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18話
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evil殲滅作戦から数日後。
蔵馬と六道寺は殲滅作戦の合同報告会議に出席していた。
同席するのは第六都市管理局1課~6課の指揮長及び、司令部の人間だ。
第六都市13、14エリアevil殲滅作戦は失敗に終わった。
旧evilの指導者、丹波総一郎は死亡。だが、結果的に新たな脅威を生み出すこととなった。
エリア内の一部evilが逃亡。その際、行動四課、第4ゲートの警備を担当していた五課の機動官が犠牲となった。
そして、俳徒と名乗る男の、すべてのevilに向けられたメッセージ映像。ネット上での拡散力はすさまじく、管理局側の規制も、効果は期待できない状況だった。
さらにその映像によれば、丹波総一郎が、政府の一部の人間との関係があったとされた。
波紋は大きく広がり、これに対し政府側は、現在調査中としている。
第六都市管理局は、映像の発信源を突き止め、14エリアのとある高層ビル内に調査隊を送り込んだが、あの映像が終了したと同時に爆発したと思われる小型の時限爆弾と、パソコンの破片が見つかるのみで、そこから先の情報は何一つ得ることが出来なかった。
そして、残された問題のもう一つ。
「今作戦においてこれ程までに被害が拡大したのは、紛れもなく、コード07。彼が原因です。」
六道寺が遊撃班を代表として、07に関する報告を開始する。
「彼についての詳細は未だ不明ですが、evilとの繋がりは、例の動画で確認できました。丹波総一郎の死体の傷も、07が与えた傷跡と一致しています。」
「あの黒いものは。」
そう質問したのは澤部だった。
「これは私の推測ですが。コード07は【能力者】ではないかと。」
「…なんだと?」
「ありえないだろ。六道寺特務官。能力者は、管理局が誇る精鋭機動官の7人だ。君もその内の一人だろ。能力者は7人しか存在していないはずなんだ。」
真っ向から否定してきたのは、司令部の古宮だった。
「…続けてくれ、六道寺特務官。」
名雲がそう言った。
疑いの目を名雲に向けるが、六道寺は続ける。
「根拠は、私の能力です。私の『喰者(ヴォア)』は主に、敵の攻撃を左手で吸収し、吸収したエネルギーを自らのものに変換、凝縮させ、右手から造形物として出現させるものです。吸収したエネルギーにはそれぞれの感触があります。例えば、能力者のエネルギーには、能力者独特の感触がある。彼はそれに近かった。」
「つまり君の感覚を信じろと。」
「…はい。」
その場が沈黙する。
「…能力者は、場合によってはその状況を単体で変えられる程の戦闘力を持つ人間。それがevilの協力者であれば、管理局との戦力差も覆されえない。07への対策と排除が、我々にとって優先すべき事柄であることは明白です。」
「…確かにそうだ。」
「しかしどうするつもりなんだ。この資料によれば、銃火器をも超えてヘリの機関砲も通さなかったと。現在の我々の武器では通用しない。」
眉間に皺を寄せながら、困惑した表情で伊山は言った。
「ええ。一部の例外的状況を除いて、我々の武器は通用しないと考えるのが適切でしょう。例外については、後程説明します。我々蔵馬班が提案するのは、新武装の開発です。」
言い終えた六道寺は、手元のタブレット端末の映像を、楕円形のテーブルの中心に投影する。
映像には、機動官が装備している小銃の銃弾や、近接武器が映し出されていた。
「07に有効なダメージを負わせることが出来る手段は、我々が彼の黒を利用することです。07と接敵した際、彼の黒を取り込み、それで構成された武器を使用しました。資料にも記載されている通り、黒で構成された戦棍と槍を用いて、彼を撃退するに至りました。」
「目には目を、歯には歯を。ということか。」
澤部が思いついたように言う。
「はい。」
「とは言っても、肝心な黒はどうするんだ。」
再び伊山が質問する。
「わずかですが、私が吸収した分が残っています。試験的に運用する程度なら生成できるかと。この案を研究科に提出していただきたいのですが。」
「銃弾などの構成物質に黒粒子を加えた新型武器、か。」
「量産、とまでは行かないまでも、いずれ管理局の主要戦力に装備させる事が出来れば。」
「あぁ、あくまで机上論だが、07の対策になりそうだ。…了解した特務官。こちらで研究科に申請しておくとしよう。」
「…ありがとうございます。」
案の提出を承諾したのは名雲だった。
「それで、特務官。先ほどの例外というのは。」
六課指揮長、右京からだった。
「それは、私から説明しましょう。いいかな、特務官。」
はい。と、六道寺は言い、着席する。
立ち上がった蔵馬は少し背伸びをしてから説明に入った。
「銃火器が通用する例外は、彼の肉体の強度と関係しています。07との戦闘データから、おそらく彼は、体内の黒い粒子を自在に操ることが出来る能力者と推定できます。しかし弱点が1つ。彼が粒子を外に放出した状態であればあるほど、彼の肉体の強度は並みの人間かそれ以下に近づく。私自身戦闘中に確認したことなので、ほぼ間違いないかと。」
「その戦闘データ。複製したものをこちらにも転送しておいてくれ。」
