上 下
6 / 6

不安

しおりを挟む
テストが終わり…次にくるイベントに備えて準備を進めていた。
俺の…初めてできた恋人だから慎重に準備を進めていきたい。

「おーい、ホームルーム終わっただろ?帰ろうぜ?」
「あぁ、悪い…今日ちょっと用事あって先に帰っててくれ!」

教室のドアから顔を覗かせ一緒に帰ろうと誘ってくる。
学校の下駄箱まで送ると、急いで教室に戻る。

「あれ?一緒に帰った訳じゃなかったのか!!w」
「ま、まぁな…たまにはいいだろ?バラバラでも」
「たまには、俺らの相手もしてくれよ?」



1人でゆっくりとたまに後ろを確認して「歩くの早いってー」と追いかけて来るかもしれないと期待しながら歩く。家に着くギリギリまでドキドキして歩いていた。

「本当に1人で、帰ってきてしまった…あいつと居る時間って特別だったのか…」

自分の1人部屋はいつもより狭く、どこか心寂しい気持ちになる。思わず、携帯に手が伸びる。
携帯の電話帳を開き、番号を見ては消してを繰り返す。

「はぁ、なに女々しい事してんだ。連絡してみたらいいだろ!」

携帯に手を伸ばし画面に指を乗せると着信画面に恋人の名前が表示される。

「おぉ、びっくりした。電話か…」

ひと息ついてから携帯を持ち上げ電話をとる。

「もしもし?家、着いたか?」
「……う、うん。着いて漫画読んでたとこ」と変な嘘をついてしまう。

(やべー変に緊張する…嘘ついたし…)

「そうか!!何読んでたの?」
「へ?あ、えっと…漢の武道道。4巻…お前は?用事、終わったのか?」
「漢の武道道か!面白いよな!!また、読ませてくれよ」
「あぁ、また家に来いよ。いつでも貸してやる」
「えっと…じゃ!また、明日学校でな!!」
「え…あ、またな…」

(用事についてはスルーされたな…明日、聞いてみていいかな?)

翌朝、雨が降る中いつも通り迎えに行く。

「おはよう!!どうした?浮かない顔だな?」
「え…?そんなことは、…ない。お前も今日は早いな、どうした?」
「そっか。あぁ、待たせるのは悪いかなって思って…はは」

(変に気まずい空気だな…聞きづらい…) 

ザワザワする気持ちを抑えて学校に到着する。

「またな…」と教室のドアを開けようと手を伸ばす。
「あ…あのさ、今日も放課後。忙しくて一緒に帰れないや!ごめん」
「そ、そっか…わかった。頑張れよ」と声を絞り出す。

(寂しい、一緒に居たい…と伝えたら迷惑だろうか?) 



教室の前で「一緒に帰れない」と伝えた時、今まで見たことがない寂しそうな顔をしていた。
いつもなら、「なに子犬みたいな顔してんだ?」と馬鹿にしてくるのはあっちなのに…

「……同じ顔してたじゃんか」と小さく呟く。

遠くから「おーーい!」とクラスメイトが呼んでくる。

「おはよ!今日もするのか?」
「あ!!馬鹿。声がでけーよ!」
「ん?あぁ、わりい…」

親しくクラスメイトと話す姿を見つめる。

「何の話だ?」
「い、いや…何でもないよ!!気にしないでくれ!」とクラスメイトの背中を押して教室に入って行こうとする。
「待て!!」と入って行くあいつの腕を咄嗟に掴む。
「へ!?」

腕を掴み、予鈴が鳴るのもお構いなしに廊下を走る。
今は使われていない空き教室にたどり着く。
ガラガラ…バンッ!勢いよくドアを閉める。

「な、なぁ…痛いって…どうした?」
「………どうした?それは、俺の言葉だ!!」
「大丈夫だって!!別に何もしてない!!」
「…い…い…一緒に居たい…寂しいなんて、迷惑か?」
「!!?……迷惑なんかじゃ…ないよ」
「じゃあ、どうして何をしているのか話してくれないんだ?」
「そ、それは…ごめん。今は話せない…」
「そう…か」
「あ…明日!!明日の放課後、俺ん家で!話すよ」と両手を大きく広げハグをしようと伝える。

あいつにハグをされただけなのにこんなに安心出来るなんて…俺も弱くなったな。
翌日の学校はずっとソワソワして過ごしていた。放課後になり、いつもより早く帰り道を歩いて帰ると「ちょっと待ってて」と玄関で待たされる。

「お待たせ、いいぜ!部屋…行こう?」
「お、おう…」

階段を上がると「目、瞑ってくれないか?」と言われ戸惑ったが緊張してたせいか素直に目を瞑る。
ガチャッ…とドアが開く音が聞こえる。

「な、なんだ?」
「はは…ドア開けただけだよ。さ、一歩前に」とゆっくりドアを閉める。
「おぉ、そっか。変なことするなよ?」

一歩前に出るとパーンとクラッカーを鳴らされびっくりして目を開ける。
目を開けた先にHAPPY Birthdayと書かれたパーティーフラッグが飾られている。

「誕生日、おめでとう!!!」
「え?た、誕生日??」
「そうだよ!今日は、お前の誕生日だろ?だから、こっそり準備してたんだ!」
「今までの用事ってまさか…この為に??」
「そうだってー!!なのに、凄い怒るから…俺が浮気でもしてると思ったのか?」
「当たり前だろ!コソコソとクラスメイトの奴と話してるし、訳を聞いても話してくれないから不安だった」
「ごめんな?初めての恋人の誕生日だから盛大にしたくて…驚いたか?」
「驚いたよ、お前の誕生日は覚えとけよ?」
「おう!!期待してるぜ!!」

空き教室でしてくれたように「ありがとう!!!幸せだ」と強く抱きしめる。





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

俺のストーカーくん

あたか
BL
隣のクラスの根倉でいつもおどおどしている深見 渉(ふかみわたる)に気に入られてしまった中村 典人(なかむらのりと)は、彼からのストーカー行為に悩まされていた。 拗らせ根倉男×男前イケメン

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

その関係はこれからのもの

雨水林檎
BL
年下わんこ系教師×三十代バツイチ教師のBL小説。 仕事中毒の体調不良、そんな姿を見たら感情があふれてしまってしょうがない。 ※体調不良描写があります。

処理中です...