18 / 19
17話 慧
しおりを挟む
少し高いビルの上。僕はそこで、夜景を眺めてた。
さっきまでいた真っ暗な街じゃない。
様々な光が、眩むほど入り混じった、綺麗な街。
でも僕らは、本当はここにいちゃいけない。
人は僕らのことを怖がる。
怖がって、殺しに来る。
まるで、生まれる世界を間違えたみたい。
でもこんなこと、明空に言ったりしたら、きっと怒られるだろうな。
たとえ生まれ間違えた世界なら、いくつもの不条理が、僕らに降り注ぐなら。
「慧(けい)。」
後ろから声がする。
「明空。」
「すまない。怪我までさせて。」
「いいよ。それで皆が逃げれたんだから。僕の怪我なんて、大したことないよ。」
けど、今日のは少し痛かった。
「そうか。」
「…また僕を使ってよ。今の僕には、evilの皆にそれくらいしか出来ないからさ。」
「分かった。そうさせてもらうよ。怪我の治り、悪いのか?」
「まあ、少しだけね。作戦中は時間が無かったから、十分に補給は出来なかったかな。あの女の人と戦闘中に、なんとか。」
「お前は俺たちの要だ。万全の状態でいてもらわなければ困る。不足があれば言ってくれ。」
「うん。分かってる。」
「よし。もう少ししたら下に来てくれ。全員に話したいことがある。」
そう言って、彼は屋上を去った。
たまに考える。生まれてきた理由ってあるのだろうかって。
生まれた時から、僕は一人だったそうだ。
父親も母親もいない。
自分の名前すらもわからなくて、
暗い部屋の中で一人、誰かを待っていたような気がする。
その時に、僕を迎えに来てくれたのが、明空 俳徒だった。
何の為に生まれてきたのか、
何をしたらいいのかわからない僕に、
世界を教えてくれた。
名前をくれた。
何もかも全部。
本当に感謝してる。
だから今は彼の為に、彼らの為に、
僕は、焉夜 慧(えんや けい)は生きている。
「つまらないね。それ。」
また君か。知らない誰か。
「違う。つまらないとか、そういう問題じゃない。これは僕が決めたことだ。」
「ははは。」
笑いながら、声は消えた。
僕をあざ笑うかのように、ケタケタ笑って消えてった。
手すりに左手だけを掛けて、後ろを振り向く。
だがいつも通り、そこには誰もいない。
それから僕は、明空に言われたことを思い出して、そこから去った。
さっきまでいた真っ暗な街じゃない。
様々な光が、眩むほど入り混じった、綺麗な街。
でも僕らは、本当はここにいちゃいけない。
人は僕らのことを怖がる。
怖がって、殺しに来る。
まるで、生まれる世界を間違えたみたい。
でもこんなこと、明空に言ったりしたら、きっと怒られるだろうな。
たとえ生まれ間違えた世界なら、いくつもの不条理が、僕らに降り注ぐなら。
「慧(けい)。」
後ろから声がする。
「明空。」
「すまない。怪我までさせて。」
「いいよ。それで皆が逃げれたんだから。僕の怪我なんて、大したことないよ。」
けど、今日のは少し痛かった。
「そうか。」
「…また僕を使ってよ。今の僕には、evilの皆にそれくらいしか出来ないからさ。」
「分かった。そうさせてもらうよ。怪我の治り、悪いのか?」
「まあ、少しだけね。作戦中は時間が無かったから、十分に補給は出来なかったかな。あの女の人と戦闘中に、なんとか。」
「お前は俺たちの要だ。万全の状態でいてもらわなければ困る。不足があれば言ってくれ。」
「うん。分かってる。」
「よし。もう少ししたら下に来てくれ。全員に話したいことがある。」
そう言って、彼は屋上を去った。
たまに考える。生まれてきた理由ってあるのだろうかって。
生まれた時から、僕は一人だったそうだ。
父親も母親もいない。
自分の名前すらもわからなくて、
暗い部屋の中で一人、誰かを待っていたような気がする。
その時に、僕を迎えに来てくれたのが、明空 俳徒だった。
何の為に生まれてきたのか、
何をしたらいいのかわからない僕に、
世界を教えてくれた。
名前をくれた。
何もかも全部。
本当に感謝してる。
だから今は彼の為に、彼らの為に、
僕は、焉夜 慧(えんや けい)は生きている。
「つまらないね。それ。」
また君か。知らない誰か。
「違う。つまらないとか、そういう問題じゃない。これは僕が決めたことだ。」
「ははは。」
笑いながら、声は消えた。
僕をあざ笑うかのように、ケタケタ笑って消えてった。
手すりに左手だけを掛けて、後ろを振り向く。
だがいつも通り、そこには誰もいない。
それから僕は、明空に言われたことを思い出して、そこから去った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる