夏の夜話 短編集

のーまじん

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男同士

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  その男は、50代を越えているだろうか?
  細身の長身の男で、ロマンスグレーと言う言葉が似合う短い髪を撫で付けていた。

  「はい…アキコ…はい、私がそうです。」
私は少し赤面しながら早口で言った。

  ネットでの名を…リアルな世界で発した事と、日頃の閲覧数やいいねが、ちゃんと人がくれたものだった事に興奮しながら。

「そうですか…ああ。申し遅れました。
  アキコ先生…
  私が『ガニメデ』です。」
男は私と違い普通にネット名を口にした。
「ガニメデさん。お世話になります」

  私は先生と言われて頭が真っ白になる。

  苦節5年。最高ポイント98の私が…先生なんて!

  (○_○)この人…大丈夫だろうか…

  「疲れたよ…。」
ゴロウの面倒くさそうな声に私は正気にもどる。
  ガニメデは、そこでゴロウを見て仏様のような慈愛のこもった微笑を向ける。

  なんか…(精神的に)大人だなぁ。

  私はガニメデをみて思う。ガニメデはゴロウの近くに遠慮しながら来て、少し照れたように視線をしたに向けて言った。
「すいません、ゴロウ先生。車で送ります…荷物、お持ちしましょう。」
ガニメデはゴロウが床に置いたバックに手をかける。
「本当にいいの?」
遠慮のない笑顔でゴロウはガニメデに問う。
  ガニメデは、少し驚いたようにゴロウを見て、それから嬉しそうに「はい」と返事をした。
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