「へー。じゃあ教えてもらえば使えるようになるのか」
「うむ」
ミンメイの情況を整理してみる。
村長には息子(ミンメイの兄)と娘(ミンメイ)がいる。二人は腹違いで、二人の母は共に亡くなっている。ミンメイの母は兄に毛嫌いされており、母が亡くなってからミンメイは毎日「出て行け」と言われているらしい。兄には妻がおり、その妻が来てからミンメイは家の下働きをしている。
「いったいどこのシンデレラだよ……」
かわいそうすぎて泣けてくる。ミンメイのお母さんを嫌っていたとしてもミンメイにつらく当たるとかありえない。
「それだけではなさそうじゃがのう……」
「え、何? なんかあんの? もしかして……」
俺はなんとなくドロドロした展開を予想してみた。例えば兄は父親の後妻に懸想してて、ミンメイのことも好きなんだけど兄妹だから手を出さないように自制してつらくあたってるとか。
「そうかもしれぬのう」
「え? マジで?」
ミンメイが自分の部屋に戻り寝入った後、兄が訪ねてきたらしい。扉をそのまま開けようとして鍵がかかっていることを知ったのか舌打ちしているという。
「……マジか」
さすがに引く。
「あの兄嫁は夫の心情を理解しているようじゃな。故に引き離すつもりで下働きをさせているのじゃろう」
「こわっ。兄嫁さんが近親相姦を食い止めてるのかー」
「ああいう男だから、万が一バレたとしても妹のせいにしそうだしのう」
「サイテーだな。そしたらやっぱ連れ出すのは正解か」
俺は舌打ちした。もしかしてあの兄さん、自分の気持ちに気づいてないんじゃないか? それで妹につらく当たってるとか? つっても自覚があっても怖いけどなー。ドロドロしすぎてやだやだ。
「うむ。そなたが連れていくことであの子どもは我を信仰するようになろう。さすれば我の力も増すというもの」
「信者獲得目的かよ」
「何を言う! 我はそなたの守り神じゃぞ。力がなければそなたを守ることができぬではないか」
「難しすぎてわっかんね」
「……阿呆じゃの」
とうとうあほとか言われた。
そんなことを言い合いながら寝て、ベッドの上で起きるとかサイコーだった。
「文明とは素晴らしい!」
「……何を阿呆なことを言っているのか」
猫紙に呆れられたようだがそんなのどうでもいい。さあて朝飯食ったらまた旅に出る準備だ準備。
ーーーーー
※〈〉内の会話は頭の中でされています。念話とかそういう類です。
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