夏の夜話 短編集

のーまじん

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貧乏神と私

哲学

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 貧乏神…
 少女時代、私は、なぜ、貧乏が神なのか悩んだ。

 プラトンやソクラテスなんて、名前しか知らないし、哲学なんて学んだこともないが、今、思えば、あれは立派な哲学だったと思う。

 ある日、私は、不祥事を起こした芸能人の謝罪会見を見て、長い疑問の答えを得た。


 貧乏は、創造力を養ってくれる…
 お金持ちになると、人は創造力とひた向きな心を無くすんだ。
 だから、貧乏は、創造力の神なんだ。

 と、少女の私は『赤毛のアン』のパクリのような、危うげな結論で、貧乏神を受け入れた。

 貧乏は悪くない。
 幸せな貧乏人でいられるように、貧乏神がいるんだ。

 と、今、思い返すと恥ずかしい結論で、それでも、幸せになれた。


 真理はどうあれ、私は貧乏神のご利益にあずかった気がする。

 確かに、母がガンになって退職したけど、まあ、なんとかやって来たし、
 母が亡くなって、少し、精神がおかしくなっていても、仕事を探す気力と、仕事を得ることができた。


 とりあえず、バイトを探した。


 本当は、悲しみに泣いて引きこもっていたかった。
 が、貧乏性と貧乏が、それを許さない。

 だから、短期バイトを探した。
 そして、貧乏神のご利益とも言えそうな仕事を見つけた。

 遺跡の発掘の手伝いである。

 発掘の手伝い…このロマンチックな文言は、やる気の出なかった当時の私を、なんとか社会復帰させる力になった。



 呆気なく、採用された。
 そして、剛と…
 フリマの仲間と出会うことになる。
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