夏の夜話 短編集

のーまじん

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貧乏神と私

ノストラダムス

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 今考えると、なんでノストラダムスにしたのか…(T-T)

 私は剛のエピソードをノストラダムスにのせて、小さな物語を書くことにした。
 今から丁度、500年前…   学校に通い出す10代のノストラダムスに。

 別にノストラダムスじゃ無くても良かった。
 フォーク歌手に憧れて、1年、母親に駄々をこね、買ってもらったギターを3日で放り出す話さえ出来たなら。

 でも、このサイトでは、金は稼げない。
 だから、気楽な気分だった。
 とにかく、物語を書いてみない事には何も始まらない。

 私は作戦を少し変更していた。

 コミックマーケットに出店する!
 通称コミケ

 手作りの本のフリマのようなあそこに、webで投稿して人気が出たら出展しようと考えた。

 登録から一年くらいは、数回はこんな夢を見る。
 頑張れば、自分にも数百人のファンが出来て、
 書籍化は無理でも、たまに主催される小さな文学賞の、努力賞3万円が貰える日が来ると。


 が、はっきり言って、そんなもんは誰にもは、めぐってこない。
 シンデレラだって、一応、貴族だからお城に呼ばれたのだ。
 web小説の場合にも、最低限の資格と言うものが存在する。


 10万字の小説を完成させること。
 未完の小説を放置しないこと。
 後でバレる嘘はつかないこと。

 この3つである。
 特に、未完の放置は嫌われる。

 素人の作品だから、文句は言われないけど、
 読者は静かに去って行く。

 だから、私はそれだけはやるまいと決めていた。
 はじめは、短編から。
 エピソードは決まっていた。

 ノストラダムスの学生時代の話に剛の物語を植え込むことにした。

 ノストラダムス…

 歴史に名をのこした偉人なのに、どことなく嘘臭くて、なんだか怪しいイメージがあった。
 まあ、20世紀末に予言者として好き放題書かれたのが原因だ。

 20世紀末に蘇ったらノストラダムスは、いろんな人物に怪しげな助言をチャネリングによってしていた(と、本の著者たちは書いていた)し、
 実在のノストラダムスについての記録があまりないから、好き放題、プロフィールを盛られていた。

 夕飯の食材の豚について答えたり、
 少女のデート帰りに『可愛い奥さん』と、声をかけ、彼との逢瀬をズバリ当てたりしていた。

 そんなオッサン、いたらキモいし、嫌なやつだと嫌われるに違いない。

 が、当時はそんなエピソードすら、尊敬しながら読んでいた。

 21世紀になるまでは。

 20世紀末に人類は滅亡しなかった。
 ほぼ、壊滅したのは、そんなエピソードを書いていた作家の方だ。

 数年から十数年、大切にされていたろう予言の本は、大量に大手の古本屋の100円コーナーへ回っていった。

 そして、次に出てくるのは、ノストラダムスも間違いを正す感じの本だった。

 私も予言の本を楽しく読んだ世代なので、一気に嘘つきキャラにされたノストラダムスを可哀想だと思った。
 大体、ノストラダムスは、人類の滅亡なんて本に書いてはいないのだ。
 悪いのは、ノストラダムスの本を書いていた作者であって、ノストラダムスは自分の人生を全うしようと頑張っただけだ。


 まあ、そんな経緯もあって、ノストラダムスについては、わりと間抜けなキャラ付けをしても、読者はすんなりと受け入れてくれそうな気がした。

 今まで、私に金を使わせ続けた剛とノストラダムス…

 でも、ここからは彼らが、ここでは私に金を稼いでくれる存在に変わる…( ´艸`)

 夢が膨らんだ。
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