夏の夜話 短編集

のーまじん

文字の大きさ
上 下
8 / 39

ゴッホを語る

しおりを挟む
  冬の夜はあっという間に忍び寄り、知らないうちに体を冷やします。

  私はコーヒーにリンゴ酒と砂糖を加え作者へと渡しました。

  「少し…休みませんか?」
私の言葉に、作者はパソコンの画面から目をはなした。
「うん…ありがとう。」
作者はマグカップを手にすると疲れたような笑顔で私を見た。
「新作…投稿したのですね。」
「うん。なんか、ラジオの募集…ちょっぴり難しいけど、詩を書いてたから、短い文章も結構かけるね。」
作者は笑った。
「ゴッホ…ですか。」
私は、世紀末に話題になった激情の画家を思い出していた。

  私の作者は、ラジオの募集で短編を応募していた。
  キャラクターが、短編の動画投稿をしたがるので、作者もそれに合わせて試さないといけなくなる。
  その練習を兼ねていた。
「うん…。千文字縛りだから、有名な人の方が字数が少なく済むかなって、ね。」
作者はそう言って、一度、言葉を切り、色々溜め込んだものを吐き出すように叫ぶ。
「失敗だったけど…ね(T-T)」

「失敗…しましたかね?」
私は紅茶を口に含みながら考える。
  評価も貰えましたし、それほど悪くは無かったと記憶していますが。

「うん…説明しないと何を書いてるか分からんじゃない(T-T)
  まあ、お陰でこっちの記事は出来るんだけどね。」
作者は、ボヤきながら『ゴッホ』の詩を開いた。
  
  この詩は、ゴッホの死ぬ直前に見ただろうひまわりをテーマに作った。

  天才とひまわりのテーマを使ったのだ。

  ゴッホの『ひまわり』

  バブル時代に日本の企業が投資目的で買い漁った事もあり、テレビで取り上げられ人気になった。

  「ゴッホは、私も美術館で本物見たことあるよ…。
  ひまわりとかは、世界にいっぱい作品が残ってるんだって。
  この人、浮世絵も好きで模写したりしてるんだよね…」
作者は、そこで深くため息をつく。

「そうですね…何か、同じ感性があるのでしょうか?日本人がゴッホの絵に惹かれてしまうのは。」
私は、色鮮やかな彼の自画像を思い浮かべた。

「うーん…( ̄~ ̄;)
バブル時代には、没後100年と浮世絵とか絡められるから、なんか、重宝された感じあるわ。
  ひまわりの絵に一億とか、私には理解できなかったもん。」
作者は、昔を思い出すように空を見た。
「確かに、でも、モナリザの様に色んな謎が含まれたり、西洋絵画は日本の俳句の様な面白味がありますから。」
「うん。構図や静物が何かの象徴だったり…
  『ダ・ヴィンチ・コード』は面白かったわ。」
作者は、そう言って笑った。
「そうでしたね。」
私は、今年の様々な事を思い出していた。
「うん…でも、まさか、あの耳切り取り事件が1888年だったなんて、ビックリしたわ…」
作者は、そう言って渋い顔をした。

  ゴッホは、1888年の12月、切り落とした耳を手に娼館へいくと言う事件を起こしていた。
「夏には切り裂きジャック…冬はゴッホの耳切り…
  どちらも娼婦が絡む事件ですね。」
「うん…ジャックは娼婦を切り、ゴッホは、自らの耳を切り落として渡した…と、言われているわ。
  どちらも、ゾッとしない話だけど…
  どちらも寂しさがにじむ事件ね。」
作者は、そう言ってため息をつく。

  私は、悲しそうな作者に温かいコーヒーのおかわりを出した。
  作者は、黙ってそれを受けとると、しばらく、マグカップを両手で持ちながら暖をとる。

  「温かいわ…いつもありがとう。私達は仲良く続けて行きましょうね。」

  ゴーギャンとの別居で混乱したゴッホを思い出したのか、作者はそう言って、弱々しく微笑んだ。
「ええ…ずっと、一緒に。」
  私は、そう言いながら、作者を見つめた。

  ずっと、一緒に…

  この約束が守られることを祈りながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...