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8.異世界に行ったらまずはよくある展開。子どもに遭遇しました

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 お互い固まったり、猫がしゃべってる! と子どもが興奮したり、あやしい者ではないとお互いに確認したりしてやっと川で子どもを洗うということになった。この辺りのやりとりのおかげですっかり暗くなってしまったが、川辺で火を起こしたのでかろうじて水浴びはできそうだった。
 子どもの服はところどころ破けていたり、草の汁やどろがついていたがかろうじて着れないことはなさそうだった。森の中で裸とか危険極まりない。
 ちなみに俺の服は緑色っぽい長袖の裾の長い貫頭衣とズボンである。この服は世界の狭間で構築されたものなのであらゆる世界の影響を受けないというチートの塊のようなものだ。破れないし汚れない。もちろん濡れることもないのでタオルの代わりにはならないが水気を軽く取り除くぐらいには使える。一応紐や繊維として使える植物は見つけたが、繊維にするのには時間がかかるのでまずは人里を探す方を優先したのだ。
 そんなわけで川辺で火を焚きつつ、子どもと子どもの服を洗い、服が乾くまで俺の上着を貸すことにした。火種は猫紙が出してくれるのでそれだけでもかなり助かっている。
 ちょうどいい石に子どもを腰掛けさせ、とりあえず大きめのミニトマトもどきを渡す。見た目ミニトマトっぽいのにすごく甘いのが、俺的に不思議な果物だ。

「……ええと、食べても……?」
「食べるがよい」

 俺が答える前に猫紙が答えた。果物を出したのは俺だぞ。
 子どもは猫紙がしゃべったことで目を見開いたが、食欲には勝てなかったらしくおそるおそる果物にかじりついた。

「!?」

 子どもは驚いたように目を見開き、ぺろりとその果物を食べてしまった。そして俺に期待の眼差しを向ける。

「はいよ。よく噛んで食べるんだぞ」

 苦笑しながらもう1個、もう1個と渡し、都合4個食べさせた。また採ってこないといけないな。

「はーー……」

 子どもは口の周りを汁でべたべたにしたまま満足そうに息を吐いた。

「腹は膨れたかの?」
「はい! ありがとうございます!」

 木の皮と蔓、葉っぱを組み合わせて作ったコップにお湯を入れて渡す。すぐに飲まないとじわじわ漏れてくるのが難点だが俺の技術ではこれぐらいしか作れない。一つところに落ち着ければもっとじっくり何かを作れるとは思うけど。

「君、名前は? どこから来たの?」

 そう尋ねると子どもは居住まいを正した。

「失礼しました。私はミンメイといいます。この川の流れていく方向にあるイー村に住んでいます」

 俺は猫紙を見た。やはりこちらの方向に村があるらしい。よし、希望がでてきたぞ! 俺は内心ガッツポーズをした。

「俺はタツキ、こっちは俺の守り神の猫紙さまだ。この森? いや山かな。上の方でずっと暮らしてたんだけど人に会いたくなって下りてきたんだ。何もわからないからいろいろ教えてもらってもいいかな」
「そうだったのですか。助けていただき、ありがとうございます」

 子どもはほっとしたように呟き、頭を下げた。礼儀正しい子である。
 猫紙が側にいることで多少は気が紛れているようだが、俺を警戒はしているようだった。うん、まぁ知らない人を簡単に信用しちゃいけないよね。
 子どもからいろいろ聞き出した結果、下流に向かって半日ほど進めばイー村があること、イー村は人口が百人程で、そのうち未成年は十人ほどいるらしい。子どもが何故こんなところにいたかというと、付き添いの大人と子どもたちで木の実を採りに来たのだという。夢中になって採っているうちに奥へ奥へと入ってきてしまったようで、小さめの狼に襲われそうになり、皆とは散り散りに逃げたらしい。

「狼は私を追いかけてきました。ですがどういうわけか途中でいなくなりました。もしかしたらもっといい獲物を見つけたのかもしれません」

 俺は猫紙を見やった。おそらく猫紙の力で危険な生き物はこの近くにはこられなかったようだ。猫紙さまさまである。

「そうか。助かってよかったな」
「はい。タツキさんと猫神さまにもお会いできてよかったです。本当にありがとうございます、助かりました。夜が明けたら村にご案内します」

 子ども―ミンメイはすごくよくできた子だと思う。多分村長の家の子とかなのだろうな。
 ミンメイはやがてこっくりこっくりと船を漕ぎはじめた。逃げてきたことでとても疲れたのだろう。枯葉を敷き詰めたところへミンメイを寝かせ、俺と猫紙はミンメイの服が乾くまでこれからのことを話し合った。
 そうして異世界四日目の夜は更けていった。



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副題「猫神さまと行く異世界ライフ」を追加しました。
まったりですみません。
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