夏の夜話 短編集

のーまじん

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貧乏神と私

石の上にも三年

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 また、夏がやって来た。
 そして、思い出す…年末の抱負。

 今年こそ皆で名古屋に!

 いけない理由は、一人、オッサンが旅費を準備できないから。

 まあ、仕方ない。
 年を取れば、自分で使える金は減る。

 が、同情できないのは、金が無いと言いながら、ちゃっかりスマホを買い換えたりするからだ。

 奴の名前は剛。

 「おれ、60…還暦だよぅ。」

 去年、暮れる夏の夕日に包まれて、受話器ごしに奴の間抜けな声を聞いた。

 それを聞いて、決心した。
 今度こそ、名古屋にいく!
 もう、貢ぐとか、奴のためになら無いとか、甘えとか、どうでも良くなった。
 昔の人は言った。
 『石の上にも3年』と。
 が、気がつきゃ、こちとら5年をweb小説につぎ込んだ。

 そして、現在、500円すらほど遠い。

 剛の夢、名古屋のお得なモーニング、一食分も稼げなかった。
 そして、スーパーのポイントが1000円貯まったのを見たとき、何かがプッツリ切れたのだ。

 還暦と聞いた事もある。
 もう、交通費を何とかしようと考えた。
 どうせ、車で行くんだから、ただで乗せればいい。
 帰りは深夜バスに乗せてしまえば、宿泊の心配もない。

 本当は、もっと色々したかった…でも、そんな事、コイツには無理なんだ。

 夏の終わりの焦燥感が胸をついた。

 でも、友情にすがって交通費を浮かせても、モーニングを食べて「さよなら」なんて、嫌だった。

 名古屋まで行ったら、伊勢まで行きたかった。
 エビフライとかも食べたいし、デパートを見たり、街歩きもしたかった。

 観光地にも行きたい。

 だから、小説で少し、稼ぎたかった。

 一番の失敗は、始めに登録したサイトは、金が稼げない事と、
 web小説の売り方を知らなかったこと。

 そして、私がweb小説なんて書いたことがなかったし、サイトもみたことがなかった。
 これが最大の敗因だった………。


 いや…ちがう。

 一番の敗因は、剛と言う貧乏神に好かれた事だ。

 私は新しいスマホを無邪気に自慢する剛を見ていて冷静さを失っていた。

 で、そのスマホで、たまたま出てきた小説サイトにエントリーさせた。

 原作つよし
 構成わたし。

 これで、奴の端から愉快なエピソードを書いて行こうと決めた。

 フリマで不用品を使った小さな手芸を売ったことがある。

 1000円くらいあっと言うまに稼げると、よく分からない自信に後押しされた。

 が、貧乏神とタックを組んだのだ。
 そんなに簡単に金が儲かるわけがない。

 そうして、また、モヤモヤの夏を迎える。

 でもっ、今年は違う。
 そう、私は書いた。
 この5年、手芸も何もかも放り、余暇を小説と、そのネタを作るのにつぎ込んだ。

 私は、これをみんな、みんな、売るんだ。

 私は、フリマ人。
 不用品を金にするのを趣味として来た。

 だから、この5年の無駄文も、なんとか売る。

 売れなくても…
 売ろうとする姿勢を忘れたくはない。

 だって…そうして、結果が出たとき、すべてを決別できるのだから。

 なんて、頑張ろうとはした…
 したけれど……

 世の中、そんなに甘くない。

 まとまりのない文章をリフォームして、投稿するだけでも…
 結構な労力が必要だからだ。
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