古宮がそう言った。
「分かりました。蔵馬班からの報告は以上です。」
蔵馬と六道寺は殲滅作戦の合同報告会議に出席していた。
同席するのは第六都市管理局1課~6課の指揮長及び、司令部の人間だ。
第六都市13、14エリアevil殲滅作戦は失敗に終わった。
旧evilの指導者、丹波総一郎は死亡。だが、結果的に新たな脅威を生み出すこととなった。
エリア内の一部evilが逃亡。その際、行動四課、第4ゲートの警備を担当していた五課の機動官が犠牲となった。
そして、俳徒と名乗る男の、すべてのevilに向けられたメッセージ映像。ネット上での拡散力はすさまじく、管理局側の規制も、効果は期待できない状況だった。
さらにその映像によれば、丹波総一郎が、政府の一部の人間との関係があったとされた。
波紋は大きく広がり、これに対し政府側は、現在調査中としている。
第六都市管理局は、映像の発信源を突き止め、14エリアのとある高層ビル内に調査隊を送り込んだが、あの映像が終了したと同時に爆発したと思われる小型の時限爆弾と、パソコンの破片が見つかるのみで、そこから先の情報は何一つ得ることが出来なかった。
そして、残された問題のもう一つ。
「今作戦においてこれ程までに被害が拡大したのは、紛れもなく、コード07。彼が原因です。」
六道寺が遊撃班を代表として、07に関する報告を開始する。
「彼についての詳細は未だ不明ですが、evilとの繋がりは、例の動画で確認できました。丹波総一郎の死体の傷も、07が与えた傷跡と一致しています。」
「あの黒いものは。」
そう質問したのは澤部だった。
「これは私の推測ですが。コード07は【能力者】ではないかと。」
「…なんだと?」
「ありえないだろ。六道寺特務官。能力者は、管理局が誇る精鋭機動官の7人だ。君もその内の一人だろ。能力者は7人しか存在していないはずなんだ。」
真っ向から否定してきたのは、司令部の古宮だった。
「…続けてくれ、六道寺特務官。」
名雲がそう言った。
疑いの目を名雲に向けるが、六道寺は続ける。
「根拠は、私の能力です。私の『喰者(ヴォア)』は主に、敵の攻撃を左手で吸収し、吸収したエネルギーを自らのものに変換、凝縮させ、右手から造形物として出現させるものです。吸収したエネルギーにはそれぞれの感触があります。例えば、能力者のエネルギーには、能力者独特の感触がある。彼はそれに近かった。」
「つまり君の感覚を信じろと。」
「…はい。」
その場が沈黙する。
「…能力者は、場合によってはその状況を単体で変えられる程の戦闘力を持つ人間。それがevilの協力者であれば、管理局との戦力差も覆されえない。07への対策と排除が、我々にとって優先すべき事柄であることは明白です。」
「…確かにそうだ。」
「しかしどうするつもりなんだ。この資料によれば、銃火器をも超えてヘリの機関砲も通さなかったと。現在の我々の武器では通用しない。」
眉間に皺を寄せながら、困惑した表情で伊山は言った。
「ええ。一部の例外的状況を除いて、我々の武器は通用しないと考えるのが適切でしょう。例外については、後程説明します。我々蔵馬班が提案するのは、新武装の開発です。」
言い終えた六道寺は、手元のタブレット端末の映像を、楕円形のテーブルの中心に投影する。
映像には、機動官が装備している小銃の銃弾や、近接武器が映し出されていた。
「07に有効なダメージを負わせることが出来る手段は、我々が彼の黒を利用することです。07と接敵した際、彼の黒を取り込み、それで構成された武器を使用しました。資料にも記載されている通り、黒で構成された戦棍と槍を用いて、彼を撃退するに至りました。」
「目には目を、歯には歯を。ということか。」
澤部が思いついたように言う。
「はい。」
「とは言っても、肝心な黒はどうするんだ。」
再び伊山が質問する。
「わずかですが、私が吸収した分が残っています。試験的に運用する程度なら生成できるかと。この案を研究科に提出していただきたいのですが。」
「銃弾などの構成物質に黒粒子を加えた新型武器、か。」
「量産、とまでは行かないまでも、いずれ管理局の主要戦力に装備させる事が出来れば。」
「あぁ、あくまで机上論だが、07の対策になりそうだ。…了解した特務官。こちらで研究科に申請しておくとしよう。」
「…ありがとうございます。」
案の提出を承諾したのは名雲だった。
「それで、特務官。先ほどの例外というのは。」
六課指揮長、右京からだった。
「それは、私から説明しましょう。いいかな、特務官。」
はい。と、六道寺は言い、着席する。
立ち上がった蔵馬は少し背伸びをしてから説明に入った。
「銃火器が通用する例外は、彼の肉体の強度と関係しています。07との戦闘データから、おそらく彼は、体内の黒い粒子を自在に操ることが出来る能力者と推定できます。しかし弱点が1つ。彼が粒子を外に放出した状態であればあるほど、彼の肉体の強度は並みの人間かそれ以下に近づく。私自身戦闘中に確認したことなので、ほぼ間違いないかと。」
「その戦闘データ。複製したものをこちらにも転送しておいてくれ。」
古宮がそう言った。
「分かりました。蔵馬班からの報告は以上です。」
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