悪魔の国

謎の人

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3話 脅威

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「…ふぅ。」


新たな職場での初会議を終え、俺は先程の会議室の中で配布された資料に目を通していた。


「君が六道寺特務官か?」


顔を上げると、黒い管理局制服に身を包み、エナジードリンクと、若干くしゃくしゃになった資料を手に持った
蔵馬少尉だった。


「挨拶が遅れたな。蔵馬 玲《くらま れい》、少尉だ。よろしく頼む。」


「六道寺天弥 特務官です。会議の始まる前も声を掛けたのですが、その…、お休みなさっていたので。」


「あぁ。いつもそうなんだよ、私は。別に起こして貰って構わない。むしろ起こしてくれ、
最近はそれが原因で、他の上官からも目をつけられているんだ。」


笑いながら、そう彼女は言った。


「本当、衝撃的でしたよ。まさか会議中に堂々とアイマスクをつけながら寝る方がいるなんて。」


「別に話を聞いていない訳じゃないぞ。うっすらだが聴こえているんだ。ま、慣れだよ、慣れ。」


自分が抱いていた印象より、案外気さくな人のようだ。


「特務官。君は私より階級が上だろう?なぜ敬語なんだ。」


「癖ですよ。敬語の方が個人的には話しやすいんです。それに特務官というのは、新設の階級ですし。扱いは大尉と同じですが、私の場合、局に配属した直後から特務官としての着任だったので、経験は浅いです。だから私にとっては、少尉は先輩であり、上官みたいなものなんですよ。というか少尉こそ、上官に敬語は使わないのですか?」


「上官と言っても、君と歳はほぼ変わらんだろ。同年代の相手に、何故敬語を使わないといけないんだ。」


「けど、中尉には…」


「あいつは馬鹿だろ。」


いや失礼すぎるでしょと素直に突っ込みたい。


「ところで特務官。私は少し聞きたいことがあって来たんだ。今作戦、君は私の班だったな。資料には目を通したか?」


「えぇ、一応、一通り。」


「君の中央局での活躍は聞いている。六道寺天弥。判断力と行動力に人一倍優れており、その才を見抜かれ、局長直々に特務官配置。そのエリート様に期待して聞きたいんだが、支部局の件、君はどう見る?」


彼女は俺を少しの間見下ろした後、隣席に腰を掛け、資料を広げながらそう言った。


「いくらevilが武装していたとは言え、それは支部局も同じはず。充分な人材も武器も揃っていた。となれば、原因は支部局の方では無くevil側にある。考えられるのは、彼らにまだ隠された戦力がある可能性。もしくは、evilの味方をする、第三者の介入。」


「あるいはその両方、か。なるほど。今回の件はそもそも前提がおかしい。13・14エリアの支部局は、特にevilに対する圧力が激しかった地区だ。支部局長の力陽は力自慢で有名でな。それでもevilらが動いたという事は」


「彼らが勝てると確信を得たから。」


「そうだな。弾圧が厳しいエリアを、あえて根城にするとは思いもしなかったが。しかしそれでは勝因には至らないだろう。evil達を勝ちへ導くほどの何か。そしてコード07。わざわざ優先保護対象なんて言う特別枠付き。
総員全力でミッケしろと言ってきている訳だ。…タイミングが良すぎると思わないか?」


「コード07とevilになにか繋がりがある。仮にそのevil達に味方した者が07だったら。」


「…話の筋は通るな。問題はそいつが何者なのかということだ。君が先程言ったように、evilに味方したのが07で、しかもそいつのお陰で支部局を壊滅できたというわけか。全く、面倒な作戦になりそうだ。」


彼女は資料を片手に、飲んでいたエナジードリンクを置いた。
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