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発見
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図書館の横にある鍵のかかった部屋を花音は開ける。
電気をつける。
すると、そこには雑然と段ボールがつまれ、埃のかかったガラスの棚に歴代の文芸部の文集が並んでいた。
「ここから選ぶの?」
紗由理は、お嬢様しばりを忘れて花音に聞いた。
「ええ。そうですわ。紗由理さん、言葉が荒れていますわよ。」
花音は少しからかうように目を細める。
紗由理は少し不満そうに口をすぼめて、そこから気を取り直して深々と頭をさげる。
「申し訳ございません。お姉さま。」
その、大袈裟なジェスチャーに桃子が思わず笑い出す。それを見て紗由理がコッソリと桃子に笑いかける。
「そうですわ。21世紀の作品に関しては、お姉さま方に許可はえておりますのよ。」
と、花音は自慢げに微笑んだ……が、桃子も紗由理も花音の苦労を知らずに20世紀の資料を手にする。
「嘘っ……まさか、これって。」
桃子は、うっすらと表紙の印刷がはげているノートを手にした。
題名がマジックで書いてある。
『立山 夢子は中世騎士の夢を見る』
作者らしい文字が続く『Sumire』ペンネームだろうか?
桃子は、その題名に見覚えがあった。
最近、Web小説で見かけた作品と似た題名だ。
まさか…これが、あの有名な…パ、パクられ作品?
思わずノートを開くと、いかにも学生が書いた少女の表紙があり、3ページから話が始まっている。
「いかがなさいましたの?」
急に大人しくなる桃子に紗由理が声をかける。が、桃子は集中してノートを読んだままだ。
「90年代はじめの先輩の作品だよね?」
花音が、尋常でない桃子の様子にお嬢様しばりを忘れて紗由理を見る。
「そうね、それがどうしたの?」
「90年代は、許可をとってないから、使えないの。」
花音が桃子の肩に手を置いて、耳元で優しく話す。
本に夢中になった桃子は、それで我にかえる。
「自分で許可を取りに行ってはダメかしら?」
桃子は何かを深刻に考えながら花音を見つめた。
花音は桃子の真剣な顔を見つめて、何か、考えがあるのだと感じる。
「多分、先生に許可をとって貰えば大丈夫だと思うわ。
90年代は、確か、真田先生のお婆様が文芸部を担当されていたはずだから。」
花音はうろ覚えを心配するように軽く目をしかめる。
「ねえ、そんな古い話、どうしたのよ?」
紗由理が焦れったそうに桃子の右肘の辺りをつついた。
「これ…最近、従姉と読んだの。」
と、桃子は不満げに眉を寄せる。
「読むって…、どこで?」
紗由理が興味深そうに尋ねた。
ここのノートに残された作品は、ほぼ、中途半端で忘れられたエタ作品のはずだ。
どこかで完結し、同人雑誌にでも載せたのだろうか?
「WEB小説で。」
桃子はキツネにつままれたような、不思議な顔で紗由理を見つめた。
電気をつける。
すると、そこには雑然と段ボールがつまれ、埃のかかったガラスの棚に歴代の文芸部の文集が並んでいた。
「ここから選ぶの?」
紗由理は、お嬢様しばりを忘れて花音に聞いた。
「ええ。そうですわ。紗由理さん、言葉が荒れていますわよ。」
花音は少しからかうように目を細める。
紗由理は少し不満そうに口をすぼめて、そこから気を取り直して深々と頭をさげる。
「申し訳ございません。お姉さま。」
その、大袈裟なジェスチャーに桃子が思わず笑い出す。それを見て紗由理がコッソリと桃子に笑いかける。
「そうですわ。21世紀の作品に関しては、お姉さま方に許可はえておりますのよ。」
と、花音は自慢げに微笑んだ……が、桃子も紗由理も花音の苦労を知らずに20世紀の資料を手にする。
「嘘っ……まさか、これって。」
桃子は、うっすらと表紙の印刷がはげているノートを手にした。
題名がマジックで書いてある。
『立山 夢子は中世騎士の夢を見る』
作者らしい文字が続く『Sumire』ペンネームだろうか?
桃子は、その題名に見覚えがあった。
最近、Web小説で見かけた作品と似た題名だ。
まさか…これが、あの有名な…パ、パクられ作品?
思わずノートを開くと、いかにも学生が書いた少女の表紙があり、3ページから話が始まっている。
「いかがなさいましたの?」
急に大人しくなる桃子に紗由理が声をかける。が、桃子は集中してノートを読んだままだ。
「90年代はじめの先輩の作品だよね?」
花音が、尋常でない桃子の様子にお嬢様しばりを忘れて紗由理を見る。
「そうね、それがどうしたの?」
「90年代は、許可をとってないから、使えないの。」
花音が桃子の肩に手を置いて、耳元で優しく話す。
本に夢中になった桃子は、それで我にかえる。
「自分で許可を取りに行ってはダメかしら?」
桃子は何かを深刻に考えながら花音を見つめた。
花音は桃子の真剣な顔を見つめて、何か、考えがあるのだと感じる。
「多分、先生に許可をとって貰えば大丈夫だと思うわ。
90年代は、確か、真田先生のお婆様が文芸部を担当されていたはずだから。」
花音はうろ覚えを心配するように軽く目をしかめる。
「ねえ、そんな古い話、どうしたのよ?」
紗由理が焦れったそうに桃子の右肘の辺りをつついた。
「これ…最近、従姉と読んだの。」
と、桃子は不満げに眉を寄せる。
「読むって…、どこで?」
紗由理が興味深そうに尋ねた。
ここのノートに残された作品は、ほぼ、中途半端で忘れられたエタ作品のはずだ。
どこかで完結し、同人雑誌にでも載せたのだろうか?
「WEB小説で。」
桃子はキツネにつままれたような、不思議な顔で紗由理を見つめた。
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