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パラサイト

虫探偵

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  シケイダ3301…
  その言葉をきいて、私は、『砂金』と言う本のカバーに注目した。
  それは、元々の本のカバーではない。パソコンで印刷した自家製のものだった。

  「これは、かなちゃんの謎かけかもしれないな。」
北城の台詞に私も同意した。

  この辺りのイベントで、自然に関しての謎かけものは長く続いていた。
  私も、1999年の虫探偵シンゲンをやらされた。
  失踪したのが、7年前の今頃なら、ちょうど、夏祭りのイベントを考える頃だ。
  この時は、きっと、この屋敷を探検するような話を考えたのかもしれない。

  そうだとしたら、私が書斎で見つけた、しおりについても合点(がてん)が行く。
  私は、意図せず雅苗さんの謎の一部を見つけてしまったのだろう。

  そう考えると、なんだか切ない気持ちになった。
  「そうだな、私もそう思うよ。3301って素数だろ?」
私が北城に聞くと彼は頷いた。

  やはり、この時のテーマは素数ゼミだ!

  「何か、分かったのか?」
北城は、怪訝そうに固い顔になる。
  その顔を見ていると、町会などには、縁がなさそうなこの男の人生が思い浮かぶ。

「ああ、これは雅苗さんが、ここに来た人間に向けてメッセージだと思う。
  ポイントは素数ゼミ。」
私の話を北城は黙って聞いていた。そして、難しい顔でこう聞いてきた。
「シケイダ…の謎を模倣したのか?」
と。私は、良く分からない海外ドラマを引き合いに出してくる北城に少し憤慨した。
  確かに、世界的…と、言わないまでも、日本としても、シケイダの方が認知度は高いのかもしれない。が、この小さな町では、そんなものよりも、地元の青年が代々繋いできたヒーローの方が上なのだ。
  だから、言ってやった。
  「虫探偵シンゲンだよ。
そんな、外国のドラマじゃなくて。」
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