悪魔の国

謎の人

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17話 慧

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少し高いビルの上。僕はそこで、夜景を眺めてた。

さっきまでいた真っ暗な街じゃない。

様々な光が、眩むほど入り混じった、綺麗な街。

でも僕らは、本当はここにいちゃいけない。

人は僕らのことを怖がる。

怖がって、殺しに来る。

まるで、生まれる世界を間違えたみたい。

でもこんなこと、明空に言ったりしたら、きっと怒られるだろうな。

たとえ生まれ間違えた世界なら、いくつもの不条理が、僕らに降り注ぐなら。



「慧(けい)。」



後ろから声がする。


「明空。」


「すまない。怪我までさせて。」


「いいよ。それで皆が逃げれたんだから。僕の怪我なんて、大したことないよ。」


けど、今日のは少し痛かった。



「そうか。」



「…また僕を使ってよ。今の僕には、evilの皆にそれくらいしか出来ないからさ。」



「分かった。そうさせてもらうよ。怪我の治り、悪いのか?」



「まあ、少しだけね。作戦中は時間が無かったから、十分に補給は出来なかったかな。あの女の人と戦闘中に、なんとか。」



「お前は俺たちの要だ。万全の状態でいてもらわなければ困る。不足があれば言ってくれ。」



「うん。分かってる。」



「よし。もう少ししたら下に来てくれ。全員に話したいことがある。」



そう言って、彼は屋上を去った。





 たまに考える。生まれてきた理由ってあるのだろうかって。


生まれた時から、僕は一人だったそうだ。


父親も母親もいない。


自分の名前すらもわからなくて、


暗い部屋の中で一人、誰かを待っていたような気がする。


その時に、僕を迎えに来てくれたのが、明空 俳徒だった。


何の為に生まれてきたのか、


何をしたらいいのかわからない僕に、


世界を教えてくれた。


名前をくれた。


何もかも全部。


本当に感謝してる。


だから今は彼の為に、彼らの為に、



僕は、焉夜 慧(えんや けい)は生きている。








「つまらないね。それ。」



また君か。知らない誰か。



「違う。つまらないとか、そういう問題じゃない。これは僕が決めたことだ。」



「ははは。」



笑いながら、声は消えた。



僕をあざ笑うかのように、ケタケタ笑って消えてった。



手すりに左手だけを掛けて、後ろを振り向く。



だがいつも通り、そこには誰もいない。



それから僕は、明空に言われたことを思い出して、そこから去った。
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